絶対天使と死神の話

合同会編 08.連携トレーニング


翌日は依頼を引き受けるはずが、ジョゼの一言で模擬戦闘に変更された。
彼女曰く「合同会を控えている今、依頼で怪我するのはマズイわよね……それよりも、チームでの連携を高めたほうがいいのではなくて?」とのことだ。
「なら、今日は武器訓練にする?でも校庭で練習していたら、他のクラスに見られちゃうよね」
水木の懸念に、小島が提案する。
「あ、なら裏庭使わせてもらおうぜ!怪物舎の。あそこだったら誰にも見られないだろ」
「つまり、今日は模擬戦闘すると見せかけて連携練習するってことだね!じゃあ、行こうか」
ピコの号令でチーム一同は怪物舎へ向かった。


合同会が近いから模擬戦闘も賑わっているかと思いきや、表庭は閑散としている。
迎え出た陸によると、ほとんどの生徒が本日は武器訓練をやりにいったのだとか。
ジョゼのように開催までの日数を考えて、怪我を避ける安全策を選んだチームが多いのか。
原田から事情を聞いたジャンギが連携練習に付き合うと言い出して、そこでエリオットと一悶着あったものの、陸の仲裁もあってかジャンギの監視兼指導を受けられるようになった。
「今日は誰も来ないんじゃないかと思っていたからね。君たちが来てくれて助かったよ」と喜ぶジャンギに水木が尋ねる。
「誰も来ない日って何してるの?」
「書類仕事、かな。デスクワークは、あまり得意じゃないんだが」
得意じゃない上、生意気な下克上部下と差し向いに座ってやるんじゃ、お通夜気分になろう。
陸が多少の緩和剤になるとしても、退屈な仕事には変わりない。
「それか、怪物の世話だ。まぁ、朝夕に餌をやって運動させれば終わる簡単な仕事だがね」
ちらっと怪物の住む舎を一瞥して、ジャンギは場を仕切り直す。
表庭は空いていたが、あえて裏庭での訓練だ。
原田は同じクラスの同級生にも見られたくないと考えた。
合同会はクラス代表のチーム戦だけではない。ソロ戦だってあるのだ。
「連携を練習するには標的が必要だろうから、模擬用の怪物を出しておこう。君たちは、まだ俺の動きについてこられないようだしね」
片腕のジャンギ相手に、いともあっさり前衛を崩されたのは記憶に新しい。
「他のクラスには拳使いもいたりするの?」と不安げな水木を見やり、これは本来秘密にしなきゃいけないんだがとの前置きをしてからジャンギは答えた。
「君たちのクラスの前衛は剣使いばかりだが、他のクラスには多彩な前衛が控えている。鞭は全クラス併せて原田くん一人だけだね」
棒や斧、槍を選んだ生徒は全て別クラスに振り分けられたようだ。
「拳使いの神髄は俊敏と腕力だ。例えるなら、ピコくんと小島くんを組み合わせたようなものかな……強敵だぞ。恐らくチーム戦でも選ばれるだろう」
ウィンフィルド教官のクラスは魔術に優れ、己龍教官のクラスはバランスタイプが多い。
拳使いは己龍教官のチーム代表で選ばれるんじゃないかというのが、ジャンギの予想だ。
「ウィンフィルドって……」と、小島が眉間に皺を寄せる。
何か言いかけるのを、「いや、スクールでは、ちゃんと教官しているから、あれは勤務外での趣味だよ」と早口で遮って、ジャンギが踵を返す。
怪物を出してくると言い残して走っていく背中を見送り、ジョゼが小島に尋ねた。
「ウィンフィルド教官を知っているの?」
「あーうん。休日に、時々出会ってよォ」と、小島は歯切れが悪い。
「最初は教官だって判らなかったんだけど、ジャンギが断言したから教官だと判明したっていうか」
「へぇ……どんな人なんだい?」と、これはピコの質問だ。
「どんなって……髪の毛が長い男の人だよ。ね?」と水木に相槌を求められて、原田も頷いた。
男の娘な件は伏せておいたほうがいいだろう。
ジャンギの反応を見た感じだと、スクールでは別の性格を演じている可能性が高い。
どちらが作られた性格なのかも判らないのだが、原田には。
「髪の毛が長いってだけじゃ、どんな人だか判らないわ。もっと詳しい情報はないの?」
なおも興味津々なジョゼの探求を打ち切らせる。
「通りすがりに出会っただけなんだ。どんな性格なのかまでは判らない」
「そうなんだ。なら己龍教官もウィンフィルド教官も、実際にどんな人なのかは合同会までお預けだね」
ピコもジョゼも納得したところで、ジャンギがケージを引っ張って戻ってくる。
「今回の模擬敵はフットチキンを使おう」
聞き慣れない怪物名が飛び出して、五人の顔全部に動揺が走るのを見てとって、ジャンギが微笑んだ。
「その様子だと、サフィア教官の座学では出てこなかったようだね。こいつも草原地帯で出会う怪物の一種だ。大きな特徴としては、動きが素早い。だが、それだけだ」
「それだけ、って?」とオウム返しな水木へ頷き返し、ケージをポンポンと叩く。
「動きが素早いだけで強くはない。プチプチ草みたいに弾を連射することもなければ好戦的でもない。無害な怪物だよ」
「でも、怪物なんですよね……」と、ピコ。
恐る恐るケージの中を覗き込んでみると、丸まった何かと目が遭い、慌てて後ずさる。
「まぁ、そうだね。一応肉食だ」と答え、しかしとジャンギは続ける。
「でも人間は食べないし、襲い掛かっても来ない。あぁ、だからサフィア教官は君たちに教えるのをスルーしたのかもしれないな」
ケージから取り出されたのは、でっぷり太った白い鳥のような生き物だ。
この見た目で素早いとは驚きだ。
「むしろ人間に食べられる側だ。食堂じゃ、こいつの肉をさばいて使っている。君たちも食べたことがあるんじゃないか?焼肉定食やフライチキンといった料理を。それの材料だよ」なんて聞かされてしまっては、もう二度と外食したくなくなる。
「えー!こいつだったんだ!なるほど、でっけぇ腹してるもんなぁ」
小島はジロジロと膨らんだ腹に目をやっては何度も納得したかのように頷き、その隣ではジョゼが小声で呟く。
「言われてみれば、あの脹脛の形……まるっきりフライチキンよね」
「眺めているだけで、お腹が減ってきたよ」とピコや水木も苦笑していて、食欲が減したのは原田だけのようだ。
一人無言と化した原田を見つめて、ジャンギが同情してくる。
「肉屋は改良生物が大半だけど、今でも一部は野生を使っている……ごめん、原田くんには初耳だったか」
「原田だけじゃないぜ、俺もだ!」
小島が声を上げ、僕も私もと仲間が手を挙げるのを見ながら、原田は気を取り直す。
肉屋で売られている肉だって、元は野生の怪物を改良した生物だ。
改良した怪物にしろ無改造の怪物にしろ、肉には変わりない。
なのに、野生というだけで毛嫌いしてしまった。汚い、気持ち悪いと考えた自分を恥じた。
「……それで、これをターゲットに選んだ理由は素早さに目を慣らす為ですか?」
原田の問いに頷き、ジャンギはフットチキンを見下ろす。
「逃げ足は天下一品、捕獲するのが難しくてね。こいつなら短剣使いや拳使いへの模擬になるんじゃないかな。連携としては原田くんが鞭で追いこんで、小島くんとピコくんとで動きを封じ、その間にジョゼさんが魔法をあてる……といったところだ」
「えー。でも素早いんだろ?当たるかな」
首を傾げる小島へは、手をパタパタ振って否定したジャンギが言い添える。
「当てるんじゃない。大剣は盾にもなると以前教えただろ。盾は自分の身を守る防具であると同時に、相手を押しつぶす武器でもある。要は盾の要領で大剣をグイグイ押し当てて、相手の移動を封じるんだ」
盾を装備できるのは片手剣を選んだ者だけだ。
しかし、原田のクラスの前衛は六割が大剣を選んでいた。
「堅実を求めるなら、前衛は片手剣使いが理想なんだけどね……君のクラスで前衛を選んだ子は、力任せに戦うのがお好きなようだ」と苦笑するジャンギに併せて、水木もニヤニヤしてみせる。
「小島くんも、そうだよねー。力任せにぶん殴るタイプ!」
「あったりまえだろ!」と、呆れられているにもかかわらず小島が大剣を振り回す。
「力いっぱい叩きつけるほうが、スカーッとすんだろ。カッコイイし」
すかさず「当たればな」と原田のツッコミがボソッと入り、小島はムッとなる。
構わず原田は結論づけた。
「お前は俺にも当てられなかったじゃないか。素早い敵との戦闘、この模擬でしっかり慣れておけよ」
そこをジャンギに「二人で模擬戦闘をやったのかい?」と聞き咎められて、水木が頷く。
「うん!小島くん、ぶんぶん振り回していたけど全然原田くんには当たらなかったんだよ!」
ジャンギは少し思案するように首を傾げていたが、やがて真面目な表情で原田を見つめてくる。
「大剣の一撃は骨が砕け散る威力だ。例え習いたての小島くんといえども、ね。大人の監視がない場所で模擬戦闘をやるのは危険だよ。次にやる時があれば、俺を呼んでくれ」
面と向かって叱ってはいないが叱られているようにも感じられて、原田は項垂れた。
しょぼくれる彼の頭を優しく撫でながら、ジャンギが微笑む。
「ただ、スクール時間外でも対人戦模擬をやろうと思いついたのは褒められる向上心だ。君たちは真剣に自由騎士を目指しているんだね」
頭を撫でていた手が頬を伝って首筋へ抜けていく頃には、原田も気づいた。
ジャンギは怒っていたんじゃない。心配してくれたのだ。
原田を見つめる両目は慈愛に満ちている。
「真剣に目指していない人なんて、スクールにいるのかしら」と呆れるジョゼには、ピコが突っ込む。
「いやぁ、結構いるみたいだよ?モテたいだの目立ちたいだのって理由で目指している人がね」
「何それ?目立ちたいなら大道芸か踊り子になればいいじゃない」
ジョゼは憤慨して吐き捨てる。
「未来へ貢献できるよう、切磋琢磨するのが自由騎士の本懐よ。そうでしょう?ジャンギ教官」
「その通りだ」とジャンギも頷き、そろそろ模擬戦闘を始めようと五人を促した。
皆が話している間、フットチキンは大人しくジャンギの足元に蹲っていた。
「――では模擬戦闘、開始!」
号令がかかった瞬間、五人は全員がフットチキンを見失う。
「え?あれ、どこいった」
キョロキョロする前衛陣へ水木が「あ、あそこ!」と指で示したのは裏庭を囲う壁の前。
白いものがチョコンと立っているのが遠目に見えた。
「え!えぇぇ!?」
自分の目で見たものが信じられず、ピコが奇声を上げる。
小島や原田にしても同様、フットチキンの素早さを侮っていた。
「ちょ、ちょっと素早すぎませんか!?」
泡食うピコへジャンギが笑う。
「拳使いだって鍛錬すれば、このぐらいのスピードは朝飯前だよ」
実際には舞台の上で戦うのだから、地平線の彼方にまで逃げられることはない。
しかし、このように目にもとまらぬスピードで動かれたらと考えると足が竦んでしまう。
「為す術もなく袋叩きになりたくなかったら、先ほど言ったように武器で牽制して動きを封じるんだ」
ジャンギがぴゅぅっと口笛を吹いた直後、白いものが一目散に戻ってくる。
こうやって最初から注目していれば、見失うこともない。
「向かい合った状態で素早さ信条な敵が逃げるとしたら、どこへ逃げると思うかい?」との問いに、水木が首をひねって答える。
「えぇと……背後か、横?」
「そうだ」と頷き、ジャンギはしゃがみ込んでフットチキンの背中を撫でる。
「その退路を両方とも塞ぐのが前衛の役目だ。素早さには素早さで対抗したいけれど、今のピコくんでは追いつかないかもしれないな。だから、そういう時は」
ちらりと視線を向けられて、原田が頷く。
「鞭で牽制するんですね?」
「そうだ」
ジャンギも頷くと、立ち上がって前衛陣を見渡した。
「鞭で牽制して、逃がしたい方角へ誘導する。そこへ小島くんかピコくんが回り込んで待ち受ければいい」
フットチキンとの追いかけっこと比べたら、対人戦のほうが簡単だとジャンギは言う。
「対人戦じゃ逃げても、攻撃をあてる為に戻ってこなきゃいけないからね。逃げまくる相手よりは動きが読みやすいってもんさ」
「え、でも間合いに深く入られたら原田は」と言いかける小島をも制して、話を締めた。
「その通り。武器には、それぞれの間合いが存在する。自分の間合いで戦うには牽制を怠るんじゃないぞ」
武器を振り回すだけでも、牽制としては充分だ。
当たれば痛い。それが判っているから、相手も不用意には踏み込めない。
鞭なら追いかけるよりも、真横からの攻撃で回り込みを封じられるだろう。
原田は二度三度、鞭を振ってみる。
「牽制役が、どの方角へ追い込むのかを瞬時に判断して動くのが前衛の連携だ。けど最初は瞬時の判断ってのも難しいだろうから、追い込む方向を予め決めておいたほうがいいね」
ジャンギの助言を受けて、前衛陣はヒソヒソ相談する。
まるでフットチキンに聞かれまいとするように、小声で。
「まず、原田が鞭で横移動を封じるだろ?したら、チキンは後ろに逃げる?」
「多分ね」とピコが小島の予想に頷き、原田を見た。
「僕が華麗に背後へ回り込めたらいいんだけど、あのスピードには勝てそうもないよ……だから、投げナイフを足元に投げるというのは、どうだろう?」
ピコの案を脳裏でシミュレートした後に原田は首を振った。
「足元じゃ逃げるスピードが速まりそうだ。足に当てられないか?」
「足を狙うぐらいだったら胴体にぶっ刺して動きを鈍らせようぜ」との小島の物騒な案に、ピコも思案する。
「動きを止めるには、投げナイフだけじゃ足りないかもしれないな……」
「短剣使いって、飛び道具を幾つ持っているんだ?」と、これは原田の質問だ。
懐を探ってピコが取り出したのは、投げナイフの他に吹き矢と丸くてトゲトゲした物体だ。
「え、なんだこれ。短剣使いってナイフが主じゃないのかよ」
驚く小島へチッチと指を振り、ピコは意味もなく、ふわさぁっと髪をかきあげる。
「短剣使いは華麗な動きで敵を翻弄するのが本懐さ。まさに僕の為にあるかのような役だと思わないかい?」
「それで……これは、どうやって使うんだ」
原田は丸くてトゲトゲしたものを、そっと摘まみ上げる。
とても小さい。
投げつけて目潰しするんだろうか――と考えてみたが、ピコの答えは違った。
「足元に投げつけて足止めする道具だよ。これを踏みつけると、滅茶苦茶痛いんだ」
「へー。実際に踏んでみたのか?」
小島が言うのへは「とんでもない!」と手を振って、ピコは身震いする。
「痛いと判っているのに踏むわけないじゃないか。全部受け売りだよ、近所のおじさんに詳しい人がいて」
吹き矢が原田の予想していた目潰しの役目を果たすらしい。
昨日の放課後、近所に住む引退自由騎士に教えてもらったのだとピコは胸を張り、先ほどの作戦に結びつけた。
「そうだ、全部投げつけたら三倍の効果があるんじゃないか?」
「全部は必要ないだろ」と即座に原田は却下し、トゲトゲしたものをピコに返す。
「これを足元に投げつけてみよう。チキンが怯んだら、小島は背後に回り込んで大剣で攻撃してくれ」
「小島くん、間違って踏まないよう気をつけてくれよ」
ピコに念を押されて、小島は勢い良く頷いた。
「痛いのは俺だって嫌だからな、一気に飛び越えりゃ問題なしだ!」
作戦タイムは終了、仕切り直して模擬戦闘の再開だ。
「では……二回目の模擬戦闘といこうじゃないか。開始ッ!」
ジャンギの号令に併せて原田は一歩踏み出し、後ろ斜め横から勢いよく鞭を振るう。
鞭が当たるスレスレで『ピギィー!』と鳴いて飛びのいたフットチキンの足元目掛けて、ピコが黒い小さな丸いものを投げつけた。
果たして裏庭にフットチキンの『ピギャァ!』といった悲鳴があがった直後には、背後に回って勢いよく大剣を振り降ろす小島の姿があった。
「捉えたぁ!」
叩き潰した!――と全員が思った直後、『ピキャア!』と一鳴きしたフットチキンの嘴から小島の顔面目掛けて何かが放たれて、「ぶわっ!?」と彼が怯んだ隙に白い物体の姿がかき消える。
否、消えたんじゃない。
猛スピードで壁の前まで逃げていき、座り込むのが遠目に見えた。
「うーん。盾の要領で押せと言ったんだけどなぁ、忘れちゃったのかい」
ジャンギは苦笑して、目をこすっている小島にタオルを渡してやる。
「攻撃されると判れば当然、反撃してくるからね。大剣は威力が大きい分、動きは鈍くなる。外した時の隙も致命的だ。振り下ろすよりも押すほうが確実に動きを封じられる。だろ?」
「そ、それより、今のなんだよ、痰!?」
タオルでゴシゴシ拭いて、ようやっと落ち着いた小島が口を尖らせる。
「あんなバッチィ攻撃してくるなんて聞いてなかったぞ!」
「痰というか、唾だね。身体には無害だけど、あとでよく顔を洗っておくといい。匂うから」と笑い、ジャンギは小島の文句にも言い返した。
「相手が、どういった攻撃をしてくるかなんてのは実際に戦ってみなきゃ判らないよ。戦闘は判断力が要だ。力任せに武器をふるって何とかなる相手ばかりだったら、過去の自由騎士だって命を落としたりしなかったさ」
特に今は押しつぶせと助言を受けた上での失敗だから、完全に小島の過失だ。
「だって原田が攻撃しろっていうからー」と、まだ往生際の悪い彼にはピコも突っ込んだ。
「おっと、原田くんは攻撃しろと言っただけで、剣を振り回せとは言っていないぞ。最初にもらったアドバイス通り、君が剣で押しつぶしていれば僕らは勝てたんじゃないか?」
確かに言ってはいなかったが、原田は己のミスを表明しておく。
小島だけの失敗ではない。きちんとした指示を飛ばせなかったリーダーの過失でもある。
「いや、俺の指示が具体的じゃなかったせいで、小島を勘違いさせてしまった。今の敗北は俺にも原因がある」
突然の謝罪に水木やジョゼはポカンとなり、ちょっと間をおいてからピコが苦笑した。
「原田くんって真面目だよねぇ。さすがは僕らのリーダーというべきか」
「その責任感こそがリーダーの資質だ」とジャンギは手放しで褒めて、原田の頭をナデナデする。
知らない人に撫でられるのは不快だが、知っている相手、それも好きな相手に撫でられるのは気持ちがいい。
やがてジャンギの手の温もりが離れていき、うっとりしていた原田も我に返る。
「残りの時間は武器訓練にしようか。時間中ずっと駆けずり回るのは結構な疲労だしね」と全員が労わられて、それぞれに武器を振り回したり呪文の詠唱スピードを高める中。
原田はジャンギを手招きで呼び寄せて、こそっと耳元で囁く。
「今日の帰りに、ジャンギさんの家へ寄ってもいいですか?教えてもらいたいことがあるんですが……」
「いいとも。俺に判る範囲であれば何でも教えるよ」と快い返事を貰った後は、皆と一緒に武器訓練に励んだ。
21/09/12 UP

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