合体戦隊ゼネトロイガー


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act2 発動

女を顔とスタイルでしか評価しないのが男という浅ましい生き物だと、内心見下していた。
顔のいい奴も悪い奴も、カリスマのある奴もない奴も、全てが等しく女体にしか興味のない浅ましい猿だと思っていた。
だからラストワンに来るまで、いや来てからも男には我が身を指一本触れさせずにいた。
だが、どうだろう。
目の前の男、英雄デュランと見つめあった瞬間、まどかは思考を全てジャックされる。
彼に優しく囁かれると、何もかも許してしまいたくなる。
彼の望むことであれば、なんだってかなえてあげたくなる。
彼の手が、指が、唇が、息が触れるだけでも、まどかの体は性欲にまみれて汗だくになり、乳首とあそこが熱くなる。
穴の奥が彼を欲しがっている。
この中に膨張したものを深く捻じ込んで欲しい。
痛くてもいい。構わない。
己が身を傷つけられても許してしまえる魅力が、デュランにはあった。
今日初めて間近で顔を併せて、初めて会話をかわした相手だというのに。
男に媚びるなんて、ありえない。
だが、彼にだったら媚びてもいい。
むしろ媚びたい気持ちが、まどかの内面を占領する。
故に誘った。
中に入って突きあげて欲しいと乞いた。
彼の手が、まどかのパイロットスーツをぬがしてゆく。
汗でべったり貼りついて気持ち悪かったものから、ようやく解放される。
操縦台の上に裸で仰向けに寝転がされ、ぼんやりと天井を見つめた。
両足を大きく広げられても、羞恥心が湧いてこない。
彼には自分の全てを見られたい。
恋や愛に憧れてはいたが、自分が実際に誰かを好きになる姿を想像できずにいた。
だが、今なら言える。
私は今、デュラン=ラフラスに恋をしているのだと。
出会ったばかりの、しかもかなりの年上であろうと問題ない。
獣のように浅ましく抱き合い、求めあう。
そんな愛があったっていいじゃないか。
教官が後藤春喜に決まった時は、正直なところ、傭兵学校に失望した。
退学を考えもしたが、ラストワンを出て何がしたいのかと問われると、何も浮かばない。
辞めなかったおかげでデュランと出会えたのであれば、正しい選択だったのだ。
ちゅっと軽く膣に口づけられて、「はぁんっ」と、まどかは仰け反る。
彼の舌が動くたびに、ぞくぞくと快感が迫り上がってくる。
初めてのはずなのに、どこか覚えがあるようなのは、もしかしたら人類のDNAに記憶された感覚なのかもしれない。
――と、小難しく考えていたのも、そこまでで。
クリトリスを舌で何度も舐められて、まどかの腰が浮きあがる。
無意識だ。
無意識に腰をあげ、より舐められやすい姿勢になりながら、両足で踏ん張った。
「あ、あっ、あっ、だ、だめぇっ」
「なら、やめるかい?」
深みのある声が耳をくすぐる。
自分でも何を言っているのか理性で把握できないまま、まどかは叫び返す。
「だめ、やめるのダメッ、あ、あぁ、はぁっ」
ちろちろと舌が何度も往復し、時折じゅうっと吸われて反射的に閉じかけた足を再び大股開きにされる。
手が伸びてきて、胸の膨らみを鷲掴みにする。
捏ねるように優しく二つの膨らみを揉まれ、舌で膣を蹂躙されて、まどかは息も絶え絶えに甘い声を漏らす。
「デュッ、デュラン、デュラン、あぁ、イイッ、いいぃっ」
煩悩メーターは全部埋まり、いつでもボーン発射可能になっていたが、通信で何度学長が『ボーンを解放してください、やり方を指示します!』と問いかけても、デュランは返事せずに愛撫を続けた。
ボーンは発射しない。
それがデュランの出した結論だ。
そこまでせずとも、最高潮状態で殴りかかるだけで充分であろうと踏んだ。
最大が、どこまでを指すのかは判らない。
あくまでも個人的見解なのだが、絶頂まで達すれば良いのではなかろうか。
つまりは挿入だ。
大丈夫、本人の許可は既に得てある。
よく知りもしない女児とヤる背徳感や道徳観に関して、デュランは全くのフリーパスだ。
子供の頃から、彼は身近な人々に愛された。
初体験は小学生、相手は担任の女性教師だった。
それ以降、知り会ったばかりの相手に欲情されるのにも、体を求められるのにも、何の疑問も持てなくなってしまったのであった。
こんな場所でするのは、さしもの彼にも初めてだが、何、どうということはない。
相手が女の子ならば簡単だ。
跨って、穴につき入れれば良いのだから。
誰かに求められるのであれば、全力で応えたい。
自分の持ちうる全てを捧げたい。
何事にも、他人の為に全力を尽くす。それが彼、デュランの本懐であった。


ライジングサンを含めた六体のロボットに囲まれてカチュアの動かすゼネトロイガーが沈黙していたのは、何故か。
他の機体でトラブルが発生していたように、カチュアの乗る内部でもトラブルが発生していたせいだ。
正確には、身動きが一切取れずにいた。
見えない何かに束縛されてしまった、そんな感覚だ。
手も足も自由に動かせず、カチュアは己の体が操縦台へ固定されているように感じた。
やがて目の前に、ぼんやりと人の姿が現れる。
ここには本来いないはずの者を形取り、口元を歪に曲げて意地の悪い笑みを浮かべた。
聞き覚えのある声で、それが話しかけてくる。
「いいざまだな、カチュア」
「辻……教官?」
自分が妄想しているのか、それともゼネトロイガーの見せる幻か。
幻覚であるにしろ何にしろ、この鉄男は自分の妄想の産物ではないとカチュアは考える。
自分が妄想するのであれば、鉄男は優しく微笑んでくれるはずだ。
幻覚の鉄男は手に鞭を持ち、底意地の悪そうな視線でカチュアを見下ろしてくる。
「勇んで飛び出したはいいが、何も対策を考えずにいたとは愚かだな。人類の絶滅など、愚かの極みだ」
こいつは鉄男の形こそ取っているが、彼を模した幻覚ではない。
ゼネトロイガーが己の意見をカチュアへ伝える為に作り出した偶像だ。
「あなたには……それが出来ると思った。違う……?」
「過信しすぎだ。俺の力はシンクロイスのみに特化されている。人類と戦うには適していない。それに」
鉄男の姿を模したものが前方のモニターへ視線をやるものだから、カチュアもつられて、そちらを見やる。
真正面に立つゼネトロイガーが映っている。
残り全ての機体に、ぐるり一周を包囲されていた。
宣戦布告を聞いた学長が、慌てて命じたのであろう。カチュアの捕獲を。
包囲するだけで何もしてくる気配がないのは、こちらに動きがないからか?
通信の呼びかけは何度かあった。だが、全部無視した。
指一本動かせないのでは、通信を開くどころではない。
「お仲間が、お前を捕まえにやってきた。どうするんだ?撃退するのか」
「……しない。シンクロイスが、くれば……いいんだもの」
小さく呟いたカチュアを、鉄男の偶像がフンと鼻でせせら笑う。
「調子のいいことだ。あれだけ大言壮語を叩いておきながら。貴様には残念だが、これしきの挑発じゃベベジェは動かせんよ」
「どう……して?人類、滅亡させられたら……シンクロイスも、困るはず」
「困りはしないさ。奴らは次のステップを見つけた。それが辻鉄男の誘拐に繋がる」
無言で、じっと見上げるカチュアへ偶像が語るには。
「優秀な種同士では上手くいかないと知った奴らは、自分達との配合を考えた。カルフは己が優秀と見定めた鉄男に目をつけて、誘拐した。目的は鉄男との交わり、すなわち生殖行為だ。優秀な種は他にもいる。奴らの牧場に。あれらを使えば問題ない」
鉄男とカルフが生殖行為?
絶対に阻止せねばならない。
鉄男を好きにしていいのはシンクロイスではない。
この地上に生まれ、彼に愛された人類の誰かだ。
願わくば、それは自分であってほしい。
カチュアは知らずギリリと歯噛みし、偶像を睨みつけた。
「なら、牧場も……全部滅ぼす。辻、教官……も、渡さない!」
だが偶像ときたら「無理だな」と即答し、ふふんと笑う。
「先もいったが、俺……否、ゼネトロイガーの武器は対シンクロイスに特化されたものでね。そうだ、本来ブルットブルブックとは、きたる未来の同士討ちを想定して設計した道具だ。ベベジェは厄介な男だ。アベンエニュラよりも。面倒な輩は早めの対処だ。そう思っての過去旅行だったのだがね、移動した際に不都合が生じた」
偶像の裏に見えぬ誰かの影を感じ取り、カチュアは尋ねる。
「あなたは……ゼネトロイガーの思考ではないの?」
「そうとも言えるし、そうではないとも言える」とはぐらかし、偶像がカチュアを見やる。
先ほどよりは、やや柔和な笑顔を浮かべて。
「鉄男と繋がりたいか?繋がりたいのであれば、パスを開いてコードを繋ごう」
「つな……がる?」
意味が判らず聞き返すカチュアに、偶像は繰り返した。
「パスを開いてコードを繋ぐのは、肉体と肉体のつながりだ。思考で繋がるのだから実際には空想でしかないのだが。彼がシンクロイスの側にいるなら、俺にはパスが判る。彼の心を開いて、コードを繋げられる。うむ、この地上の言葉で翻訳するのは難しいな」
正直に言って、彼が何を伝えたいのかカチュアには、さっぱり判らない。
しかし鉄男とコンタクトが取れるという意味であれば、是非ともお願いしたい。
「おね……がい。辻教官、助けたいの……どうしても」
「よし。コードさえ繋げば、こちらへ呼び戻せるだろう。それが助けるにも繋がる。ではカチュア、俺が何をしようと一切耐えろ。魂の限界はパスを開く鍵にもなる。お前の限界が、鉄男のパスを探し当てるのだ」
手の中の鞭をビシッと鳴らされ、今更ながらにカチュアの心を不安がよぎる。
まさかと思うが、あの鞭でビシバシ殴られたりするのであろうか。
こちらは身動きが一切取れない。
あんなもので殴られたら、気を失ってしまいそうだ。
今は気絶している場合ではないというのに。
「ゆくぞ」
ぎらりと目つきを剣呑にしたかと思う暇もなく、鞭の唸りがカチュアのお尻をブッ叩く。
突然のことで悲鳴すらあげられず、彼女は引きつった表情で瞳を潤ませる。
だが相手はカチュアが泣こうと喚こうと殴るのをやめない姿勢か、鞭を何度もしならせた。
「さぁ、我慢のしどころだぞ、カチュア。人類すべてを絶滅させるのに比べたら、軽い軽い。苦しくなってきたら、己が人生を振り返れ。お前は過去、もっと酷い痛みを経験したはずだ。それを乗り越えてきたのならば、このぐらい、どうということもなかろう」
確かに母はカチュアを毎日罵倒しては殴り、蹴って、ビンタを張ったりもしたけれど。
けして鞭で尻や太もも、背中を叩いたりは、しなかった。
幾筋も背中に赤い筋をつけられながら、次第に意識が朦朧としてきたカチュアであった……


異物が押し入ってくると感じたのも一瞬で、すぐに痛みは塗り替えられる。
「あ、あっ、あ――ッ!」
肉の壁が擦られる快感に、自分があげる嬌声を自分の耳で、まどかは聴いた。
求める手へ答えるかのように重みが圧し掛かり、デュランの体をしっかりと抱きしめる。
「あぁっ、デュラン、デュラン、デュランッ、ごしごし、いいのぉっ」
彼が体を動かすたびに、内側から喜びが伝わってくる。
「ごしごし、してぇ、続けてぇっ」
両手ばかりでなく、両足でもデュランを掴まえ、抱きついた。
まどかの顔の間近でデュランが微笑み、動きを速める。
「あ、あぁっ、いい、いいっ、そこ、そこぉっ」
切ない声は勝手にまどかの口を飛び出し、自分の意志では止められない。
何がソコで、何がイイのかも自分では判らない。
こんな真似をするのだって初めてなのに、己の体は何をどうしてもらえば満足なのかを知っている。
「高みに登ろう、まどか」
人当たりの良い声が再び耳をくすぐって、対して、まどかは自分が何と答えたのかも意識にないまま、ぎゅぅっとデュランに抱きついて。
動きに併せて腰を揺すっている間に、何かが自分の脳裏で弾け飛んだ。

二人が合体した、その瞬間。
その場にいた全員、何が起きたのかを瞬時に理解できなかった。

二階堂正治は、ライジングサンの操縦席で見た。
六体全てのゼネトロイガーが眩く輝いたかと思うと、次々変形を始めて、そのうちの一体へ融合し始めたのを。
さながら合体――そう呼んで差し支えない。
合体ロボットなど、空想にしか存在しないと思っていた。
だが現実として正治の目の前でゼネトロイガーは五機全部が一機と合体し、巨大な一つの塊となった。
雲の上まで突き抜けかねないほどの高さで大きく聳えるゼネトロイガーは、どのパーツが最初に飛び出していった一機なのかも判らない。
それでいて、きちんと形はゼネトロイガーの面影を残していた。
「これが――最終兵器?」
ぽつりと呟き、正治は、じっと合体したゼネトロイガーを眺める。
ひとまず、カチュアとやらの暴走候補生の捕縛には成功したと言っていいのか。
しかし合体したのはいいとして、これ、あとで一体ごとに分離できるのか?
ずっとこのままだったら、スパークランの格納庫に収まりきらないだろう。
外に置くにしても、目立って仕方ない。
誰も教えてくれなかった予想外の結果に、正治は一人、困惑するのであった。


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