act3 追う者、追われる者

レイザース王国首都、宮廷内にて。
総騎士団長グレイグ=グレイゾンは、衝撃の伝達を受け取っていた。
「ハリィ大佐が指名手配……ですか?」
グレイグの部下、ヨシュアが首を傾げる。
同じくグレイグ配下の黒騎士テフェルゼンも眉を潜めた。
「彼には重大任務を与えたと聞いているが……一体、メイツラグで何が起きた?」
双方から尋ねられ、むっつりとしたままグレイグは答える。
「……ドラゴンが襲撃してきたそうだ。ハリィ一行が、それと関係していたらしい」
「ドラゴンが!?」
ヨシュアが叫び、テフェルゼンもピクリと眉を動かした。
ドラゴンの名は、全世界の人間にとって脅威である。天敵と言ってもよい。
人の力では到底かなわず、レイザースご自慢のグラビトン大砲を以てしても撃ち落とすことは出来ない。
襲われた街は、草木一本残さず壊滅させられる。そのドラゴンに、メイツラグが襲われたとは。
しかし強敵とはいえ、滅多なことではドラゴンは街を襲ったりしない。
大抵は亜人の島に引きこもっているはずだ。
襲われるのは、襲われる側にも非がある。
メイツラグは何をして、ドラゴンに目をつけられたのか?
「メイツラグがドラゴンに襲われたというのは事実、なのですか?」
ヨシュアの問いに、グレイグは重々しく頷く。
「ファーレン海軍兵士が大勢、目撃している」
「ファーレン……あぁ、南国の」
ファーレンは、レイザースの南方に位置する小さな国だ。
放っておいても害のない島国だったが、レイザースの全国統一にあたり占領下に置かれた。
今はメイツラグの海賊退治協力と称して、レイザース本軍の代わりにファーレンの海軍が出向している。
「海軍が目撃しているのであれば、事実……か。しかし、そこにどうして大佐が絡んでくる?」
「……ファーレンの海軍将校が報告をいれてきたのだ。ドラゴンの背中に乗っていた人間が、ハリィと親密な関係にある人間だった、と」
テフェルゼンの問いに、親密という言葉を沈痛な面持ちで吐いた後。グレイグは大きく溜息をついた。
「誤解であれ何であれ、ハリィを放っておくわけにはいかん。彼は俺の依頼書を所持しているし、ファーレン海軍には俺の使いできたと報告している」
「しかし、彼らはメイツラグを抜け出して、どこへ向かったのでしょう?」と、ヨシュア。
グレイグは緩く首を振り、ぼそりと呟く。
「最終的な方角はわからない。だが、おおよその見当はつく」
「それは、どこだ?」
テフェルゼンに問われ、窓の外へ目をやりながらグレイグは答えた。
「……レイザースだ。レイザースの辺境へ、一旦身を隠すつもりだろう」
「レイザース?しかし指名手配されることは、大佐にも予想がつくでしょう」
ヨシュアが怪訝に尋ねるのへ、答えたのはテフェルゼンだ。
「レイザースの辺境で、ほとぼりが冷めるまで潜伏すると思われる。辺境ならメイツラグ軍も、おいそれとは追ってこれまい」
「しかし、レイザース本軍なら追ってこられます。大佐はレイザース軍が動かないと考えておられるのでしょうか?それは、あまりにも楽観的すぎでは」
鼻息の荒いヨシュアに、グレイグが悩ましげな視線を向ける。
「ハリィは……俺が追っ手を差し向けるはずがないと踏んでいるんだ」
「楽観ではなく、信頼……だな」と黒騎士も同意し、ヨシュアだけが首を傾げた。
「でもメイツラグの要請があれば、動かざるを得ないでしょう。それとも総団長は、動かさないおつもりなのですか?指名手配犯なんですよ、大佐は」
「そうだ。ファーレン海軍の出した……な」
悟った様子のテフェルゼンが頷くのへは目線で返して、グレイグはヨシュアへ向き直る。
「メイツラグからの要請が来ない限り、本軍は動けない。そして報告があったのはファーレン将校からだ。メイツラグからは、何の報告もない」
「メイツラグ軍はドラゴンの襲撃を、それほど問題にしていないということでしょうか?」
「そうなるだろう、情報を照らし合わせてみると」
大勢の目撃者の中に、メイツラグの海軍兵士だっていたはずだ。
ファーレン兵士はメイツラグの海軍と合同作戦の真っ最中なのだから。
にも関わらず、メイツラグ軍は動いていない。騒いでいるのは、ファーレンの連中だけだ。
「将校の話では、ハリィ一行は襲撃してきたドラゴンに乗って逃走したそうだ」
「メイツラグの被害は?」
「被害は出なかった。海兵が大勢いたからではないかとカミュ少尉は言っているが……」
黒騎士、そしてグレイグも、かぶりを振る。
レイザースの最新兵器にも怯まないドラゴンが、田舎島国の軍艦程度にビビッて逃げ出すなど。
たとえ天地がひっくり返ったとしても、ありえない事態だ。
「……つまりドラゴンは街を襲撃しに現われたのではない、という結論になる」
テフェルゼンの予想に、グレイグも大きく頷く。
ヨシュアだけが、まだ納得しかねるといった顔で尋ねてきた。
「では、何のために?それにドラゴンの背に乗っていた人間、というのも気になります。彼、いえ彼女かもしれませんが、大佐の知りあいは何故ドラゴンに乗って現われたんでしょう」
「それは、ここで押し問答しても判るものではなかろう」
言い捨てて、くるりと踵を返した黒騎士を、グレイグが呼び止める。
「ハリィ一行の探索を、君の部隊に頼んでもいいだろうか?」
「承知した」
テフェルゼンは短く答え、立ち去った。


さて、どうしたもんか。
カッとなって飛び出してきた手前、ハリィの元へ帰ることも出来ず、ルクは苛々した様子で空を見上げた。
全てはあの、異世界からの移住者達のせいだ。忌々しい。
あいつらさえハリィに接触してこなければ、今頃はハリィと一緒に楽しくメイツラグ観光、及び探索が出来たものを。
……まぁ、あいつらが接触してきたからこそ、メイツラグへ行く機会に恵まれたようなものだが。
ルクは一人で、レイザース首都まで戻ってきていた。
道理でハリィ達が捜しても、メイツラグの何処にもいなかったわけだ。
だが首都に戻ってきたとして、特に何をするという目的があるじゃなし。
毎日あてもなく貧民街をうろつくルクの耳に、こんな噂が入ってきた。

――貧民街で殺人事件が、連続して起きている――

最初に殺されたのは、年季の入った娼婦だった。
犯行は彼女の自宅で起きたと予想され、現場は凄惨な有様だったそうだ。
次に殺されたのも娼婦。最初のと比べると、かなり若い。
こちらの死体もズタズタに切り裂かれていて、見るも無惨になっていたらしい。
そして最近の被害者は男性だ。名前をテイッツラーという。
テイッツラーの名なら、ルクも知っている。
確か、貧民街を取り仕切っているチンピラだったはず。
似たようなゴロツキを部下として大勢引き連れて、自分より弱い者に暴力を振るう最低の輩だ。
そいつもまた、ズタズタに切り裂かれていた。先の二人と同じように、惨殺死体となって。
大勢いた部下は、彼がやられるや否や散り散りになって行方が知れないという。
誰一人、仇討ちに乗り出さないとは、何とも無情な話である。
三つの殺人事件は死体の状況などから判断して、同一犯と思われた。
だが、これだけ凄惨な事件が連続で起きているというのに、首都の騎士団が動く気配はない。
しかし、それも致し方ない。貧民街は、見捨てられた区域なのだ。
税金を払わない貧民など、レイザース王宮には国民として扱われていない。ダニと同類扱いだ。
騎士団が動かない以上、住民が何とかするしかない。
気になったルクは、少し調べてみることにした。
ルクは貧民街の生まれだ。
ある日、安酒場でハリィ大佐の英雄列伝を聞いた彼は、期待を胸に貧民街を飛び出した。
いいこと悪いこと全部ひっくるめて様々な手段で金を稼いだ後に、傭兵スクールへ入学。
卒業後、晴れて傭兵デビューを果たしたルクは、噂を頼りにハリィの足取りを追いかけ、ようやく彼を捕まえる。
ハリィと同行するようになってから、酒場で聞いた彼の武勇伝が、だいぶ誇張されたものであると知ったけれど。
それでも、ルクのハリィ崇拝熱が冷めることなどなかった。
誰よりも一番、ハリィに信頼されたい。
ボブでもバージでもなく、自分がハリィの片腕になるんだ。
そう思っていたのに、あの異端者どものせいで。
――と、始めの思考回路に戻りかけていたルクは、ブンブンと激しく頭を振った。
そんなことより、今は殺人事件を調べなきゃ。
こいつを一人で解決したら、ハリィも俺の事を見直してくれるかな?
「あんた、何やってんの?こんなところで」
張り切って歩き出した直後、背後から聞き覚えのある声がかけられる。
嫌々ながらも振り返ったルクは、よく見知った顔に渋々応えた。
「……個人調査だよ。例の殺人事件」
「殺人事件?」とレピアは首を傾げ、そんなことよりもと自分の話題を切り出してくる。
「大佐達は、まだメイツラグ?どうして一人で戻ってきたの?予定変更でも、あったっけ?」
「そういう、お前こそ何で貧民街にいるんだ?」
質問に質問で切り返すルクへ、レピアは素直に明かした。
「大佐に頼まれて、シュロトハイナムにいる怪しい邪教野郎を調べていたんだけどさ。かなーりヤバイ奴みたいなんだ。で、一旦切り上げて大佐に連絡しようとしたら通信が繋がらない。んで、」
「通信が、繋がらない?」
聞き返すルクへ頷き、レピアは懐から通信機を取り出す。
通信機はチーム全員が所持している。それぞれの回線コードも登録済みだ。
「大佐が通信機のスイッチを落としてるなんて、ありえないじゃん?」と、レピア。
それにはルクも同感だ。
どんなことがあっても通信機の電源を落とすな、と彼らに教えたのは、他ならぬハリィ本人なのだから。
「こりゃ〜何かあったな、って。だからモリス達と合流して、大佐を捜しに行こうかと思って」
「モリス?モリスも首都に戻ってきてんのか?」
モリスもハリィチームの一員だ。ルクにとっては先輩にあたる。
一応レピアも先輩にあたるのだが、歳が近いこともあって、ルクとはタメグチで話していた。
「そうよ。大佐に頼まれて、騎士団の動向を見張ってるんだ。例の水晶について動きがないかってね」
「カズスンとジョージは?」
次から次に尋ねてくるルクへ肩をすくめると、レピアは最初の質問に戻った。
「自分で調べなよ、通信機があるんだしさ。それより、あんた個人調査っつったけど、何の調査なの?」
例の老人探索と関係があるの?と聞かれ、ルクはかぶりを振る。
「違ェよ。個人的に気になる事件があってさ」
連続殺人の話をしてやると、彼女は脅えた目で「やーね、治安の悪い区域って」と小さく呟いた。
「でもルク、寄り道も程々にしておきなよ?水晶に関わる人捜しは、急ぎの依頼なんだからサ」
レピアに窘められ、ルクはブツブツとぼやいた。
「判ってるよ。調べられる範囲だけ調べるつもりだ」
レピアだけではなくモリスまで首都にいるってんじゃ、個人行動も取りづらい。
英雄になるのは、また今度の機会という事になりそうだ。

同刻。
田舎町へ向けて、街道を走る荷馬車が一台。
「連中はシュロトハイナム方面に向けて逃走中……ッスか」
ガタゴトと揺れる荷馬車の上に寝転がりながら、帽子をかぶった青年が鼻毛を引き抜く。
抜いた鼻毛を、フッと息で吹き飛ばす。
すると飛ばした先に座っていた女性が、心底嫌そうな目つきで彼を睨みつけた。
「ちょっと、ジロ!鼻毛を抜くのは、おやめなさいませ」
ジロと呼ばれた青年は気にするでもなく――いや、全然気にしていない調子で彼女の小言を丸無視すると。
荷馬車の手綱を握る男へ声をかけた。
「船に乗ってても逃走っちゅーんですかねェ?ねぇ、叔父さん」
手綱を握るのは全身黒づくめの、あの男だ。ドンゴロの元へ現われた、確か名前は斬といったか。
斬はジロのほうを振り向くでもなく、静かに応えた。
「ジロ、話していると舌をかむぞ。静かに座っていなさい」
小言、小言の連続で、ジロも閉口する。再びごろりと横になりながら、空を見上げた。
「にしても、シュロトハイナムかぁ〜。到着まで、あと何時間かかるんだか」
怒られたばかりなのに、まだ話している。
彼につられたか、横で大人しく座っていたポニーテールも雑談に加わった。
「でも、シュロトハイナムに行くのって初めてだよね。僕、もうワクワクしてきちゃった!」
このスージ、甲高い声に可愛い顔つきをしているが、れっきとした青年である。
その彼に、ちらりと目をやり、先ほどの女性が会話に割り込んできた。
「田舎町と聞いておりますわよぉ?わくわくするほどの場所とは思えませんけど」
「なんだよエルニーは、もうっ。いっつも人の期待をぶち壊すような事ばっか言うんだから!」
ぷぅぷぅ喧嘩する二人を横目にジロは、もう一度鼻毛を抜いて、荷馬車の横へ視線を落とす。
傍らを歩いているのは、真っ白な犬。
犬と呼ぶには不自然なほど大きすぎるが、実は普通の犬ではない。
もっとはっきり言うと、犬ではない。モンスターの一種で、飼い主からはガロンと呼ばれている。
ガロンの背に乗って本を読んでいる少女へ、ジロは誘いをかけた。
「ルリエル、お前もこっちに来いよ」
出発前にも誘ったのだが彼女は頑として首を縦に振らず、やはり今度も断ってきた。
「彼らがシュロトハイナムへ行くかどうかは斬の予想に過ぎないわ。途中の街で降下する事も考えられる。その時はどうするの?ジロ」
否、返事ですらなかった。質問だ。それについては、当の斬が答えた。
「船の逃げたという方角と、彼らの行動を予想した結果がシュロトハイナムに行き着いたのだ。ハリィ=ジョルズ=スカイヤードは傭兵だ……傭兵なら、ほとぼりが冷めるまで自国の、それも僻地へ紛れ込めば大丈夫だと考えるはず」
「でも僻地ってんなら、カンサーやクレイダムクレイゾンでもいいわけですよね?」
と、混ぜっ返してきたのはスージ。斬は横目でジロリと彼を睨むと、付け足した。
「カンサーやクレイダムクレイゾンは観光地だ。人の目につく場所は、まずかろう。だがシュロトハイナムは、同じ僻地でありながら観光地ではない。ただの田舎町だ」
またまた鼻毛をブチッと引き抜きながら、ジロが問う。
「でも、あの辺に港町ってありましたっけ?」
ハリィ=ジョルズ=スカイヤード率いる傭兵部隊は、船に乗ってメイツラグを逃走した。
一行の中には亜人の島から来たドラゴンや、異世界からの住民も混ざっていたという。
以上が、斬達がメイツラグで聞き込んだ情報である。
もっとも、ついたばかりの頃は情報も入り乱れていて、やれドラゴンに乗って逃げただの、大魔法使いが一気に魔法で吹き飛ばしただのと、てんで大ボラばかりを聞かされたのだが……
「シュロトハイナムとクレイダムクレイゾンとの境に、小さな廃港がある」
「廃港ッスか。逃亡者にとっちゃ狙い目ッスね」
コクンと頷くジロに、斬も頷いてみせる。
「その通りだ」
彼らが僻地へ身を隠すのは構わない。問題があるとすれば、レイザース騎士団の動向だ。
メイツラグ本軍から連絡が入れば、レイザース軍も動かざるを得ない。
なんとしてでもレイザース軍より早く、ハリィ達の身柄を確保しなければならなかった。
「黒騎士団は動きますかしらねぇ」
斬の杞憂を読んだかのように、エルニーが小さく呟く。
「さぁ?」
ジロとスージは首を傾げ、前方の斬を見やった。
「マスターは、どう思います?」
「心配はしておくに越したことはない。場合によっては白騎士が来ることもありえよう」
憂鬱な面持ちで答えると、馬に鞭をくれる。
途端に馬車は走るスピードがあがり、ただでさえデコボコ道で揺れる中。
「あでッ!」
「ちょっ、急にスピードだざなッッ」
「は、わわ、おぢるっ」
ジロとスージ、エルニーは三人同時に舌を噛んだのであった。


シュロトハイナムとクレイダムクレイゾンの境目に、今はもう使われていない港がある。
ハリィ達は廃港に海賊船を停め、そこからは徒歩でシュロトハイナムへ向かった。
「ったく、誤解を解かなくてよかったのかよ?」
船酔いでグロッキーなシャウニィがブツブツ文句を言えば、すぐさま罵倒が返ってくる。
「四方を軍艦に囲まれた状態で、俺達に何が出来る?あの場は逃げて正解だろ!そもそも誰かさんがドラゴンに乗ってきたりしなきゃ、誤解が生まれることもなかったんだ!」
その誰かさんことソロンにはティルがべったりくっついており、ボブの頭に血をのぼらせる。
「なぁ、ティ。疲れたら、すぐに言えよ?おぶッてやるから」
ソロンが甘い言葉を彼女にかけると、ティルはポッと赤くなってモジモジする。
「えっ……いいわよ、ソロンだって疲れているんでしょ?それに、怪我もしているみたいだし」
包帯まみれの彼は、ドンと自分の胸を叩き偉そうに反り返った。
「なァに、こンな怪我、怪我のうちに入らねェよ。ほとんど直ってるンだ」
「そう?じゃあ疲れたら、お願いね」
なんてバカップル全開な会話を、ずっとやられていたら、ボブでなくてもイライラくるというもの。
バージは先ほどから無言の行進だし、いつもは雄弁なハリィでさえも口数が少ない。
「なぁ、とりあえず探し人の一人は見つかったんだぜ?辛気くさくなることもないんじゃないか」
キーファに言われ、ますますボブはエキサイト。
「戻ってくるならくるで、普通に戻ってくりゃよかったんだ!なんでドラゴンなんだ!?」
「アジンの島に、きちゃったからだヨー」と答えたのは、当のドラゴン・アル。
「ドンゴロ様が、そうしろっておっしゃったんだろ……?」
沈んだ調子のハリィが尋ねると、ソロンも「あァ。最初に言ッただろーが」と頷いた。
額へ手をやり、ハリィは小さく呟く。
「なら仕方ない、か……。賢者の誘いを無下にするわけにもいかないよな」
それでも筏に乗るなどして戻ってきて欲しかった。
だが気を遣えとソロンを怒るのは、怒るだけ時間の無駄である。
彼は知らなかったのだ。この世界で、どれだけドラゴンが忌み嫌われ、恐れられているかを。
「なぁ、これから行くシュトロハイナム?ってのは、どんな街なんだ?」
陽気に尋ねてくるキーファへは、短く答える。
「何もない田舎町だ。へんぴな場所だが、だからこそ隠れるには絶好の街とも言えるな」


シュロトハイナムで自分達を待ち受けるのが、何であるかなど。
今の彼らには、まったく予想もつかなかったのである。

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