13周年記念企画:BAD DREAM

小百合編

第二話 緑と作る愛の世界

「……つゆだくっ!?」
私は叫んで起き上がった。
あー、びっくりした。夢かぁ〜。
辺りを見渡そうとして、不意に息が詰まる。
ぐっ!な、何これ、息が出来な……っ!?
『お、なんだ生きていたのか。人間』
誰かが何か言っているけど、そ、それどころじゃ……し、死んじゃう、苦しいっ!
チッと微かに舌打ちする音が聞こえて、先ほどの声が小さく呟く。
『ったく、めんどくせぇな。人間のくせに迷い込んできやがって』
地面に這い蹲った私を抱きかかえ、ぼんやりとする視界に緑色の物が近づいてくる。
な、何……?蛙?
でも、そこで私の意識は遠くなってしまった。


再び目覚めた時、私は何か柔らかい物の上に寝かされていて、慌てて起き上がって周囲を見渡すと、一面の荒野が広がっていた。
新宿じゃない。
日本でもない。
……ここ、どこ?
内心パニクる私に話しかけてきたのは、気絶する前に聞いた、あの声だ。
『よぉ、息を吹き返したか?気分はどうだ』
「き、気分っていうか……」
振り返ると、そこに立っていたのは蛙。
じゃなくて全身緑色にペインティングした紫の髪の少年だった。
注目すべきは、全裸!
何も着ていない。
上から下まで、すっぽんぽん。
普通なら、ここでキャッとなって顔を覆ったりするのが乙女のセオリーなんだけど……
せっかく見せてくれている物を、見ないのは損よ!
私はジロジロ眺め回した。
少年の足の間にぶら下がった物を。
大きすぎでも小さすぎでもなく、ほどよいサイズのシロモノね。
っていうか、そこも緑色にペインティングしていて、気合いが入っているわ。
塗る時くすぐったくなかったのかしら?
刷毛か筆で塗りながら、甘い吐息を漏らして身をのけぞらせたりして、くすぐったさを我慢しながら体を塗る彼を想像したら、グフフ。
あら、いけない。思わず涎が。
『……まだおかしいのか?』
あ、彼が白けた目で私を見ている。
カラーコンタクトでもつけているのか、私を見つめる瞳は真っ赤だった。
「平気よ。心配してくれて、ありがとう」
『別に心配してるわけじゃねぇよ』と言って、少年がそっぽを向く。
ふふふ、テレちゃって。可愛い。
やがて振り返り、彼が尋ねてくる。
『お前、どうやって此処へ来た?人間は魔界へ来る手段を持たないはずだが』
魔界?
……はい?
魔界って漫画やアニメで出てくる、あの魔界?
改めて景色を見ても、荒野が広がるばかりで魔界っぽいおどろおどろしさはない。
う〜ん、なんかもっとグロテスクな植物や如何にも悪魔な生物がいるかと思ったんだけど。
釈然としない私に、彼も肩をすくめる。
『記憶が飛んでいるのか。まぁいい、とりあえず応急処置を施しておいたから、あと二、三時間は動けるはずだ』
「応急処置?」
言われて初めて気づく。
さっきまで、あんなに息苦しかったのに今は全然苦しくない。
「あなたが私を助けてくれたの?でも、どうやって」
『お前の口に魔力を吹き込んだ。俺の魔力を分け与えてやったんだ、ありがたく思え』
口……って、要するにキス!?
やだぁ、この子ったら私よりオチビなくせしてマセてるのね。
「ありがとう。あなたは命の恩人ね。えぇっと……お名前は?」
小首を傾げる私に、偉そうに答える彼。
『人に名前を尋ねる時は、先に名乗るのが礼儀ってもんだろ』
生意気なお年頃なのね。
まぁ、いいわ。だって彼は恩人ですもの。
「小百合よ」
すると彼はふぅんと唸って、名乗り返した。
『クォードだ』
変わった名前ね。外人かしら。
髪の毛も紫に染めるほどの気合いの入りようなので、何人かは判らないけど。
あ、でもさっき、ここは魔界だって言っていたっけ。
じゃあ、魔族ってやつ?
それにしちゃあ、羽根も尻尾もないみたいだけど……
私がジロジロ彼のお尻を眺め回していると、クォードは嫌な目で私を見た。
『尻尾の生えていない魔族が、そんなに珍しいか?俺達の種族は尻尾なんざ生えてねぇんだよ』
前にも誰かに指摘されたことがあるみたいね。
「じゃあ、羽根は?」
『羽根ならある』と言って彼が前屈みになると、背中からバサッと黒い羽根が飛び出した。
わぁ、折りたたみ式なんだ。便利。
でも、これで本格的にクォードが人間ではないと判明しちゃった。
ここって本当に魔界で、彼は本物の魔族なんだぁ。
よく見ると耳も尖っているし、三白眼で目つきが悪いし、って、これは関係ないか。
体中が緑色なのも、ペインティングじゃなくて元々の肌の色かしらね。
赤い目も本物?
そもそも、さっきから私達普通に会話がなりたっているけど、何で彼は日本語が堪能なの?
聞きたいことは山とあった。
けど、彼が質問をさせてくれそうになかった。
『言っておくが、親切でお前を助けた訳じゃねぇからな。お前の高い魔力に用があるんだ。死んだら魔力を吸い取ることもできねぇ』
「え、でも魔力をさっき私に分け与えたって……」
与えておいて奪い返すって、何の意味がある行為なのよ。
不思議がる私に、クォードが言う。
『生かす為の応急処置だとも言っただろ?奪い取るのはここじゃねぇ、人間界でやる』
「奪い取るのも……キスで?」
『まぁ、そうなるな』
さっきは意識がない時にやられたけど、今度は意識がある時にされるのね。
ただ黙ってキスされるだけなんて勿体ないわ。
キスされている間、たっぷりクォードの体を触りまくってやるのよ。
だって全裸だもの!
全裸で恥じらいもしないってのは、触ってもいいって事でしょ。
『時間がねぇ、さっさと行って終わらすぞ』
「待って、ここじゃ駄目なの?」
『俺の話を聞いてなかったのか?ここで奪い取ったら、お前が死ぬだろ』
私が死のうとどうしようと貴方には関係ないでしょうに、やっぱり私を心配しているんじゃない。
なんとなく嬉しくなって、私は彼の言うがままに身を任せ、彼の腕の中に収まった。
白髭のおじいさんに会ってから、私と出会う男性がみんな優しい。
あのおじいさんって、もしかしたら幸運の神様だったのかも。

私を抱いて空へ舞い上がったかと思うと、クォードが片手を空に突き出す。
何をするのかと見ていたら、何もなかった場所に黒い空間が出現した。
クォード曰く、これが魔界と人間界をつなぐ道だとか。
黒い空間に飛び込んだと意識する間もなく、私達は次の瞬間、青空に飛び出した。
「え?え?」
驚く私を横抱きに、彼が高速で空を飛ぶ。
ぐんぐん迫ってくるビルの影に、私は思わず「キャー!」と絶叫をあげる。
『何がキャーだよ。今頃驚いてんじゃねぇ』と呆れる彼は、ビルの屋上で私を降ろした。
また、どこかに移動したけど、多分ここは日本だわ。
だって日本語の看板が遠くに見えているもの。
きょろきょろしていると、肩を掴んで引っ張り戻された。
振り返ると、そこにいたのは全裸のクォードではなく、服を着て、私と同じの肌の色をした黒髪のクォードが立っていた。
いつの間に着替えたの?
いえ、そればかりか髪の毛や肌の色までチェンジして。
「あの格好のまんまじゃ誰かに踏み込まれた時、面倒になるからな」
私の視線で察したか、クォードが説明した。
「さ、やるぞ。怖がるんじゃねぇ、すぐ済むからよ」
さっさと彼が近づいてきて「ま、待っ…んむぅっ」と、私は即座に口を塞がれる。
まったく、ムードも色気もないお子様ね。
んんっ、でもキスは上手っていうか、そんなに舌を動かされたら、くすぐったい〜。
私は無我夢中で手を伸ばし、彼の股間にタッチした。
途端にクォードがビクンッてなって、キスしたまま私を睨みつける。
構わずアソコをニギニギしてやると「ぶはッ!」と勢いよく私から離れて口元を拭った。
「てめェ、何しやがる!?」
怒っているので、正直に答えてあげた。
「何って、とても気持ちのいいことよ?」
「気持ちよくする必要が、どこにあるんだ!」
「女の子とキスしているのよ?気持ちよくなりたいじゃない、お互い」
「俺が気持ちよくなる必要がねぇっつってんだ」と吐き捨てて、クォードが後ずさる。
今頃になって、私の中に眠る野獣の危険さに気づいたようね。
でも、遅いわ。
さっき握った感触が、まだ手の中に残っている。
もっと握り続けていれば、堅くなったり熱くなったりするんでしょう?
さぁ、カモンカモン!
こっちへ来なさい、クォードッ。
「お前の中の魔力は手に入れた。もう、お前に用はねぇ」
私が躙り寄ると、彼は後退しながら偉そうに告げる。
逃げ腰のくせに偉そうな処が、たまらないわ。
偉ぶりたいお年頃なのね、可愛い。
「人間界になら、お前の故郷もどっかにあるんだろ?さっさと帰ったらどうだ」
うふふ、強がってみせても言葉の端が震えているわよ?
お姉さんに全てを任せなさい。
クォードの背中がフェンスに当たり、彼はチッと舌打ちする。
後退をやめ、「あまり調子に乗るんじゃねーぞ、人間が」とメンチを切ってきた。
ふふん、それで脅かしているつもりなの?ちっとも怖くないわ。
私はしびれを切らして、彼へ襲いかかった。
「クォード、気持ちいいことして、あッげッるゥ〜ン!!」
私が飛びかかるのと、彼が「この、バカヤローが!」と叫んで手を伸ばしたのは、ほぼ同時で。
クォードの体を抱きしめた瞬間、私のお腹の辺りで光が爆発し、私の体が宙に吹き飛ばされる。

いっ……ったぁぁああぁぁぁぁっっ!!

いた、いだだだ、痛っ、痛ぁぁい!!
何これ、血がドバドバ出ているじゃないの!マジ痛い、死ぬッ。
グハァ、ちょっとマジやばいって、これ!死ぬ死ぬ死ぬぅっ。
「お前のことは殺したくなかったってのによ……調子に乗るから悪いんだ」
いや、だったら殺さないでよ!
死んだらどうする、てか本気で死んじゃう。
あ、やばい。目がかすんできた。
さようなら、お父さん、お母さん……
死期を悟る私の感情とは裏腹に、攻撃されたらしいお腹の辺りが熱を帯びてくる。
我慢できない熱さに達すると、今度は痛みが和らいできたように思えた。
うぅん、思っただけじゃない。本当に傷が塞がってきている!
あんなにドバドバ出ていたはずの血は止まり、お腹の傷も塞がろうとしている。
またクォードが私を助けてくれたの?
そう思って彼を横目で見ると、彼も驚いていた。
「な、なんだテメェ……?ゾンビだったのかよ!?」
「失礼ね、私は人間よ!」
私は叫び、立ち上がった。
既にお腹は何ともなくなっている。
信じられない事だけど、怪我が一瞬にして治ったみたい。
これじゃクォードにゾンビだと言われても、おかしくないわね。
たじろぐ彼を抱きしめ、押さえつけると、私は無理矢理キスをした。
魔力を取る為でも与える為でもない、正真正銘本当のキス。
クォードは目を白黒している。
まだ状況判断が出来ていないっぽい。
チャンスとばかりに私は彼の股間をまさぐり、細長いものを見つけるとぎゅっと握りしめる。
「んっ」と小さく呻いてクォードが体を震わせた。
強くしたり弱くしたり緩急をつけて、あそこをニギニギし続けていると、そのたびにビクンビクンと体を小刻みに震わせていたクォードが、勢いよく私を突き飛ばした。
「や、やめろ……」
でも、さっきより言葉に勢いがない。
クォードは、困ったような泣きそうな表情を浮かべていた。
「どうしたの?もしかして私に惚れちゃったのかしら、ボク」
私は髪をかき上げ、渾身のセクシーポーズで彼を見る。
「子供扱い、するんじゃねぇよ」と呟いて、クォードは視線を逸らした。
なんだか様子が変ね。
キスは平気でも握られるのは好きじゃないとか?難しいお年頃ねぇ。
再び近づくと、彼はビクッと震えた。
けど、今度は逃げも攻撃もしてこない。
項垂れるクォードの顎をすくい上げ、真っ向から瞳を覗き込む。
彼は視線を彷徨わせ、小さく囁いた。
「……似ているんだ」
「誰に?」
話の流れ的に、きっと私が彼の元カノにでも似ているってトコかしら。
って考えていたら、彼が答えた。
「アザラックに」
「アラザックって?」
「昔、俺が好きだったやつだ」
あら、大当たり。
だから殺したくないって言ってたんだ。
でも、その割には平気でぶっ放してくれたじゃない。
「……けど、あいつはもう死んだんだ。お前は別人だ、だから」
「殺そうとしたってわけ?酷いわねぇ〜、昔の恋人に似た女を平気で殺すなんて」
ずけずけ言い放つ私に、彼は今にも泣きそうな笑顔を浮かべた。
「死ななくて、よかった」
な、なんなのよ。
反則だわ、そんな笑顔。
おかげで、さっきまで私の中で燻っていた怒りが一気に四散した。
「よかった……」と小さく呟いて、クォードが抱きついてくる。
さっきまでのツンケンした彼は、どこにもいない。
つまり、これは――エロモード再開オッケーってことね!
私は再び彼の物を握り、ニギニギを再開する。
今度はクォードも抵抗したりせず、ぎゅっと私に抱きつく力を強めてくる。
やぁん、可愛い。
私が彼にされるがままってのもいいけど、彼を好きにしちゃうのもアリね。
ハァハァ、今夜はもう、おうちへ帰してあげないわ。まだ朝だけど。
「アザラック……いや、小百合……」
「なぁに?」
「このまま、ずっと俺と」
握っていたものが熱っぽくなってきた。
うぅん、熱っぽいのはアレだけじゃない。クォードが私を見つめる瞳もよ。
「いいわ。あなたのものになってあげる」
これって事実上告白よね。年下の彼ってのも、アリだわ。
あ、でも魔族だから年齢不明?
まぁ、見た目は私のほうが、お姉さんだし。たっぷり可愛がってあ・げ・る♪
ズボンのチャックを降ろしても、中の物を直に素手で触っても、クォードは無抵抗だ。
もうすっかり観念しちゃっているって感じ。
いえ、観念というのとは違うわね。
めちゃくちゃにしてほしいモードよね。
違ったとしても、そうに決まった。
私がそう思うんだから、そうなのよ!
左手でモノを握り、右手は後ろに回してクォードのお尻の穴に指を突っ込むと、「ひァッ!?」と叫んで、彼が涙目で私を見た。
「な、何の真似……」
「決まっているじゃない、気持ちいいことの続きよ」
私はニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、ぐりぐりとお尻の穴をほじくってやる。
「いっ、や、やめっ!」
無茶苦茶に暴れるもんだから、クォードの振り回した腕が私の顎にクリーンヒット。
「ほげぇっ」と美少女らしからぬ悲鳴をあげ、私も仰け反った。
ま、まだよ、まだまだっ。
ここで気絶してなるもんですか!
気を張る私に第二弾。
怯えたクォードによる咄嗟の抵抗不意討ちパンチが私の胸を強打して、「うごぇッ」と、またまた美少女があげちゃ駄目な悲鳴を残し、私は今度こそ気絶した。

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