13周年記念企画:BAD DREAM

小百合編

第三話 初体験

暗闇の中で、私は目覚めた。
さすがに三度目ともなってくると、自分に異常な事態が起きているのは薄々判ってくる。
あの白髪のお爺さんが私を、あちこちの世界へ飛ばしているんじゃないかって。
今度は、どこへ来たんだろ。
魔界と違って息は出来るけど、上も下も右も左も、どこを見ても真っ暗。
自分がちゃんと地面に立っているのかも、不安になってくる。
私はたまらず、叫んでいた。
「誰かー!いませんかぁ〜!?」
「ほぅ。亜空間で取り乱さないとは珍しい」
声は私の真後ろから聞こえてきた。
嘘っ?さっきまで、どこを見渡しても誰もいなかったはずなのに。
振り返ると、黒スーツに身を包み、サングラスをかけた金髪の男の人が立っていた。
立っていたと言っても、やっぱり地面は真っ暗だから、浮いていたと言った方が正しいかも?
「君を呼んだ覚えはないが……迷い込んだのか?」
男の人は渋い声で呟いて、私を見る。
そのまま無言で、じろじろと私を眺めた。
ふふ、あまりの可愛さに言葉を失っているのね。
いいのよ、見て、もっと私を全身くまなく舐めるように眺め回すといいわ!
私は彼の前で上着を脱ぎ、ブラジャーにも手をかける。
「……何故脱ぐ?」
「何故って決まっているでしょう?あなたに眺められたいからよ」
正直に答えると、彼は困ったように首を傾げる。
じろじろ眺めていた割には、シャイなのね。
裸だと恥ずかしいだなんて。
「私、小百合。あなたは?」
「リュウ=ライガだ。小百合、君は今自分が何処にいるのか、認識はあるのかね」
単刀直入に用件だけを尋ねてくるリュウへ、私も素直に答えだけを出す。
「判らないわ。ここ、どこ?」
「ここは亜空間だ」
亜空間……これまたファンタジーな場所へ飛ばされたわね。
あのお爺さん、実はファンタジーが大好きなのかしら。
「お爺さん?」
リュウに聞き返されたので「お爺さんはお爺さんよ」と答えてから、私はハッとなる。
ちょっと、どうして今、私の思っていることが、あなたに判ったの?
私、もしかして声に出して呟いていたのかな。
「何者かによって君が此処へ飛ばされてきたとなると、君に聞いても真実は判るまい。だが、その何者かは期待しているようだな。君が此処で何かを行うであろうことを」
私がココで何かを行う……?
今までやってきたことを思い出し、私は結論づける。
あのお爺さんが私に求めていること――それは、すなわちエロ!
私と誰かがエッチするのを見たいのよ、きっとそうっ!
私はリュウに近づいて、おもむろにズボンのベルトを引き抜こうと手を伸ばす。
でも彼には感づかれてしまったのか、後ろに退いて逃げられてしまった。
「もぅ、シャイなんだから」
くねくねと魅惑のポーズでウィンクを飛ばす私に、どこまでもリュウはつれない。
「君と情を交わすつもりはないのでな、他を当たってくれ。といっても、君自身には移動の能力がないのか」
「移動の能力?そんなのあるわけないでしょ。私、普通の女子高生だもん」
胸を張って答えると、私は一歩躙り寄る。
リュウが更に後退した。
「今、言ったばかりだろう。君と情を交わすつもりはない、と」
「あなたになくても私にはあるのよ」
「何故?」と困惑の表情で聞き返されたので、ここぞとばかりに私は言ってやった。
「私を此処へ送り込んだ人間が、あなたと私のエロを期待しているからよ!」
多分、ね。
「そう……なのか?」
明らかに、予定外の出来事に出くわしたって顔しているわね。
こぉぉお〜んな可愛い女子高生に迫られているってのに、なんで迷惑顔なのよ。失礼しちゃう。
「そうなのよ。だから、あなたとエッチすれば、きっと私は元の世界へ帰れるわ」
根拠のない私の言い分にリュウはしばし迷っていたようだったけど、やがて顔をあげると冷たい視線で言った。
「嘘だな」
「嘘じゃないわよ」
「だが、君はその爺さんから直接伝言を聞いていないはずだ。違うか?」
「違うわよ」
「しかし小百合、君の未来は俺の未来とは交差しない。それは俺と君とが」
まだグダグダ言っているリュウへ飛びかかると、私は無理矢理彼の唇を奪う。
――いえ、奪おうとして必死の抵抗に遭い、私の唇は彼の頬にむちゅっと触った。
ん〜もうっ!まだ抵抗するっていうなら、容赦しないんだからねっ。
「よせ、君には攻撃したくない」
袖で頬を拭いながら抗うリュウへ、私は再度襲いかかる。
リュウの股間へ顔を埋めると、ぐりぐりと頭を動かした。
「やめるんだ」
静かな声が頭上へ降り注ぐ。
「君が今取っている行動は、可憐な乙女の行う所業ではない」
ちらっと見上げてみると、クチをへの字に折り曲げたリュウと目があった。
感じても恥ずかしがってもいないなんて、襲い甲斐ないわぁ。
もしかして彼、ホモなんじゃないでしょうね?

不意に周りの景色に鮮やかな木々の色がついて、えっ?と私が驚いている間に、どこからともなく椅子やテーブルが出現した。
更には階段も出現して、その階段を下りてくる人影がある。
「リュウさん、どなたかいらっしゃっているんですかぁ?」
どこか間抜けな一言をリュウにかけ、色黒の青年が出現した。
何?どういう仕掛けなの、これ。

もっとも、彼の出現に驚いたのは私だけじゃなかったらしく。
「シン、来てはいけない!」
動揺したリュウの声に、私はぴーんと来た。
ハハ〜ン、さては彼がリュウの好きな人ね。
彼に手をだしたら、リュウはどんな反応を見せるかしら。
私はシンへ近づいていくと「あ、こんにちは――」挨拶をする彼に、不意討ちでキスをかました。
といっても彼は私の好みじゃないので、ほっぺにだけど。
「えっ、うわっ!?」
見るも真っ赤に頬を赤く染め、シンはびっくりしている。
そうよ、これがフツーの成人男子が私にキスされて取る態度よ。
やっぱリュウはホモに違いないんだわ。
私にキスされかけてもテレないなんて。
「やめろ、小百合!シンに触れるなッ」
ホモが怒鳴っている。
何よ。キス程度で、眉毛つりあげて怒らなくてもいいじゃない。
「あなたが冷たいから、いけないのよ。だから私がシンに浮気しちゃうんじゃない」
シンの首に両手を回し、私はしなだれかかる。
「え、えっ?」と突然の展開に、シンはついていけないのか戸惑うばかり。
可愛いわね。顔は全然タイプじゃないけど。
なんていうか……地味?
体は鍛えているっぽいけど、いまいちダサイっていうか。垢抜けない。
でも、リュウを煽るのに彼は使えるわ。
「え、と、リュウさんのお知り合い……恋人、ですか?」
「違う!」
全力で否定するリュウ。本気で失礼なホモね。
「ねぇ聞いて、シン。私達、昔はベッドを一緒にする仲だったのに最近のリュウったら冷たいのよ。私を抱こうともしないんだから」
口から出任せを言っただけでも、シンは耳も赤く染め上げキョドッている。
「え、う、ベ、ベット……!」
額にじっとり汗をかき、もごもごと口ごもる。
私と同じ年頃の男子だって、もうちょっとマシな反応を見せるんじゃないかしら。
「そうよ、こうしてキスしたり」
唇を近づけただけで、シンは視線を彷徨わせ、アワアワと泡食った。
「あわわ、いや、リュウさんの前で、そんなことっ!駄目ですよ、恋人なんでしょ!?」
「だから、違うと言っている!!」
リュウの否定をかき消すように、私は大音量で遮った。
「そうよ、恋人よ。けど最近は、こっちもご・ぶ・さ・た」
股間のもっこりを手で撫で回しただけで、シンは「ひぁぁっ!」と妙な悲鳴をあげて、ぷるぷる震えた。
ふふふ、リュウと違って素直で可愛いわ。
っていうか既にモッコリしている辺り、意外とスケベよね。
「やめろ……!」
血を吐く声でリュウが私を睨みつける。
「小百合、君の望みはなんだ」と聞いてくるので、私も再度答えてやった。
「何度も言っているでしょう?私はあなたとエッチがしたいの」
してくれないから、シンに浮気するしかなくなっているんじゃない。
シンの股間をナデナデするたびに、彼は「えうえう」と言葉にならない喘ぎを漏らす。
嫌なら嫌で私を突き飛ばせばいいのに、されるがままになっているってのは、やっぱり期待しているのかしらね。
でも、ごめんなさい。
私、あなたよりはリュウのほうがいいわ。イケメンボイスだし。
まぁ、最終的にどっちにするか決めるのは、彼がサングラスを外してからよね。
「まずはキスして、サングラスは外してね」
「サングラスを……?」
怪訝に呟き返したけど、私のシンへの股間さわさわ攻撃が激しくなるのを見て、リュウも覚悟を決めたようだった。
「仕方あるまい。約束だ、君を抱くからシンを解放してやってくれ」
「えぇ、いいわよ。さ、サングラスを外して」
一瞬のためらいを見せた後に、リュウがサングラスを外す。
やっぱり。私とシンは息をのむ。
青い瞳が強く私を睨みつける。
サングラスがあってもなくても、鼻筋の通った整った顔。
格好いいわ。文句なしに。
シンまで見とれているのは何でかしらね?
一緒に住んでいるのに見たことなかったのかしら、同居人の素顔。
「リュウさんの素顔、初めて見た……!」
あ、ビンゴだったみたい。
ていうか同居人の前でも外さないって、どんだけサングラスが好きなのよ。
「あまり、見て面白いものでもあるまい」と本人は謙遜しているけど、隠す必要もないんじゃない?
「さぁ、次はキスしてちょうだい」
シンから離れ、リュウを呼び寄せる。
リュウは、ちらりとシンを見て「……シン、向こうへ行っていてくれないか」と頼んだ。
「あ!は、はいっ、すみませんっ」
慌ただしくシンが階段を駆け上がる。
と、同時にリビングルームになっていた辺り一帯が、今度はベッドルームに切り替わった。
一体どういう仕掛けなのかしら。全部映像?
でもベッドに触ってみると、柔らかい感触が手を通じて伝わってくるし。
幻覚ってわけでもなさそう。
油断していた私の体へ、横合いからしゅるしゅると伸びてきた何かが一斉に絡みつく!
「きゃあ!何!?」
私は有無を言わさずベッドに叩きつけられ、固定させられた。
私の手足に絡みついて押さえつけているのは触手みたいな何かで、ベッドから生えている。
やだ、触手プレイなの?ちょっと、そんなの聞いてない。
「さっさと終わらそう」
リュウは冷淡に呟くと、ぱちんと指を鳴らす。
ベッドから、さらにもう一本触手が伸びてきて、私のパンツの中へ入り込んできた。
「あ、あんっ!」
思わぬ攻撃に、変な声が出ちゃった。
だって触手のやつってば、私のアソコをぐちゅぐちゅかき回してくるんだものっ。
駄目、そんなとこ、どうせならリュウ、あなたの指でグチャグチャにかき回してェ!
「だ、だめぇ、リュウ、止めて!リュウ、お願い、あなたがしてぇ!!」
私の必死な哀願にも、リュウは聞く耳を持たない。
「このベッドは俺が操っている。ならば、俺が君を抱くことに変わりはあるまい?」
ちょ、全然違うわよ!
初めての相手がベッドって冗談じゃないわ。
「いやぁ、初めてなのに酷いっ!」
逃れようと暴れても、手足はがっちり拘束されているし。
私は汗まみれになりながら、いやらしい触手の攻撃に為す術もなく悶えまくった。
初めてなのに、私の体をどう触れば気持ちよくなるのか触手は熟知しているみたいで、触手が私の中へ潜り込むたび、私の体中を快感が駆け抜ける。
く、悔しい。ベッドなんかに弄ばれるなんて。
でも、ン気持ちいい゛〜ッ!ビクンビクンッ。
「あ……はぁっ、はぁ、はぁ……っ」
数分と経たないうちに私は全身の力を奪われ、ベッドの上で荒い息を吐いた。
いつも自分でしているオナニーなんてメじゃないわ。こんなの、初めて。
気持ちいいけど、でも、やっているのがベッドってのが最大に嫌だわ。
できればリュウに直接愛撫してほしいのに。
私が物欲しそうな目で彼を見つめると、彼は無言で頷いた。
やった、私のアイコンタクトが通じた?と思ったのも、つかの間で。
「ひきゃあぁぁぁっ!?」
私は、またしても悲鳴をあげるハメに陥った。
だ、だって!
だって触手が後ろの穴から入ってきたんだもんっ、不意討ちにも程があるわよ。
「や、はぁっ、いぃぃ〜んっ」
だらしなく私の口元を涎が垂れ、枕元をぬらす。
いや、こんなのイヤッ。私がリュウを弄ぶはずだったのにィ。
そのうちお尻から入ってきた触手が、ぎゅるぎゅると回転を始め、新たなシビレを私に与える。
「も、や、ひぎぃっ」
に、肉が抉られるような感触なのに、なんでこんなに気持ちイィのぉ!?
「ふぁ、ふぁぁん、ひぁぁ〜〜んっ」
AV女優も顔負けの嬌声が、私のクチから次々と飛び出す。
きっと今の私は涎ダラダラで、さぞみっともないアヘ顔を晒しているんだわ。
自分では見えなくて良かった……って、良くない!全然良くない!!
触手が前からも奥へ侵入してきて、こっちはブルブル波打つ振動を与えてくるし。
「もっ、ダメェ、いや、あぁん、いやん、やぁぁんっ」
私は必死で髪を振り乱し、暴れた。
けど完全に逆ギレしたリュウの外道行為の前には、無駄なあがきだったみたい。
「ぴやぁぁぁぁっ!!!」
前と後ろの触手が同時に、ぴゅっと生暖かい何かを私の体内で吐き出した。
さ、サイテー。
これって中出しってやつじゃないの?しかもベッドなんかに出されるって。
悔しい。こんなサディストと、リュウなんかと関わってしまったせいで……
私のハジメテが全部ベッドに奪われたぁ〜!
「お望み通り性行為をしてやった。あとは小百合、君を元の世界へ送ろう」
「や……ば、ばかぁ、ふざけんじゃない、わよっ……」
私は息も絶え絶えで文句を言ったのだけど、やっぱりリュウは全然聞いていない。
彼がぱちんと指を鳴らしたのを最後に、ベッドもリュウの姿も消え失せた。
「あっ!?」と叫んだ時には、私は私が通っていた高校の教室にワープして、教壇に立っていた先生の上に素っ裸で落っこちた。

リュ、リュウのアホ〜!覚えていなさいよぉぉっ!!

BAD END

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