絶対天使と死神の話

絶対天使編 08.わたしの身体に異常事態が発生です!?


またしてもアーステイラに誤算が生じたのは、依頼実習と武器訓練、そして模擬戦闘の終わるタイミングがクラスによってバラバラだった点だ。
登校時間にしても彼女だけ先にとはいかず、保護者面した二人と一緒の登校を義務付けられてしまい、依頼実習のみならず休み時間までチームメイトに拘束され、余所のクラスへ遊びに行くことも出来ない。
昼食もチームメイトに捕まり、クラスの外へ出られないのでは復讐どころではない。
長距離移動できる戦闘依頼が始まるまで大人しくしているしかなさそうだが、それまで自分が我慢できるかと言ったら答えはノーだ。 そうだ、何も学内で恨みを晴らさずともよい。
相手の家は判明しているのだから、学校が終わった時刻に訪問すればよい――
そう考えていたのだが。
「ムキーッ!どうして寄り道すら許してくれないんですかーッ」
下校後、まっすぐ家まで強制連行されたアーステイラはサフィア相手にキレ散らかすも、家主たるサフィアには真っ黒さを感じさせる笑顔で「嫌ぁねぇ、居候の分際で寄り道できると思っていたの?」と返されただけであった。
アーステイラの横では、股間を蹴り飛ばされた己龍が悶絶している。
この家は食事時間がきっちりタイムテーブルで決まっており、少しでも遅れたら罰される。
己龍は先ほど、夕食の時間に遅れた罰を受けた。
理由は一切聞かれず、いきなりの体罰にはアーステイラも驚いて、彼を庇う暇がありゃしなかった。
帰宅時に玄関の鍵をかけ忘れたアーステイラの代わりに、己龍が鍵をかけに行った。
それで遅れてしまったわけだが、アーステイラの身代わりで罰されたようなものだ。
申し訳ないことをした。
この借りはスクールの実習で実績をあげることで返すとして、問題は生活時間を拘束してくるサフィアの存在だ。
ぶすくれるアーステイラの前で、サフィアが説教の続きを展開する。
「居候じゃなくても、女の子の寄り道は容認できないわ。この辺はマシだけど、大通りと生活保護区外はホントに治安が悪いのよ。あなたみたいに可愛い子は大勢のチンピラに囲まれて、草むらに連れ込まれて乱暴されちゃうわ。だから、つまらなくても駄犬か私と一緒に下校してちょうだい」
心配してくれているんだというのは、アーステイラとて判らなくもない。
しかし天下無敵の絶対天使が人間のチンピラ如きに手籠めにされると思ったら、大間違いだ。
いや――だが。ふと小島の邪悪な笑顔が脳裏を横切り、アーステイラは首をブンブン振る。
ついぞ最近、貧弱な人間如きに屈辱を受けたのだった。油断は禁物か。
「治安が悪いのは知ってますよぅ。友達の家に少し寄っていくぐらい、いいじゃないですかぁ」
ぷぅと頬を膨らませて反論するアーステイラを眺め、サフィアは苦笑した。
「友達の家に寄ったら、少しの時間じゃ済まないでしょ。とっぷり夜が更けた大通りは想像以上に怖いんだから。誰もいないのに、でも誰かの気配を常時感じるのよ。あんな場所、あなたには一人で歩かせられません」
まるで駄々っ子をあやすかのような口調には辟易する。
たかが人間の分際で、こちらを下に見ている態度にも。
だからといって、ここで癇癪を起こして飛び出すのは愚か者の選択だ。
三食屋根つき風呂つき、ふかふかの布団に包まって眠る一日の終わりは捨てがたい。
いくらサフィアがムカつく女でも、野宿だけは絶対に避けたいアーステイラであった。
駄犬こと己龍は最初の日に約束したとおり、ベッドをアーステイラに譲って外で一晩明かしているようだ。
あれから二日経っているが、夜這いされる事態にもならず、安全な住まいを提供されている。
サフィアは、お母さんの如き態度と距離感でアーステイラに接してくる。
料理・掃除・洗濯と家事を立派にこなす上、手に職を持ち、これで生活費や維持費も彼女が全部担っているんだとしたら、人間としては完璧な部類ではなかろうか。
だが、アーステイラの前でだけ善良な面の皮をかぶっているのかもしれない。
なにしろ義理の弟を駄犬と呼んで、素っ裸を強制させているような奴だ。
全面信頼してはいけないと、アーステイラは脳内で警鐘を鳴らしておく。
今日の夕飯も美味しかった。食べ損ねた己龍には悪いのだが、おかわりまでしてしまうぐらい。
あとは風呂に入ってベッドで眠るだけだ。
アーシスの夜は、娯楽が何もない。人々は家に帰って寝るだけの生活を営んでいた。
夜道はチンピラが徘徊しているそうだし、大人しく家で寝るほうが賢いのだろう。
一応、己龍の部屋には書物が数冊置かれていたのだが、居候一日目の朝に全部読破してしまった。
どうやったら素早くなれるかといった戦闘指南が殆どを占めていた。
本を読めば強くなれると考えていた時期が、あの男にもあったのであろう。
本を読んでも強くなれない。強くなるには実戦あるのみだ。
それを怠ったから、自由騎士引退後はサフィアなんぞに頭を抑えられているのではないか?
アーステイラは本ごと己龍の人生を一笑に付して、元通り本棚へ戻しておいた。
お風呂を出て歯を磨いた後、サフィアへ「おやすみなさーい」と一声かけてから部屋に入る。
これも、この家のルールなんだそうだ。
おはようの挨拶を忘れて朝食に手をつけて制裁された己龍なら、今朝見たばかりである。
アーステイラと違ってサフィアとの暮らしは長いはずなのに、なんで罰されまくっているのか。
一人同居人が増えた余波で生活リズムが狂ってしまったんだとしたら、重ね重ね申し訳ない。
心の中で謝りつつ、しかし一緒に寝てやる気は更々なく、アーステイラは、さっさと布団に潜り込んだ。

寝息だけが聞こえる部屋へ、今日も忍び入る影がある。
忍び足で近づき、布団をめくってアーステイラの下着を脱がす。
股間を舐められ両乳首を指で摘ままれても、彼女に起きる気配はない。
部屋に充満する香の匂いが、アーステイラの目覚めを封じているせいだ。
元々はサフィアの身体へ悪戯する為に買った物だ。
香りは睡眠を誘い、翌朝まで何が起ころうと熟睡させる。
あの女が普段どれだけ強かろうと、さすがに熟睡中は抵抗できず、己龍の思うがままだ。
膣を舌で舐めまわしたら喘ぎに喘いで乱れまくって、それでも起きなかった姿を見て少しばかり気が晴れた。
だが翌日、僅かに残った匂いに気づかれた為、それ以降は使っていない。
アーステイラを連れ帰った晩、ベッドを譲ってやろうと考えた時に香の存在を思い出した。
最初から香を焚いておけば、翌日に香りが残っていても不審に思われまい。
初日は一舐めするだけで終わった悪戯も、三回目の夜には、じっくり様子を伺う余裕が生まれている。
アーステイラは乳首を弄られるのが、お好みのようだ。
爪で軽く弾いてやると、アンアン小声で喘いで乳首を尖らせる。
尖った乳首を口に含んで舌でペロペロ舐めまわしたら、体を激しく痙攣させた。
ぎゅっとシーツを握りしめて快感に耐えているのが、なんとも愛らしい。
反応の良さから考えるに、自分で弄った経験があるのだろう。
乳首と比べると、股間愛撫はイマイチだ。
どれだけ舐めても全く反応せず、単純に感度が鈍いのか、それとも自慰行為で股間は弄らないのか。
彼女が男性の下半身に興味がないとは思えない。
駄犬プレイ中の己龍を、それも腹部より下をチラチラ見ていたあたり、興味津々と見て間違いない。
具体的な性行為の方法を知らない――その可能性は、ある。
前は駄目として、尻はどうなのか。
尻の穴に指を突っ込んだら間髪入れず、ぎゅぅっと絞めつけられて、驚いて少女を見やれば、シーツを力いっぱい握りしめて全身で感じているではないか。
前より後ろが良いとは、コアな嗜好の持ち主だ。
たっぷり指で掻きまわして、彼女が絶頂に達するのを見届けた。
「……あなたは、どのような男性が好みなのでしょうか」
己龍がアーステイラに伸し掛かる。
荒い息を吐く唇を指でなぞり、徐に己の唇を重ねた。
ちゅくちゅくと音を立てて唾液を堪能する傍ら、右手は硬くなった乳首を捏ねくり回す。
左手は後ろに回され尻の穴へと入り込み、内側の肉を爪の背で撫でてやる。
唇を開放した直後、「ん、んぅ、はァんっ」と甲高く喘ぎ、アーステイラはビクビクと体を震わせた。
先ほどイッたばかりなのに、またイッてしまったようだ。
「あぁ……あなたが今、目を覚ましたら、どんな反応を示すのでしょうね」
下着を元通り履き直させると、しばらく口元を薄く歪めて少女を眺めた後。
満足したのか、己龍は部屋を出ていった。


快眠しているはずなのに、なんでか身体の調子がおかしいとアーステイラが気づいたのは、サフィアの家に住み着いて四日目の朝を迎えた日であった。
具体的にいうと、感度がおかしくなっている。
ちょっと身動きしただけで、乳首が反応してしまうのは困りものだ。
これまで一度も布でこすれた程度で乳首が尖ったりすることなど、なかったはずなのに。
乳首が布を押し上げていると判る状態で学校へ行くのは恥ずかしい。
が、登校時間もきっちり定められたサフィア家で仮病は許されず、腕を組んで誤魔化しながら教室へ入る。
授業中は尖った乳首と布の摩擦もさることながら、しきりに尻の穴がムズムズして落ち着かない。
指を突っ込んで引っ掻き回したら気持ちよくなるんじゃないかという感覚だ。
これもまた初めての異常事態で、アーステイラを困惑させる。
しかし、まさか授業中に尻の穴を掻きむしるなんて恥知らずな真似、出来るわけがない。
帰宅後にトイレか風呂、誰もいない空間で、じっくりマッサージするべきだ。
だが尻穴の痒みは時間と共に増してきて、帰宅まで我慢できる自信がなくなってきた。
かくなる上は保健室だ、保健室にあるベッドで布団に隠れてマッサージするしかない。
思い立ったら即実行、休み時間に入ると同時にアーステイラは席を立つ。
チームメイトに声をかけられるよりも前に廊下へ飛び出してすぐ、ちょうど歩いてきた誰かとぶつかり、「きゃうんっ!」と叫んでアーステイラは尻もちをついてしまった。
「ご、ごめん。大丈夫かい、レディ?」と差し出された手に掴まり、立ち上がって相手をよくよく眺めてみれば、こいつは原田のチームメイトでピコとかいう少年ではないか。
いや、それよりも、さっきの感覚。
胸にそっと手をやり、アーステイラは考える。
ぶつかった瞬間、彼の肘とアーステイラの胸が接触し、今までにない甘い痺れが乳首を通して身体中に浸透した。
これって、もしかして……恋なのでは?
もう一度、まじまじとピコを眺める。
サラサラの金髪に青い瞳で優男、イケメンの部類に入るタイプだ。
咄嗟にぶつかった相手へ手を差し伸べられる優しさも身につけている。
なんで原田なんかのチームに所属しているのかは謎だが、初日で適当に決めてしまったのであろう。
「どうしたのかな、僕の顔をじっと見つめて」と尋ねてくる彼の手を両手で握り、アーステイラは熱に浮かされた瞳で答えた。
「ぶつかった胸がジンジンしちゃって変なんですぅ……」
「それは大変だ。保健室まで送ろう」と誘われるのに身を任せ、一緒に保健室へ向かった。

保健室には保健医だか救護士だかが配置されているはずだが、アーステイラが入った時点では誰もいなかった。
だが、それでいい。そのほうが気持ちを伝えやすい。
後ろ手にドアを閉めて、アーステイラはピコに密着する。そっと小声で囁いた。
「わたし……あなたが好きです、好き……みたいなんです」
好きだと思った瞬間、どんどん恋焦がれる気持ちがアーステイラの心を満たし、もうピコ以外見えなくなる。
ピコもアーステイラの告白をどう受け取ったのか、ベッドに横たわるよう彼女を促した。
「楽にしてごらん」
そっと腕を降ろして楽な姿勢を取りながら、アーステイラは立った乳首について考える。
こんなふうに乳首を立てている自分の事を、彼はどう思ったのか気になった。
ピコの視線が乳首に集中しているような気がして、恥ずかしさで消えてしまいたい。
ついっとピコの指がアーステイラの乳首を摘まみ、クニクニと弄ってくる。
「こんなに乳首を堅くするほど僕に恋してしまったんだね……」
耳にかかる囁きが熱い。
「あぁっ、ピコ様、ピコ様ぁ、お尻の穴も弄ってェ」
勝手に甘ったるい声がアーステイラの口を飛び出して、大胆なお願いにピコがくすっと笑う。
「君は、お尻の穴を弄られるのが好きなんだね。いいとも、たっぷり弄ってあげるよ、レディ」
この少女にはピコも見覚えがあった。
いつぞやの登校中、原田と仲良くおしゃべりしていた子だ。
別クラスの子と仲良くなるだなんて原田くんは意外とやり手だなと感心したのだが、彼女が興味を持っていたのは原田ではなく自分、つまりピコに近づくために原田をダシにしたのだとピコは合点する。
ずっとピコとヤれるタイミングを狙っていたのだ。イケイケの肉食女子は嫌いじゃない。
ドレスを脱がして二つの膨らみに、そっと手を置く。
「ピコ様、胸じゃなくて、お尻の穴をホジホジしてぇ〜」とのおねだりは「レディ、物事には順序が必要なんだよ」と軽く宥め、たっぷり胸をモミモミ揉んで柔らかさを堪能した後、ようやく彼女の望み通りに下着の中で尻の穴に指を突っ込んでやった。

――あられもない嬌声を絶えずあげ続けるアーステイラと睦みあう男子生徒の姿を遠目に見つけ、クルリと踵を返して、神坐は、そっと保健室を後にした。
21/06/03 UP

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