己キャラでMMO

14周年記念企画・闇鍋if


ユン&セツナ

ホワイトデーダンジョンが混雑しているのは、けしてイベント自体が楽しいからではない。
ということを、ユン達は入ってから知ったのであった。

「なっ……なんじゃあ、こりゃあ!?」
ダンジョンに入った瞬間、キースが素っ頓狂な大声をあげたのも無理はない。
目の前で繰り広げられているのは、大強姦祭り――とでも言えばよいのか、あちこちでレベルの低い少女が男達に組み敷かれて襲われていた。
装備を剥がれ、素っ裸の状態で手足を押さえつけられ、呻きだか喘ぎだかを漏らしている。
男達の無遠慮な手が胸や股間をまさぐり、悲鳴をあげようとすれば唇を無理矢理キスで塞がれる。
大体一人につき二、三の男が群がっており、女性に反撃の隙を与えない態勢だ。
「なんてことなの……弱い者虐めで盛り上がっているだなんて、酷いイベントね」
助けるにしても、三人では圧倒的に手数が足らない。
いや、下手したら返り討ちにも遭いかねない。
暴漢どもは意外や高レベルばかりだ。
セツナの吐き捨てた言葉に、呆然と辺りを見渡していたユンがハッとなる。
「そうだ、ナナは?ナナも襲われているのではッ!」
「なんだと!?そいつぁ許せないぜ、ユン!急いでナナたんを探すんだ!!」
手前の乱交に見入っていたキースも我に返り、二人を急かす。
「待って、今、現在地検索してみるわ」
セツナが検索窓を開く側から、ユンは走り出した。
「検索など必要ない!これだけ手狭ならば、すぐ見つかるはずだ」
入った直後に出た情報によれば、全三階層の狭いダンジョンだ。
加えて敵のレベルは各プレイヤーに併せてある上、シンボル形式なので回避も可能。
急いで全部屋見て回れば、検索するよりも早くに見つかるはずだ。
「ナナたぁぁぁん!ナナたんの処女&ファーストキッスは俺のものだぁぁぁっ!」
変態眼鏡が叫びながら、あちこちのドアをバタンバタンと開けて回っている。
何も三人一緒に同じ場所を探す必要もあるまい。
セツナとユンはキースをその場に残すと、つれだって階段を下りていった。

地下一階も、地上の一階と同じく散々な有様であった。
至る所で陵辱が行なわれている。
このチャンネルだけの現象なのか、それとも全チャンネルこうなのか。
それを考える余裕すらないまま、ユンとセツナは手当たり次第に扉を開け放った。
「ナナちゃん、どこなの!?ナナちゃんっ!」
開くと同時に呼びかけもおこなえど、ナナの返事はない。
時折振り向く暴漢もいたが、大抵はすぐに獲物へと戻ってしまい、焦りが高まってゆく。
「くそっ、駄目だ、この階にもいないッ」
ユンが珍しく、悪態をつく。
そこへ追いついてきたキースが「あっ!」と突然大声を出して、壁を指さした。
「どうした、キース!?」
「あそこ、あの壁に扉がある!」
「壁に!?」とセツナも目をこらしたが、同じような煉瓦模様の壁が続くばかりだ。
首を傾げるセツナとは異なり、ユンはすぐにピンときたのかキースへ叫んだ。
「シークレットドアか!」
キースも頷き、眼鏡をくいっと押し上げる。
「万人には見えずとも、探索スキル持ちの俺には、はっきりと判ったぜ……!」
探索スキルを持つのは、シーフ系とレンジャー系の二つだけだ。
セツナが改めてキースのステータスを調べてみると、職業はジェノサイド。
レベルは65となっていた。
セツナやユンを軽くぶっちぎり、ここらの暴漢と張り合えるほど強い。
「随分とレベルアップに励んだみたいね」
驚くセツナを、キースは鼻で笑い飛ばす。
「フッ、いつナナたんと再会してもいいよう万全にしておかねば、ナナたんの夫になる資格もない。それよりもいくぞ、二人とも。いざ、シークレットルゥゥーム突貫ッ!!」
叫ぶや否や、壁を蹴り飛ばす。
すると壁がバターンと半回転し、新たな入り口を開いたのであった。
「ナナたん、ナナたぁぁぁんっ!君の王子様、参上ッ!!」
シークレットな部屋に転がり込んでみれば、はたして、そこにいたのは人影が複数。
いやさ、二人の少女が床に押しつけられて襲われている。
うち一人は、二人がかりでサンドイッチされている。
背後の男には胸を揉まれ、前にいる男には唇を吸われていた。
もう一人は四つんばいになり、後ろから男二人、前に男一人の態勢だ。
前の男のものを咥えさせられており、後ろの男が腰を動かすたびに、くぐもった声をあげている。
それとは別に、もう一人。
壁際に蹲った少女がいる。
彼女の周りには、股間を押さえて呻く男達が転がっている。
どいつも口から泡を吹き出していた。
無事と見える状態の、少女の髪の毛は桃色であった。
一人だけ裸ではない。
服を着ていた。
頬には涙が伝っている。
「ナナッ!!」
ユンの叫びに、少女が顔をあげて、こちらを見る。
「ゆ……ユン兄ぃ……?」
間違いなく、少女はナナだった。
だっと駆け寄り、ユンがナナを抱きかかえる。
「ナナ、無事だったか!?」
「う、うん……あたしは平気、だったけどぉ……」
ナナの瞳からは涙がぽろりと、また一粒。
「と、友達が、うぅっ、みんなを助けてあげてぇ、ユン兄ぃ」
友達というのは、近くで襲われている二人の事か。
暴漢のレベルは平均60。
非戦闘職のユンには厳しいレベルだ。
キースでも相手が近接だと厳しくなってくる。
レンジャー系は、守ってくれる壁がいてこそ生きてくる職業だ。
ソロでは戦えない。
だが泣きじゃくるナナを見て、キースの中の騎士道が奮い立つ。
考えるより先に、叫んでいた。
「高レベル相手に、よく頑張った!あとは俺に任せてリタイアしろ、ナナたん!!」
「逃げろ、ナナ」とユンにも諭されて、すかさずナナも頷いた。
「うん!絶対、みんなも助けてあげてね」
お願いを最後に、ナナの姿が瞬時に消える。
リタイアでダンジョンを強制退場したのだ。
ナナは無事に助けられたが、それで終わりにするわけにもいかない。
彼女に頼まれた、友達の救出が残っている。
ナナへ襲いかかった連中は、全員金的でノックダウンさせられたようである。
股間を押さえて、口から泡を吐いている状態を見た限りだと。
金的はレベル関係無しに通用する技なのか。
ならばユンやキースにも、勝ち目があるかもしれない。
素早さで翻弄して、上手く蹴りを叩き込めば。
「うおぉぉっっ!!!」
ドゴッ!と勢いよく暴漢の股間を蹴り上げる姿が目に入る。
キースが思いつくより早く、ユンは行動に移していた。
すなわち、奇襲からの金的を。
完全に油断していたのか暴漢の一人は音もなく崩れ落ちたが、残った奴らは、そうはいかない。
あっという間にユンも押さえつけられ、床に引き倒された。
「ユンッ!!」
助けに行こうとするキースへ、男達の待ったがかかる。
「おぉっと、動くなよ?お友達を助けたかったらなぁ」
ユンにのし掛かった男が、卑猥に笑う。
何をするのかと見ていると、ユンの上着をめくりあげ、きゅうっと乳首を摘んでくるものだから、「くぅっ」とユンは顔を引きつらせ、キースとセツナは大いに焦った。
「なんだ、お前!お前、どっちもアリな奴なのか?変態、変態ッ!」
今は全面的に変態眼鏡が正しい。
セツナも一緒になって罵倒する。
「ユンから手を放しなさい、この変態!さもないと、あなた達全員、地獄を見るわよ!?」
「ヘッ、このネーちゃんが俺達に地獄を見せてくれるってよ」
ゆらり、と少女を襲っていたはずの全員が立ち上がる。
いつの間にか四方を囲まれていた。
まずい。
キース一人ではセツナまで手が回らない。
いや、この際セツナなんかどうなったっていいが、男に襲われるのは御免だ。
ユンも助けてやらねばならない。
だが、一人では――
「よし、判った!お前達の邪魔はしない、だからユンを解放してくれ」
キースの要求も虚しく、周りを取り囲んだ男達からの返答はない。
それならば、とキースはセツナの肩を掴んで前に押し出した。
「なんなら、この女をくれてやろう!代わりにユンを」
「ちょっとキース、勝手なことを言わないで!」
たちまち手元では金切り声があがり、男達に押さえつけられたユンからも非難が飛んでくる。
「キース、馬鹿を言っている暇があるならセツナと共に逃げろ……ッ」
すぐに、男にぶちゅっと唇を塞がれて、ユンの声は途中で途切れた。
「オイ、変態!やめろと言っているだろうッ。ユンに手を出すんじゃない!」
ユンを優先して庇うキースに、セツナが意外なものでも見たかのような視線を向けてくる。
それに気づいたキースもセツナを見下ろし、小声で囁いた。
「女医、お前も得意の悪知恵でもってユンが助かるよう動いてくれ」
「誰が得意なのよ、悪知恵なんて。あなたの十八番でしょう?」とやり返し、セツナは、ついでとばかりに付け足した。
「……意外と、友達想いだったのね」
「そういうんじゃない」
小声でぶうたれると、キースは険しい目つきで暴漢を睨みつけた。
「ユンは俺達の仲間にしてリーダーであり、ナナたんの兄貴でもある。ここでユンを見捨てたら、元の世界へ一緒に帰れなくなるばかりかナナたんにも嫌われっちまう」
もっともらしい理由をつけてきたが、仲間だと言うならセツナを置き去りにする意味が判らない。
それに、これ以上ないほどナナからは嫌われているのに、今更守る体面もなかろう。
「へっへっへっ。早く地獄を見せてもらおうじゃねぇか。あぁん?」
男達が一歩、また一歩と包囲網を縮めて近寄ってくる。
絶体絶命とは、まさに今の状態を指す。
だが。
イベントダンジョンでPEを行なう物好きがいるならば、PKを望んで行なう物好きもいるわけで。
「いやっほぅ〜〜!シークレットドアで隠れてんのは、訓練された傭兵だぁ〜!ドアに気づかないで何周もマラソンする奴は、訓練されてない雑魚だぁ〜〜!」
ワケの判らん事を叫びながら、キース達のいる部屋に転がり込んできた奴がいる。
そいつは体勢を立て直すや否や、銃を構える。
ちょうど真後ろを向いていた男へ、すかさず発砲した。
「ぐわっ!」
それも通常攻撃ではない。
スキルを使った大技だ。
弾が当たった瞬間、激しい閃光が皆の目を焼き、一瞬の隙を突かれて別の男も攻撃を受ける。
部屋は、瞬く間にして混乱に陥った。
双方どちらにも見覚えのない相手による、唐突なPKである。
混乱するのは当然だ。
横たわった女子二人とユンを除いた全員が、狭い部屋内を逃げまどう。
「うひゃっほぉ〜!」
奇声と共に飛んできた銃弾を、「うおっと、危ねぇ!」キースは手前の男を盾に間一髪。
「て、てめぇっ、覚えてろォ……!」
男は点滅して消えていったが、キースの知ったことではない。
元々知らない顔だし、二度と会うこともないであろう。
ユンが狙われていないと知ったセツナは素早く横たわり、息を潜める。
その間にも、性暴行していた連中がバタバタと面白いぐらいに呆気なく倒れていく。
奇襲を仕掛けてきた者は部屋にいた連中と互角か、それ以上のレベルなのだろうか。
逃げるばかりではなく攻撃を仕掛けた者もいたようだが、剣が届くより前に弾が被弾した。
無論、ただの弾ではない。
必殺の攻撃スキルによる銃撃だ。
クールダウンの問題を、どう解消したものか、相手は攻撃スキルを連発している。
これじゃ危なくて、近接職は近寄れない。
なるほど、遠距離職でも奇襲での攻撃スキルならば優勢に戦えるのか。
参考になるな、ふむふむ。
感心しつつ、キースもセツナの右にならえで床に横たわる。
PK好きはPE好き以上にキチガイだ。
説得や泣き落としの効く相手ではない。
やがて動くものが一人もいなくなったかして、奇襲してきた奴が満足げに呟いた。
「よっしゃー、制・圧!次の部屋、次の部屋〜っと♪」
言うまでもないが、PKやPEはイベント内容に含まれていない。
あまりにも簡単すぎるダンジョンに飽きたプレイヤーが自分ルールで遊びだしたという事なのだろう。
巻き込まれるほうは、たまったものではないが。
扉がバタンと閉まり、足音が完全に遠ざかってから、ユンとセツナとキースは、ようやく身を起こした。
「まったく、恐ろしいな。簡単なら簡単で、簡単を楽しめってんだ」
ぶつくさ言うキースを余所に、ユンが他の少女二人を助け起こす。
「災難だったな……歩けるか?」
一人はすすり泣き、もう一人がユンを見上げた。
「う、あ、ありがと……あいつら、いきなり襲いかかってきてぇ〜」
見上げただけではなく、ぎゅっとユンに抱きついてくる。
無表情に受け止めながら、ユンは二人の名前を確認した。
すすり泣き続けているのは、黒髪のトライザ。
抱きついてきたのは、金髪のミーナ。
どちらも知らないプレイヤーだが、ナナが友達と呼ぶからには彼女のフレであろう。
検索した時一緒だったはずの春名とビアノは、どこへ行ったのか。
ここを出た後でナナに聞いてみれば判るはずだ。
二人の少女を促し立ち上がらせると、ユンは己の連れを振り返る。
「ここにいては、また別の奴に襲われるかもしれん。リタイアで全員強制離脱しよう」
「えぇ」とセツナが頷く横では、キースが口元を歪めてセツナを見る。
だが「なによ?」と聞き返す彼女には「別に」と答えただけで、さっさとダンジョンを離脱していった。

ナナと合流し、被害を受けていた二人も連れて、ユンはマイホームへ帰宅する。
ソファに腰掛けるや否や「何が起きた?」と尋ねてくる義兄へ、ぽつりぽつりとナナが話す事にゃ。
最初のうちは、春名やビアノと一緒に周回を楽しんでいた。
その時は誰に襲われることもなく、また、ダンジョンには他の男女PTも沢山いた。
そのうちに春名とビアノは途中で飽きて抜けてしまい、ナナ一人になってしまった。
一人で遊んでいてもつまらないので、ナナはフレの二人、トライザとミーナを呼びつける。
ダンジョン内でナナが待ち、後から入ってきた二人と新たにPTを組んだ。
春名とビアノに比べ、トライザとミーナは格段にレベルが低い。
二人が加入した時点でPTレベルも低くなり、PEを狙っていた奴らに目をつけられたのだろう。
何周目かで入口に戻ったら既に乱交PE大会が始まっており、あちこち逃げまどい、ついには捕えられてシークレットドアへ連れ込まれた。
ナナだけが無事だったのは、ひとえに金的のおかげだそうだ。
服を脱がされそうになった瞬間ドスッと蹴り上げた、とはナナの弁。
無我夢中でキンタマを一点集中で蹴飛ばしているうちに、襲ってきた輩を全滅させた。
他の二人を強姦している男達は、ナナには襲いかかってこなかった。
連中は最初から襲う相手を決めていたようにも思う。
と言って、ナナは話を締めくくる。
「二人が襲われたのは、あたしのせいだよね……」
項垂れるナナを、キースが励ます。
「それは違うぞ、ナナたん。襲いかかってきた奴らが悪いんだ」
「キースの言うとおりだ」とユンも同意し、トライザとミーナの顔を交互に見やる。
トライザとミーナは、ユンの両隣に座った。
もちろん、今は裸ではなく装備をちゃんとつけ直している。
「二人とも、ナナを嫌わないでやってほしい。これからもナナの良き友でいてくれるか」
ユンがお願いすると、二人はコクンと勢いよく頷いた。
「えぇ!」
「もちろんです。あなたの妹ならば、なおさらですわ、お兄様!」
助けたのはPK野郎なのに、二人は何故かユンを英雄視しているようだ。
「ところで、お兄様?」
しっかとミーナに手を掴まれ、ユンは「ユンでいい」と断ってから先を促す。
「なんだ?」
「ユン様には、只今恋人と呼べる方がいらっしゃるのでしょうか?」
およそ、この場にそぐわない雑談を振られて、ユンの目は丸くなる。
間髪入れずにキースがセツナの肩を掴んで、前に押し出した。
「恋人ならいるぞ、ここに。ほれっ、こいつがユンの恋人セツナだ」
「ちょっと、触らないでくれるかしら」
セツナは眉間に皺を寄せたばかりか、ぴしゃりとキースの手を叩くオマケつき。
チッと舌打ちし、キースも悪態で返した。
「シャイなお前らにかわって俺が紹介してやろうというんだ。素直に乗っとけよ」
「あなたに紹介される謂われはないわ」
キースとセツナが小競り合っている間にも、今度はトライザがユンの手を握りしめる。
「要するに、セツナさんはキースさんのご推薦なのですね。他には?」
「いや……その……」
馴れない話題で俯きがちになるユンへ、更なる呟きが飛んでくる。
「あぁ、傷物の乙女に聞かれても困りますよね、このようなこと……」
言っているのはミーナだ。
どことなし、寂しげな目線で。
慌てて「傷は関係ない」とフォローすれば、たちまち立ち直ったミーナにガバッと抱きつかれる。
「傷物の乙女でも差別なさらないだなんて、さすがユン様!素晴らしいですわ!!」
コイバナから一歩も進まぬ堂々巡りに、ユンも、ますます困惑を深めるばかり。
ナナには他にも聞きたいことが、いっぱいあるのだ。
いつまでも雑談にかまけている場合ではない。
ユンが助けを求めてナナを見やると、ナナは眉毛を釣り上げて強気に出た。
「もぉっ、ミーナもトライザも、そのへんにしてあげてっ。ユン兄は、あたし以外には全然興味ない恥ずかしがり屋さんなんだから」
「えっ?」
きょとんとする二人の前で、ナナがぎゅっとユンの腕に抱きつく。
「あたしとユン兄は、義兄妹にして許嫁兼恋人だもん。ねっ♪」
とんでもないアドリブにキースやセツナもポカンとする中、ユンは無表情に頷いた。
「そういうことだ」
どういうことだ。
と思ったが、ユンの瞳に助けを求める光を見つけたキースも口裏を合わせる事にした。
「そうだったな。つい別れの口実として、セツナをお前に押しつけようとするのは俺の悪い癖だ」
ギロリと人相悪くキースを睨みつけながら、セツナも彼らに併せる。
「酷い人よね、あなたって。そりゃあ私としても、あなたよりはユンのほうが好みだけど。でもユンはナナちゃんと相思相愛すぎて、私の入る隙間もないのよね」
ギリギリとセツナに足を踏みつけられた格好で、キースがユンへ目を向ける。
「ユン、これからナナたんと再会のラブシーンを繰り広げたいんだろう?判っている、皆まで言わずとも俺には、ちゃああんと判っているぞ。そういうわけなので、お二人には退場を願おうか。さぁ、帰った帰った。さようなら!」
颯爽と立ち上がり、強引に二人の背を押して追い出しにかかった。
「えっ、えっ」
何がなんだか判らないまま、トライザとミーナはユンのマイホームを追い出される。
「な〜んなのよぉ……」
「えー、ユン様と、もっとお話ししたかったぁ〜」
ぶつぶつ文句を言いつつ、去っていくのを窓から四人で見届けた。


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