合体戦隊ゼネトロイガー


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act5 遊園地の怪

末広の案内で、三人はビニールカバーで包まれた場所にやってきた。
バサッとカバーを開いて、末広が先に入る。
カバーの向こう側は、ひたすら広いスペースが広がっていて、奥のほうに重機がある程度で屋根も椅子もない。
「へぇ〜。事務所っていうから建物があるんだと思ったら、何もないんだぁ」
ぽつりと感想を漏らすメイラに、末広が苦笑する。
「言ったでしょう?ここに何かを建てようとすると、必ず予期せぬ中止が入るんです。プレハブ小屋ですら建てることができないんだ。木ノ下さんの言うように、詛われているのかもしれませんね」
そんな曰く付きスペースに押し込まれるってのは、ヒーローショーも遊園地側に、お荷物扱いされているのではなかろうか。
鉄男の思考を読んだかのように、末広が頷く。
「そのうち休日のショーもなくなっちまうかもしれない。私ぁ、それが悔しくてねぇ」
「あ、それで」と、さっそく木ノ下が切り出した。
「ショーっつっても具体的に俺達は何を手伝えばいいんです?」
「まずは木ノ下さん、あなたは怪人役としてショーに出てもらいます」
「はっ?」
驚く木ノ下をそっちのけに、末広の目がメイラへ向けられる。
「お嬢さんには、怪人に捕まるヒロイン役を演じてもらいましょうか」
「えっ!私がヒロイン!?って事は、ラストは衝撃のラブラブシーンが」
末広は異様に盛り上がるメイラをも無視し、最後は鉄男と向き合った。
「辻さん、あなたにはヒーロー役をお願いします」
まさかの主役抜擢に鉄男は硬直する。
たまらず、横から木ノ下が突っ込んだ。
「お、おい、ちょっと待てよ!それって役者が殆どいないってことじゃないか!?」
「そうです、その通りです」と応え、末広が悲しそうに目を伏せる。
「なにもかも、規模縮小が悪いんだ。休日しかショーをやらないってんじゃ、当然役者の給料も下がる。いい役者は次々辞めちまって、主役を張れる奴がいなくなっちまったんです。残っているのは大部屋俳優や大道具小道具の連中ばかり。あいつらは行き場がないから残るしかないんです」
「なるほど、演技力のある奴はツブシがきくけど、他はそうもいかねぇってか」
一旦は納得しかかったものの、でも、と木ノ下は首を振る。
「俺達みたいな素人に、つとまるのか?辞めてった連中の穴埋めって。残った俳優にやらせたほうが、まだマシって気がするんだけど」
「駄目だ、駄目だ!あいつらにはスピリットがない、根性もない、何より燃えるヒーロー魂がない!」
すぐさま末広には反論されて、勢いの激しさに木ノ下も鉄男も目が丸くなる。
「第一、ヒーローには必要不可欠な特徴があるッ。そこのお嬢さん、何だと思う!?」
間髪入れずにメイラが答えた。
「顔だと思います!」
「その通り!大根役者は所詮顔も大根、怪人役が関の山だ!!」
大部屋俳優と呼ばれている連中が、これを聞いたら残らず辞めてしまうんじゃないかと思えるような暴言だ。
「ヒーローは顔、何より顔が命だ!残った連中は、どれも芋ばかり!平凡な顔ばかりで、お話にならんっ。加えて連中には向上心というものがない、まるでない!だからツブシがきかなくて、辞めることもできんのだッ」
逆に言うと、よくそんなヘボ役者を雇っているものである。
まぁ、遊園地側にも色々と事情があるのだろう。
主にコスト削減的な意味で。
だが削減しきれずに、とうとうヒーローショー自体が規模縮小をくらった。
これまでのショーで経営者の求める分の儲けを出せていなかったということだ。
「顔がイイヤツは歌も上手い!そして燃えるヒーロー魂を内に秘めているものだ!そうだろう、お嬢さん!?」
「その通りだと思います!」
打てば響く返事をするメイラは、すっかり末広の相方になっている。
「アクションシーンも上手くなきゃいけませんしね、ヒーローは。それに脱いだらすごいんですって体格じゃないと」
「その通りだ!よく分かっているな、お嬢さん」
そこで、と末広の視線は再び鉄男の上に止まり、真顔になる。
「辻さん、あなたこそヒーローショーへ出るために生まれてきたような顔だ」
「どんな顔だよ?」と突っ込む木ノ下をスルーし、末広はビシッと鉄男を指さした。
「これまで主役を張っていた連中にも、一つだけ足りないものがあった。それは、人を惹きつけるカリスマだ!あなたには、それがあるッ。この私を惹きつける魅力が!!」
――と、言われても。
鉄男は困惑する。
今まで一度も、誰かにカリスマがあるなどと言われた覚えがない。
ましてや、末広とは今日が初対面である。
『この私を』と言われても、彼のことは全く知らない。
「俺には……魅力なんて何一つない。顔も良くなければ、歌も上手くない」
困った鉄男は視線を逸らし、ボソボソと呟く。
それを見たメイラが素っ頓狂な言葉を吐いた。
「今の顔!クールなアウトローって感じで素敵ですよね、末広さん!」
すぐに末広も乗ってくる。
「まさにそれだよ、お嬢さん!私が感じた辻さんの魅力は、隠された正義だ!!普段はクールに振る舞っているけど、悪事を許せない内なる熱血漢!それが辻さん、あなたのヒーロー像だ」
誰がいつ、クールに振る舞ったというのやら。
鉄男は当然仰天し、「違う、俺はクールでもアウトローでもない!」と反論するが、メイラも末広も聞いていない。
「普段はヒロインにもぶっきらぼうで、ピンチに陥っても素っ気ないんですよね。でも、いざって時にはピンチのヒロインを助け出して、一人ででも巨悪に立ち向かう……!はぅ、格好いい〜」
夢見る視線でメイラが上空をポォッと眺めれば、その横では末広が満足そうに何度も頷く。
「そうそう、それだよ、君はヒーローをよく理解しているじゃないかメイちゃん。辻さんこそ、そういう役にピッタリだ。実にハマリ役だよ。やはり私の目に狂いはなかったな!」
どんどん勝手な妄想で、鉄男のイメージが塗り固められていく。まだ演技をしてもいないのに。
ぐぐっと拳を握りしめた末広が、ぶつぶつと呟き始める。
「よし、次のショーの内容が固まってきたぞ!辻さんはクールなアウトロー。普段は素っ気なく振る舞っているけど、実はヒロインを密かに大切に想っているんだ。そんなある日、街に怪人が現れて破壊の限りを尽くす。そこへ居合わせたヒロインが捕まってしまい、ヒーローは」
「お、おーい、末広さーん、おーい」
呟くうちに瞳に怪しげな光が宿ってきて、心配になった木ノ下が声をかけても梨の礫。
「……よおっし!今日中に奥村くんへ電話だ!!次のヒーローショーは、これで決まりだぜ!」
カッと目を見開き、懐から颯爽と携帯電話と手帳を取り出した末広に、木ノ下は掴みかかった。
「ちょっと、末広さん!俺の話も聞けってば!!」
「あ?なんだね、雑魚一号くん。私は忙しいんだよ、邪魔をしないでくれたまえ」
「誰が雑魚一号だ!」
きっちり突っ込んでから、木ノ下は文句を言う。
「ショーの打ち合わせは、どうなったんだよ?具体的に、どう動けばいいのか教えて下さいっつってんのに」
すると末広は一瞬ポカンとした後、判っていないなぁと言いたげに肩をすくめて答えた。
「うぅん?君、そんなのはアドリブだよ。脚本は基本動作しか書いていない。あとは全部当日のアドリブで補うんだ」
「ハィイ?」
目玉が飛び出すんじゃないかってぐらい目を見開いた木ノ下に、目の前の末広が重々しく頷く。
「練習やリハーサルは、しないのかよ?」
「勿論するさ。しかし期間は次の休日だ、次のショーで我々の命運が決まるんです」
不意に真顔になったかと思うと、末広は申し訳なさそうに鉄男へ頭を下げる。
「実は、次のショーでノルマを達成できなかったら、ヒーローショーは終わりにしろと上から言われているんです」
いきなり現実に引き戻された。
「でも、あたしゃ、どうしてもヒーローショーに幕を降ろしたくないんです。かつて、この遊園地には夢があった。子供から大人まで全員が楽しめる場所だった。なのに今じゃ絶叫系だの恋人コースだのと、若いカップル専用遊び場になっちまって!これもそれも今の社長が全部悪いッ」
「あ、あの、それで次のショーを成功させたいから、俺達をスカウトしたんですか?」
しばしば脱線する末広を木ノ下が促すと、末広は懐からハンカチを取り出して「あ、失敬」と額に浮かんだ汗を拭き、軌道修正した。
「その通りです。辻さん、どうかお願いします。ステージを見つめるあなたを見た瞬間、私はあなたにヒーローをやってほしいと直感したんです。あなたにはヒーローの素質がある。どうか我々のヒーローになってください、お願いします」
深々と頭をさげられ、ついには土下座まで始めようとする末広を、鉄男はボソボソ引き留める。
「い、一度引き受けたからには、やるつもりだ……だから、そこまで頭を下げる必要は、ない」
途端にガバッと身を起こし、末広にはガッチリ両手を握られた。
「おぉ!さすが私の見込んだヒーローだッ。大丈夫、台詞は少なめにしろと奥村くんに言っておきます。演技が素人でも、あなたには魅力がある!自信を持って下さい」
察するに、奥村くんはシナリオ担当スタッフなのだろう。
彼も大変だ。大根以下な素人の為に、シナリオを書かねばならないのだから。
「練習は明日からの三日間。怪人役の皆と殺陣の練習をおこないます。練習には身軽な服装でいらして下さい。台詞は気負わず、自然に話す要領でやれば大丈夫ですよ」
きびきび説明する末広に圧倒され、木ノ下と鉄男はコクコク頷いた。
次の休日まで、あと三日しかない。
三日間で演劇のイロハをマスターして、ショーを成功させねばならない。
とんだ厄介ごとに首を突っ込んでしまった。
だが末広の話を真剣に聞く鉄男の横顔を見ているうちに、木ノ下にも何とかしてやりたい気持ちが芽生えてくる。
無論、助けたいのは末広でもヒーローショーでもない。鉄男だ。
困っている人を助けたいという、鉄男を応援してやりたい。そんな気分になったのだ。
「頑張ろうな、鉄男!」
ガッツポーズで励ましてくる木ノ下に、鉄男もコクリと頷いた。
そんな二人の遣り取りを盗み見て、メイラは、そっと邪な妄想にふける。
――やっぱり、この二人って超お似合いだわ……


翌日も木ノ下と鉄男、メイラの三人はベイランドへ向かう。
メイラの外出許可も取ってある。学長には調査のカモフラージュ役と言っておいた。
彼女がいたのでは満足に調査も出来ないのでは?と訝しむ学長を説得するのは、骨が折れた。
しかし調査するなら乃木坂をよく知る彼女の存在が必要だと鉄男が熱弁をふるい、最終的には学長を納得させるに至る。
なるほど末広の言う鉄男のヒーロー魂ってのは、こういう事か?と、木ノ下も密かに納得したのであった。
メイラには本当の目的を伝えていない。
それでも彼女は喜んでついてきた。
休日以外の外出が、珍しくて、楽しくて仕方ないのだろう。
昨日とは異なり多少お洒落しているのが、何よりの証拠だ。
「やぁ、いらっしゃい」
集合をかけられた時間は、昨日より遅めの夕方であった。
末広に出迎えられ、例の仮事務スペースへ通される。
スペースには、数人の男女が集まっていた。
「それじゃ私は、これで」と出ていく末広を見送ってから、一人の青年が頭を下げる。
「はじめまして、シナリオ担当の奥村と申します」
奥村くんは、眼鏡をかけた冴えない顔の青年だった。
やや猫背で、髪はボサボサ。チェックのシャツに、くたびれたジーンズ。
典型的なオタクファッションである。
「えっと、本来は一週間かけて練習するんですけど、今回は人手不足で時間がなくて……発声練習と段取りだけでも練習しようって事になりました」
一応シナリオは書き終わったんですよね、と言って奥村が鞄から冊子を取り出す。
連絡がいったのは昨日だろうに、一日で書き終わるとは、さすがシナリオ担当を名乗るだけはある。
そこへ「ごっめ〜ん!遅れちゃった?」と飛び込んできたのは、奥村とは対照的に、こざっぱりした格好の青年。
鉄男と木ノ下を見つけるや否や、「あ、新顔?よろしく!」と気軽に挨拶し、集まっている男女のほうへ走っていく。
「……一応、紹介しておきますね。あっちにいるのが怪人役、それからエキストラ役の皆さんです。今、遅れてきたのが大道具の石川くん。あと、まだ来ていませんが小道具のコーディさんって人もいます」
ちらっちらっと、こちらを盗み見ていた軍団が、ばらばらと頭を下げる。
歳の頃は鉄男や木ノ下よりも若いか、同じぐらいな連中だ。殆どが二十代といったところか。
「僕達はショーが開催されると決まった日に集まって以来、ずっと一緒にやってきたんです……でも、なかなか今の子供達にウケるショーを見せることができなくて。今回が最後になるかもしれないってんで、最後に一回ぐらいは盛り上がるショーをやろうって計画していたんですがヒーロー役の水木くんとヒロイン役の片平さんが突然やめちゃって、それをきっかけに他の皆も、どんどん辞めちゃって」
「あーもー、辛気くさい説明、やめやめっ!」と奥村の説明をぶった切ったのは、遅刻してきた石川だ。
「そんなのどうだっていいからさ、新しい台本見せてくれる?」
台本を配り、奥村が皆に三人を紹介する。
「えっと今回の助っ人、木ノ下さんと辻さんと遠埜さんです。辻さんは主役、遠埜さんはヒロイン、木ノ下さんには怪人の幹部役をやってもらうことになりました」
恐らくは全員が寝耳に水で唐突な話だろうに、誰も文句を言う者はいない。
末広の言うように向上心がない、或いは何処かで主役抜擢を諦めてしまっているのかもしれない。
「演劇やってるの?」と手前の女性に尋ねられ、即座に鉄男は首を振って否定した。
「初めてだ。だが足を引っ張らないよう精進する」
「わっ、ショージンだって!難しい言葉を知ってるんだぁ」と相手には驚かれ、にこっと微笑みかけられた。
「あっ。あたし、ペトラーゼ=クルホ。ペティって呼んでね」
笑顔のチャーミングな、小柄で愛らしい女性だ。
充分可愛いのに、これでもヒロイン役には声がかからないのかと鉄男は不思議に思ったりもしたのだが、息がかかる程の至近距離で顔を覗き込まれ、緊張が極度に高まってくる。
ガチガチになりながら「わ、わかった」と吐き出すと、ペトラーゼにはクスクスと笑われた。
「可愛い〜、辻さんっ。汗かいちゃって、緊張してるの?」
「おいおい、大丈夫か〜?お客さんの前でもガチガチにあがんなよっ」と石川が茶化し、他の連中も笑い出す。
たちまち羞恥で真っ赤に染まった鉄男を庇うように、奥村が場を取りなした。
「えぇっと、それじゃ雑談は、これぐらいにして。台本に目を通したら、まずは柔軟体操から始めましょう」
鉄男は木ノ下と組み、一人余ったメイラは役者の女性とペアを組む。
メイラが側を離れたのをヨシとして、木ノ下が小声で囁いてきた。
「どうだ?怪しげな場所、ありそうか」
素早くスペースを見渡した鉄男が答える。
「今のところは、これといってないな」
何故工事が中止になってしまうのか。
実際に工事作業を行わないと、判らないのかもしれない。
奇妙な話だ。こうして運動をしている分には、別段おかしな事も起こりそうにない。
「ここが詛われてるっつーよりも、誰かが手を回して、ここに何も作らせないようにしているんじゃないか?」とは木ノ下の推理だ。
だが、それにしたって何故?が付きまとう。
経営者にしてみれば、アトラクションを作ったほうが儲かるし土地を遊ばせておく理由もない。
誰が何の為に妨害しているのか。そして、これは乃木坂の失踪と何か関係あるのか、否か。
一般に考えたらベイランドの内紛抗争であり、全く無関係なように思えるのだが……
「ぐえっ!」と蛙の潰れたような呻きに、鉄男はハッと我に返る。
己の考えに没頭していて、つい加減を忘れてしまったようだ。
「す、すまない。大丈夫か?」と気遣えば、木ノ下はブチブチ小声で「いってぇ〜」と文句を言っていたようだが、すぐに笑顔で振り返る。
「へ、平気平気!けど、もうちょっと優しく背中を押してくれると、有り難いかな」
リクエスト通り優しく押していると、役者陣の雑談が耳に入ってくる。
「ねー、そういえばさぁ、例の冷房スペースって結局どうなったの?」
「冷房?あぁ、ひやっとするってペティが言ってた場所?」
「そうそ。なんか気持ち悪いから、どうにかしてってコーディに泣きついてたみたいだけど」
「コーディに泣きついても、あいつが何とか出来るわけないじゃん。もっと上に言わないと」
「今は重機を置いてるみたいね。結局、上には話を通さないで放置決定?」
「っぽいね〜。ま、ここ追い出されたら、事務所なくなっちゃうしねー、今はもめ事避けたいよね」
ひやっとする一角が、この中にあるらしい。ペティは霊感が高いのだろうか。
あとで彼女自身にも聞いておこう。
なにかしら、工事中止の解決策になるかもしれない。
「ハイ、柔軟終わりー」
パンパンと手を叩いて場を仕切り始めたのは、一人の中年女性。
赤い髪をポニーテールに結い上げ、トレーニングウェアを着ている。さっきまで居なかった顔だ。
「……小道具さんかな?」
木ノ下が首を傾げる前で、奥村が彼女へ声をかけた。
「マネージャー、いつ来たんです?」
「ついさっき。あ、そうそう、コーディから連絡。あいつ、辞めるってよ」
さらっと言われた一言に、誰もがざわつき始める。
「えっ、コーディまで辞めちゃうのかよ!?」
「あいつ、ココやめてアテあんの?」と、これは石川の問いに、マネージャーと呼ばれた女性は頷いた。
「あるから辞めたんでしょ」
ペティが落胆して、ポツリと呟く。
「皆、どんどんいなくなっちゃうね……次のショーが成功しても、ヒーローショーの継続は難しいかも」
そんな彼女にも、マネージャーの叱咤が飛んできた。
「ハイハイ、やる前から暗くならないの。せっかく末広さんが助っ人呼んでくれたんだ。子供達の為にも最後のショーぐらい、盛り上げていこ〜」
「おー……」と覇気のないかけ声の漏れる中、気まずそうに奥村が木ノ下と鉄男にマネージャーを紹介する。
「あの人はマネージャーのユズさんです。このスペースを上とかけあって事務用にしてくれたのも、あの人なんですよ」
彼女に聞けば、このスペースについて詳しい事情が判るのかもしれない。
木ノ下が鉄男に小声で囁いた。
「よし、聞き込みは俺に任せとけ。鉄男、お前はショーを成功させられるよう、演技に集中しろよ」
このまま、いつまでも遊園地の怪奇現象に関わっていて、いいのだろうか。
だが元々寄り道に首を突っ込んだのは自分だからして、木ノ下には言い出せないまま演技練習が始まった。


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