己キャラでMMO

14周年記念企画・闇鍋if


ダグー&ヴォルフ

奇襲者二人はレベルが高かった。
だが、こちらのほうが人数は多かった。
それにダグーとティーガ、二人の補助魔法の援護効果も大きく、突如始まったPK撃退に何とか成功する。
二人目が点滅して消えるのを見届けてから、ようやくGENは一息つく。
「やれやれ。俺なんか襲っても楽しいことなんか一つもないのにな」
「GENさん格好いいから、襲われちゃうんだね」
ティーガが、そう言ってニヤニヤする。
「大人しく襲われるつもりもないよ。俺だって抵抗する時はするし」
言い返し、GENは落ちていた紙を拾い上げる。
先の二人が落としていったアイテムだ。
「なるほど、PKでもアイテムはドロップするのか」
「保護ロックかけていない物だけ、だけどね。それ、ここの地図じゃない?」
ヴォルフとティーガの二人が覗き込んでくるので、GENは皆にも見えるよう地面に置いてやった。
「へぇ、中級は五階で終わりなんだ。意外と浅いダンジョンなんだね」
少々余裕が出てきたのかダグーが軽口を叩き、GENは軽く諫める。
「浅いけど、雑魚も一杯出るみたいだから油断しないでくれよ?」
「うん、それは大丈夫。先輩もいるし、俺は極力前衛に出ないようにするから」
そこは、ちゃんと弁えているダグーである。
バードからパフォーマーに転職しても、火力は全く上がらなかった。
だが温厚なダグーにとって、火力が高くないのは幸いであった。
火力が高いと前衛に出なければならなくなる。
自分の手で誰かを傷つけるなんて、たとえ作られたモンスターでも、まっぴらごめんだ。
「あっ、ねぇねぇ。なんでヴォルフはダグーの先輩なの?」
さっき答えを聞き損ねた質問を繰り返すティーガへ、今度こそダグーは答えてやった。
「ヴォルフは俺に、人生の歩き方を教えてくれたんだ。だから先輩なんだよ」
ちらっとティーガがヴォルフを見上げると、目があった途端、ヴォルフが馬鹿笑いする。
「はは!そんな大層なもんでもないさ。行き倒れになるところだったダグーを助けただけだ、俺は」
「それって、結構すごくない?命の恩人じゃん」
納得したようにウンウンと頷き、ティーガはニッコリ微笑んだ。
「命の恩人で、人生の指針となった先輩かぁ〜。俺のGENさんと一緒だね。ねっ、GEN先輩♪」
「あぁ、お前が俺を先輩って呼んだことは、あまりないけど」
襲い来るモンスターを拳の一撃で倒しながら、GENも応える。
「あ、雑談ついでに俺も聞いていいかい?GEN」
「なんだ?」
「さっき、ぼんやり遠くを見ていたみたいだけど……何か見つけたのか?」
「さっき?いつの話だ」
話しながらも動きは忙しく、モンスターと戦いながらの雑談だ。
イベント限定と銘打たれているが、出てくる雑魚は普段狩りで使っているフィールドと大差ない。
「えぇと、ダンジョンに入った直後だったかな」
「あぁ……」
レベルアップのファンファーレを聞き流して、GENが頷く。
「……いや、似た人を見つけたんだ。その……あの人とそっくりな」
「え?なになに?あの人って誰?」
途端に食いついてきたティーガを「ちょ、顔近いって!」と払いのけ、GENは、ふぅっと息を吐く。
「少しな。気になる人がいるんだよ」とだけ言うと、ティーガにはスケベ笑いされた。
「あ〜、もしかして美人発見?駄目だよ、浮気は。ミズノさんに怒られちゃうよ〜?」
「お、俺とミズノは何でもないって。それに、俺が誰を気にしようと関係ないだろ、あいつには!」
どう見ても『好きな人がいるんです』と言わんばかりの態度バレバレなGENに、ダグーもヴォルフも苦笑する。
ティーガもきっと、判ってしまったはずだ。
GENに意中の人がいることぐらい。
「ミズノさんって誰だい?」
好奇心混じりにダグーが問えば、ティーガが嬉々として答える。
「えっとね、GENさんの恋人!」
「違うって!俺に恋人なんかいないっ」
「まぁ、恋人だったらチョコレートは、その人に渡すよね……」
ポツリとダグーも漏らし、GENには「おいっ!くちが軽いな、ダグーッ」と怒られたが、「えーっ、ダグーには教えたのに、俺には教えてくれないの?教えてよ〜、ぶーぶー」とティーガにしつこく迫られて、とうとうGENは音を上げた。
「あーもうっ、判った、判ったよ!この人だ、この世界で見かけた!」
ヴォルフもティーガも、そして一度見ているはずのダグーも一斉に、GENのスクリーンカメラを覗き込む。
「ほえぇ〜……高エネルギー生命体」
「えっらいド美人さんだなぁ」
「頑張れ、GEN。俺も応援しているよ」
すぐにGENはカメラをしまい込み、場を仕切り直す。
「さ、さぁ!最下層へ急ぐぞ。チョコレートは一回のドロップじゃ落ちないかもしれないしな」

GENお気に入りのスクリーンショット美人とは、案外早く再会した。
最下層のラスボス手前で、彼女のいるパーティーと出会ったのである。
そこから先は色々あったりもしたのだが、ここでは割愛とさせていただく。


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