2021・クリスマスif闇鍋長編

カップル限定クリスマスパーティ

3.定番のごちそうといえば?

一番星を取れば先に進めるのではないか。
だが実際、手に入れてみたら、願いはかなえられずに終わってしまう。
四人は全員、アテが外れて愕然となる。
「これ以上先には進めないのかしら……」
がっくり肩を落とす側から、誰かの大声が響き渡る。
「見て、これ!地下に階段が続いている!!」
何かと思って人だかりを覗き込んでみれば、大きな箱の燃えカスの下に階段が出現しているではないか。
次に進むキーアイテムは、ツリーではなくプレゼントを模した箱だったのだ!
「誰だよ、登ろうとか言った奴」とソロンは悪態をついてみたが、あの時は全員がそれしかないと思い込んでいた。
なにしろ完全ノーヒントの脱出ゲームなもんだから、刃が選択を間違えたとしても仕方ない。
「みんな、聞いて」
よく通る声が会場内にいるカップルへ呼びかける。
「この会場は、どこにも出口がなかった。けれど、今、こうやって出口と思しき階段が見つかった……外に出たい人は、いる?私は、この階段を降りてみようと思う」
勇気ある決断をしたのはシャギーのかかった紫髪で、ローブ姿の少女だ。
傍らで、赤い帽子を後ろ前にかぶった青年も皆に呼び掛ける。
「クリスマスパーティって言いながら、ごちそうが用意されてないなんておかしいよな?腹も減ってきたんで、出口を探すついでに食い物も探してみようと思ってんだ。一緒に来てくれる奴がいたら嬉しいんだけど」
最初の会場と違って、ここには食べられるものが一つもなかった。
お腹を空かせる者が出てくるのも当然だ。
「よし、いってみるか。もしかしたら地下に本会場があるのかもしれん」
真っ先に同行を願い出たのは、一番星を取ったキースとかいう眼鏡青年であった。
「待って、私達もいくわ」とティルが名乗り出て、シズルたちと一緒に隠れ通路へ退避した面々も手をあげる。
そのうち全員で行くのは危険だと誰かが言い出したのをきっかけに、茶髪の男性が場を取り仕切る。
「まずは俺達が探検してみて、外に出られるようだったら戻ってくるよ。他の人は、ここで待っていてほしい」
眼鏡青年キースを先頭に、巨乳少女ナナ、帽子青年ジロ、紫髪少女ルリエルと続き、ソロン、ティル、刃、シズル、ツルッパゲ少年原田、茶髪男性ジャンギがしんがりを守って階段を降りていった。


長い、どこまでも長く続いてゆく階段を下りる途中。
「男女カップルだけが招待されたのかと思っていたが、男同士もアリなのか。お前ら、恋人なのか?」
眼鏡青年の放ったド直球な質問に、たちまちシズルは顔を真っ赤に「違ェよ!つか知ってんだろうが、お前も」と吠えたけて、どうやらシズルと刃はキースやナナと知り合いであるらしい。
かくいうソロンはジロとルリエルに見覚えがあり、全くの見ず知らずばかりが集められたわけでもないと知って安堵する。
「それにしても出身地も時代もバラバラだなんて、私達を集めた人は賢者クラスの魔術師なのかしら?」
ティルは首を傾げている。
ジャンギと原田はソロンやティルと同じファーストエンド出身でありながら、ロイス王国なんて全く知らないという。
彼らはサウストの時代に生きており、ソロンとティルが生きるエイストよりも遥か未来にあたる。
聖戦で世界が滅びかけたというのにもショックだ。
聖戦なんて、アルカナルガ島だけで起きている戦争だとばかり思っていたのに。
「或いは魔族なのかもな」と答え、ソロンは底の深そうな階段を睨みつける。
魔族とは何かと尋ねてくる原田に異種族の基本知識を教えてやりながら、この階段は何処まで続くのだろうとも考えた。
どこまで降りても真っ暗で、底が見えない。本当に降りてしまって良かったのか。
だんだん不安が浸透してきた辺りで、ようやく「見て」とルリエルが指を差す方向へ、ぼんやり灯りが見えている。
「最終地点に到着か?」
果たして一番最後の段を降りてみれば、一面に広がるのは、だだっぴろいスペースだ。
どこからか、音楽が聞こえてくる。
次第に近づいてきて、やがてはっきりとした旋律になった。
音の出どころはソリに乗った赤い服に身を包んだ毛深い男で、そいつが大声で「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るぅ〜♪」と歌いながらベルを振り回していたのだ。
「どうして鈴が鳴るのか知っているかい?」と男に尋ねられたので、ひとまずキースが答えてみる。
「どうしてって、お前が鳴らしているんじゃないか」
「ぶっぶぅ〜!クリスマスだからです」
むかつくヒヨコ口で不正解を告げて、男が名乗りを上げた。
「俺はデキシンズ。ここで歌いながらベルを鳴らしていれば迎えが来ると言われたんだが、君達がそうなのか?」
「いや、俺達は出口を探しているだけッス」と即座にジロが否定し、ルリエルも会話に加わった。
「あなたは、誰にそれを命じられたの?」
「知らない奴だった。黒髪で痩せすぎず太りすぎずな青年だ。ここは行き止まりだぜ、出口なんてない。ただ、向こうには厨房があるけど入れないんだ」
向こうとデキシンズが指さした先には扉が一つある。
始終いい匂いが漂ってくるので厨房だと判断したが、何度引っ張っても押しても全然開かない。
なので、開けるのを諦めたのだそうだ。
「ところで……お前はクリスマスが何なのか知っているのか?」とキースに問われ、デキシンズは「いや?全然知らないよ」と明るく答えた。
では何で鈴が鳴るのはクリスマスだと答えたのかとも突っ込まれ、それが迎えとの合言葉だったと彼は言う。
「確かクリスマスってのは、どこかの世界にある祭りッスよね」とジロが異世界知識を披露して、キースに確認を取る。
「そうだ。七面鳥を焼いて巨大な木を飾り立てて、仕上げにケーキを食べてサンタからプレゼントをもらう祭事だ。だが、ここには、ごちそうもプレゼントもないじゃないか。これでクリスマスと言えるのか!?」
そんな血相変えて怒鳴られたって、キースの不満に答えられる者は一人もいない。
「飯なら俺達がいた会場にあったぜ」と、シズルが思い出す。
「巨大な木も……あったわね、一応」
ティルも相槌をうち、ならプレゼントは燃え落ちた箱が、そうなのか。
「俺の、この格好はサンタクロースっていうんだそうだ」
赤い服を引っ張ってデキシンズが微笑む。
「ジングルベルっていうのが、この鈴の名前らしいね。木と飯とサンタがあるなら、クリスマスは一応揃っているんじゃないか?」
だが、それらがバラバラに置かれていたんじゃ意味が伝わらないのではないか。
やはり責任者を探して、出口共々問い詰めるしかあるまい。
「迎えってのは何なのかしら。それもクリスマスの一部なの?」
ティルの疑問には、サンタに扮したデキシンズ自身が答える。
「ソリの引手じゃないかな、たぶん」
「じゃあ、このソリを引っ張る奴が出口を知っている……?」
シズルにつられて全員が階段を見上げるも、待てど暮らせど誰かが降りてくる気配は一向にない。
それもそうか。ジャンギが待っていろと言い渡した以上、全員あの会場で待っているはずだ。
不意に奥の扉がバタンと開いて、誰かが盆を抱えた格好で出てきた。
「七面鳥の丸焼き、やっと完成だ。さぁ、これを上の会場へ運んで――君達がボーイかい?」
出てきた人物を見た瞬間、ティルとソロン、それからジロとキースも声を揃えて叫んでいた。
「ハリィ!」

ハリィは厨房で一人、ずっと七面鳥と格闘していたらしい。
生きた七面鳥を絞めて羽根をむしる処から始まり、蒸して肉を柔らかくしてから腹肉を裂いて炊いた雑穀や野菜を詰め込み、こんがり焼きあげて、ようやく完成したというわけだ。
「七面鳥っていう割に、頭は一つだけなんですね……」と原田が呟く。
「そうだな。俺も顔が七つあるのかと思っていたが、一つだけなんだ。何が七面なのかも判らない鳥だよ」
ハリィも頷き、こんがり焼けた皮をフォークで突いた。
「俺が厨房に連れてこられた時には、この鳥が部屋の中で走り回っていてね。俺を連れてきた人物は、こいつを焼き鳥にしろとだけ言い残して去っていった。大変だったよ、まず、捕まえるのが」
ハリィを厨房に案内した奴も、黒髪で中肉中背な青年だった。
デキシンズにサンタ役を押し付けた人物と同一とみてよかろう。
ぐるっと一周調べて、隠し通路も階段も見つけられなかった一行は、ひとまず七面鳥の丸焼きと共に元の会場へ戻ることにした。
もしかしたら、これを食べれば次への展開が開くかもしれない――とは、ティルの推理である。
背後でガンガンゴンゴンうるさいのは、デキシンズがソリを引っ張って登ってきたせいだ。
上の会場に引手がいると踏んで、ソリを持ってきた。
「ケーキは、どこで調達するの」
小声で尋ねてきたルリエルを振り返り、ジロは思いつきを口にする。
「ケーキは頼まれなかったんスか?」
「俺が頼まれたのは七面鳥の調理だけだ」とハリィは答え、抱えた盆へ目を落とした。
材料は一羽しかなかったのだが、これを全員で食べるのは無理だ。
同じ不安を刃も抱いたようで「また争奪戦が始まるのか」と呟いたのにはシズルが反応する。
「食べるのは誰でもいいんじゃねぇか?それよか、これを食べても無反応だった場合、どうするかを考えにゃ〜」
一番星には、まんまと引っかかってしまった。
今度も同じオチが待ち受けている可能性は高い。
ましてや、ティルの推理だし。彼女の推測は今まで当たった試しがないだけに、ソロンの不安は増すばかりだ。
やがて長い階段を登り切った一行を待ち受けていたのは。

どピンクの派手な照明と、部屋の中央に置かれた大皿。
その上に寝そべった全裸の女性であった――

「いや、いやいやいや、何これ?何なんだ、コレェ!?」
驚愕で狼狽えるシズルへ答えたのは緑髪の青年だ。
「七面鳥なんだって!」
女性は完全全裸ではなく、身体の一部分に鳥の羽をつけている。
詳しくいうと、胸の先端と股間に。
全身に塗りたくられているのは、チョコクリームのようだ。
女性は大股開きで寝そべり、「うっふ〜ん、あたしは七面鳥。さぁ、皆、味わって」等とのたまっているが、どう見ても人間、人肉を食べるのは倫理に反する。
「っていうか、毛むくじゃらじゃねーか!お前も集められていたのかよ」
坂井と呼ばれていた目つきの悪い青年に絡まれて、デキシンズはヘラッとしまりのない笑顔を浮かべる。
「そうなんだ、いつの間にか此処に来ていて……俺はカップルじゃないのに」
「どこに相方がいるのかと思っていたが、カップルですらなかったのか!」と驚くキースの横で、ナナがきっちり「あたし達もカップルじゃないのにね!」と断りを入れておく。
ハリィも一人で厨房待機していたし、恋人じゃない参加者が多々いるようで、カップル専用クリスマスパーティとは何だったのかと首を傾げたくなる。
「七面鳥が二つになってしまったわ。どちらを食べるのが正解なの?」
ルリエルの疑問で全員が我に返る。
そうだ、どちらかがキーアイテムだとしたら、どちらを選べばいいのか。
心情的にはハリィの作った七面鳥が食べたい。倫理観や衛生面で考えても、焼き鳥の一択だ。
だが、もし、自称七面鳥が正解だったとしたら……?
がふっとシズルが七面鳥の丸焼きを口に放り込んで、たちまち一同は騒然とする。
「あー!ずるいっ、そっちを狙っていたのに」
「いくら一つしかないと言っても、一人で全部食べるのは無謀だぞ!?」
刃やティルが止めたって、シズルはモガモガ言うだけで七面鳥を丸飲みする気満々だ。
「これは……あの自称七面鳥を食べざるを得ない流れ……?あ、いたた、急に腹痛が」
如何にも仮病っぽい腹痛をジャンギが訴え始めた。
「食べられないなら、恋人を食べればいいじゃない」
そう言ったのは誰だったのか、自称七面鳥だったかもしれない。
その一言を合図にあちこちで悲鳴が上がり、ペアの片方が次々と七面鳥スタイルに変化する。
ジャンギの目の前でも原田が一瞬にしてスッポンポンになったかと思いきや、茶色のクリームに全身まみれて股間と乳首に鳥の羽が付着した。
「わぁぁ!?み、見ないでください、ジャンギさんっ」
原田はアワアワ慌てて股間を隠しているが、そうやって隠すのは余計エッチだ。
ごくりと生唾飲み込んで「食べる、というのは、つまり……?」と悩むジャンギの耳元で囁いたのはデキシンズ。
「簡単な話さ。チョコクリームをペロペロ舐めとって、前なり後ろなりにフォークを突き立ててあげればいい」
「フォ、フォークって?」との疑問にも、デキシンズの指がジャンギの股間に生えたモノをツンツンしてくる。
「君も持っているじゃないか、立派なフォークを」
慌ててデキシンズを見上げれば、先ほどまでの彼とは雰囲気が一変しており、怪しい笑顔を浮かべている。
ソロンとティルではティルが、刃とシズルでは刃が、ジロとルリエルではジロが、キースとナナではナナが七面鳥役だ。
ランダムではなく、一定の法則で決められているようにも思われる。
デキシンズとハリィは相方がいないせいか元の格好のままだが、二人とも怪しい笑顔になっていて、正気とは言い難い。
先ほどの一言がスイッチとなって、彼らを動かしているのではあるまいか。
ひとまず、会場にいたカップルの片割れが全員七面鳥に変化させられたからには、これが次へ進むキーアイテムで間違いない。
もう一度ごくりと唾を飲み込んで、ジャンギは原田をじっくり眺めた。
ペロペロしてフォークを突き立てるまでが完食の流れか。まさか、こんな形で原田にエッチな真似が出来ようとは。
「は、原田くん、どうしようか。君が嫌なら俺は」
それでも七面鳥の意思を尊重してみると、原田はポソッと囁き返す。
「……ジャンギさんにだったら……食べてほしいです」
頬を染めて見つめられてはジャンギまでもがテレてしまい、視線を外して頷いた。
「う、うん」
事前確認を取ったジャンギと比べると、キースは、もっと大胆であった。
「ナナたぁ〜っん、いただきむぁーす!」
有無を言わせぬ勢いでナナへ飛びかかり、「ハイ、ごちそうさま!」の一言と共に金的を食らって崩れ落ちる。
食べる暇なく瞬殺されてしまうのは、失敗ではないのか。
だが、「行儀の悪い奴に七面鳥を食べる資格なし、だ」と、したり顔でデキシンズが呟いているからには、食べられないパターンも脱出ゲーム的にセーフなんだろう。
ナナは「も〜、なんでいっつも、あたしが脱ぐ役なのよぉ」と、ぼやいている。
恋人ではないはずなのに脱ぐ役と襲う役が定番になっているあたり、名コンビと呼んでも差し支えない。
一方ソロンはクリームまみれのベチョベチョになりながらティルをハムハムしており、時折ティルの「あぁっ、ソロン、そこ、もっと舐めてぇ」と喘ぐ声も混ざり、こんな異常行為を迫られているにしては二人とも超ノリノリだ。
改めて部屋を見渡すに各カップルの反応はマチマチで、イチャイチャするペアは案外少なく、片方が撃退されたペアはキースだけではない。
至るところで股間や鳩尾を押さえて悶絶する片割れが見られる中、双方困った顔で座り込むペアも多数見受けられた。
イチャイチャするにしても、どこまでやればOKなのか。
まさかフォークを差すまでやらないと駄目なのか?
やって違いましたじゃシャレにならない。
ソロンとティル組は腰の動きの激しさから完了へ達しているように思うが、その割に隠し通路や新しい階段が出てこない。
深く考えこむジャンギの腕を、そっと原田が掴んでくる。
「ジャンギさん……?どうかしましたか」
「……いや、これ自体がトラップの可能性を考えていたんだ。原田くん、君を食す前に、もう一度じっくり部屋を調べてみよう」
探索を告げると、原田は、この世の終わりが来たかのような表情を浮かべて、ぽつんと呟いた。
「ジャンギさんは、俺を……食べたくないんですね」
あまりにも寂しげに呟かれたもんだから、ジャンギは慌てて取り繕う。
「いっ!?いやいや、そうじゃないよ。これだけ大勢のカップルがやっているにも関わらず、一向に次の道が開けないのはおかしいじゃないか。それに君とやるんだったら、こんな異常なシチュエーションではなく俺の家で……ね?」
耳元で甘く囁いてやったら、原田はポッポコ頬を赤く染めて素直に頷いてくれた。
彼の手をひいて、少し動いては壁を叩く行動を繰り返している男の元へ近づいた。
「やぁ、どうだい。隠し通路は見つかりそうかい?」と声をかけたジャンギへ振り向いて、黒づくめな男性は首を振る。
「いや、全然だ。だが、あの七面鳥を名乗る女は上から突然降ってきた。となると上へ登る為の足がかりになる場所、或いは隠し階段が必ず何処かにあるはずだ」
「上に登る足がかりなら」と原田が上を見上げる。
「ツリーが、そうでしたね」
しかしツリーは、既に燃え尽きてしまった後だ。
「まいったな、こんな場所で手詰まりか」と愚痴りかけて、ジャンギは不意に閃いた。
そうだ。
天井から落ちてきた女、彼女が次の手がかりになるんじゃないか?
言っていることがキチガイじみていた為、誰も彼女に話しかけたりしなかったが、何処から来たのか、どうして上から降ってきたのかを聞いてみよう。
「七面鳥さん。ちょっといいかな、君はどうして上から降ってきたんだ?」
ジャンギの問いに、女性が微笑む。
「クリスマスのごちそうといえばターキー!ターキーは、どうやって食べるか知っている?そう、皆で切り分けて食べるのよ」
全然答えになっておらず、ポカンと大口あけて呆けるジャンギらを前に、女性は延々と語り続ける。
主に、ターキーとクリスマスの関連性について。
やがて彼女が「大きな、大きな、大きなターキー!みんなで、みんなで、切り分けよう〜!」と調子っぱずれに歌い出すと同時に、変化は起きた。
なんと女性の身体がムクムク膨れていき、乗っていた大皿が隠れて見えなくなるほど肥大化した。
「これを……皆で切り分けるのか?」
物騒な言葉が黒づくめのくちを飛び出し、ジャンギは急いで阻止に回る。
「道徳上、子供の前での残虐行為は遠慮してもらえるかな!?」
だがジャンギが心配するまでもなく、巨大化した女性のお腹は自動的にパカッと開いた。
「さぁ、どうぞ。ごちそうを食べたら最後はお待ちかねのアレよね、皆の大好きなアレの登場よぉん」
女性の腹の中が、次の部屋へ行く道のようだ。
ジャンギはソロンを呼び寄せようと振り返ったが、二人ともお楽しみの真っ最中。声をかけるのは憚れる。
仕方なく、手の空いていそうな人々に「行ってみよう」と呼び掛けて、原田の手を引き足を踏み入れた。
「待ってくれ、俺達も行く」
シズルや刃、ジロ達も二人の後を追いかけて、真っ暗な空間へ飛び込んだ。

←Back Top Next→

Page Top