2008年クリスマス企画・闇鍋if

ご主人様と私

龍虎編

クリスマスぱーちーに遅れて呼び出された坂井と葵野は今、笹川の作った亜空間フィールドに移動していた。
ヒラヒラするメイド服に着替えさせられた葵野は、くるっと一回転してみせる。
「なぁ、坂井。これ、おかしくないかなぁ?」
もちろん言うまでもなく今の彼は女の子。
しかし元々中性的な印象があるので、男のままでも似合っていたかもしれない。
聞かれた坂井はニヤニヤ笑いながら応えた。
「あー、バッチリだぜ小龍様。似合う似合う」
「なんだよぅ。俺が女の子役で不満なのか?」
投げやりな言い方に葵野はぷぅっとふくれっ面になり、こっちの方が不満げである。
「何怒ってんだよ?もしかしてお前、俺のメイド姿が見たかったのか?」と坂井がからかえば、即座に彼は首をブンブンと振った。
「いや!全然ッ!」
だろうな、と自分でも坂井は思う。
自分の女装姿を想像しただけで、軽くバケツに十杯ぐらいは吐けそうだ。
「下も女モノはいてんのか?」
近づいてピラッとスカートをめくってやったら、葵野は激しく飛び退いて、ぷんすか怒り出す。
「ちょ、ちょっと!何してるんだよ、坂井のヘンタイ!」
「オイオイ、スカートめくっただけでヘンタイ扱いか?裸や下着見られて恥ずかしいって仲じゃねーだろうが」
坂井は肩を竦めてみせるが、葵野ときたら顔を真っ赤にしている。
「恥ずかしいよ!」
そこまで嫌か、女物の下着を履いているという事実を他人に見られるのは。
メイド服の下が褌やトランクスというほうが、却って恥ずかしいような気もするのだが……
まぁ、そこは感覚の違いだろうと坂井は簡単に納得して、葵野へ頭を下げた。
「悪い悪い、小龍様に下着のコダワリがあるたぁ存じなかったぜ。次からは断ってからめくることにするわ」
「断ればいいってもんじゃ――」
なおも怒る葵野を手で押し止め、ビシッと指を彼の眉間に突き立てる。
「それは、もうどうでもいいから。早く始めようぜ」
勝手に締めくくられて心中怒りの収まらぬ葵野であったが、鏡に映った自分を眺めているうちに穏やかな気分になってくる。
「……なぁ」
「なんだ?」
即座に応えた坂井は、何やらタンスをゴソゴソと漁っているようだ。
構わず、じっとメイド服姿の己に見とれながら、葵野はぽつりと尋ねた。
「俺って、結構……可愛いよな?」
「……ハァ?」
今度は割合近い場所から呆れた声が返ってきて、振り向くと、すぐ間近に坂井が居た。
「お前、何言っちゃってんだよ。もしかして、女装に目覚めたとか?」
バカでも見るような視線に晒され、葵野は少しいぢけてみせる。
「坂井は、そうは思わないんだ……そっか」
いや、実際かなり傷ついた。
自分でいうのもなんだが、鏡の中の女性版葵野は、葵野自身から見ても可愛い部類に入ると思う。
りっちゃんやアリアとは違った感じの可愛さだ。あえて例えるなら、天然系?
ずどーんと落ち込む彼に、慌てたのは坂井のほうで。彼はワタワタと手振り身振りを添えて弁解してきた。
「い、いや?別に可愛くないたぁ言ってねぇだろ」
弁解するぐらいなら、最初から同意すればいいものを。
「つか、お前は男でも女でも、そう大差ねぇ外見だし……」
しかも、一言余計だ。
すぐに「大差ないって、どういう意味だよ!」と葵野本人に怒鳴られ、彼は肩を竦めてみせる。
「だからぁ、男だろうが女だろうが関係なく可愛いっつったんだ」
この反撃には、葵野もすぐには反応できず「なっ……!」と言ったまま絶句してしまう。
その間に家捜しを再開した坂井、面白そうなモノを見つけると、それを手にして戻ってきた。
「よぅ、なぁにボーッとつっ立ってんだよ。顔赤いぜ?」
「あ、あ、あかくなってなんか……っ!」
言われて熱くなった頬に手をやり、それでも葵野は否定してみる。
が、返事など元から期待していなかったようで、坂井は手にしたモノをポケットにしまい込む。
「じゃ、始めようぜ。葵野」と、マイペースに仕切り始めたのであった。

「まずは言葉遣いだ。お前はメイド、つまり俺の奴隷なんだから当然俺を敬うように。俺のことはご主人様って呼ぶんだぜ、いいな?」
偉そうな坂井に対し、葵野はへらっとしまりのない笑いを浮かべて嬉しそうである。
「あは……なんか、変な感じだな」
王族出身、ゆえに昔から崇められることはあっても逆はない。初めての体験が、彼をワクワクさせているのだろう。
坂井もやっぱり嬉しそうで、彼はニヤニヤしながら、ぽんと葵野の肩を叩いた。
「まぁなぁ。慣れないだろうが、しっかり頼むぜ?小龍様」
「あ、まって坂井」
途端に駄目出しが入る。
「俺をメイドだというんなら、坂井も俺の呼び方を変えなきゃ」
ヘンなところでヘンなこだわりを発揮してくる。
なんて呼べばいいんだよ?と首を傾げる坂井へは、こう答えた。
「力也でいいよ。それが駄目なら、葵野で」
「わかった、じゃあ葵野で統一すっか」
葵野的には力也と呼んで欲しかったのだが、坂井がそう決めたのなら仕方がない。
内心の不満を押し隠し、彼はにっこりと微笑んで、会釈してみせる。
「わかりました、ご主人様」
「そうそう、そんな感じ。上手いじゃねーか。あとは……そうだなぁ、一人称も直しとくか?俺じゃヘンだから私……」
「いや、私ってのもヘンだから、ボクでいいかな?」
「なんでだよ」
女の子なんだし、メイドでもあるんだから、私でいいじゃないか。
そう突っ込む坂井に対し、葵野は少しばつが悪そうに言い返す。
「だって、私なんて一度も使ったことがないし……しっくり来ないんだ。その点、ボクなら昔使っていたし」
「あぁ、そうだったか?」
「そうだよ。子供の頃はボクって言ってたじゃないか、覚えてないのか?」
そうだったかもしれない。出会ったばかりの頃の葵野は、一人称がボクだった。
だが、すぐ坂井の真似をして『俺』を使うようになってしまったから、すごい短い間だったようにも思う。
「じゃあ、ボクでいいや」
なんかヘンだけどな、とは思ったが、言わないでおくことにする。
言うとまた、葵野はションボリしょげたりむくれたりと大変なことになるから。
「んじゃまぁ、言葉遣いの設定は、こんなもんでいいか。さっそく一つ目――」
「じゃなくて二つ目ですよね、ご主人様?」
すかさず修正ツッコミが入り、坂井はカンニングペーパーを胸ポケットから取り出して確認した。
「あぁ、今のが一つ目かよ。じゃー二つ目は……っと」
ホントダ。葵野の言うとおり今のが一つ目で、二つ目はこう書かれている。

・おかえりなさいませの第一歩は、ニャンニャンから(ΦωΦ)

「……なんかこれ、俺達いつもやってるコトじゃねぇ?」
真顔で問う坂井へ、葵野は即答するかと思いきや、モジモジと恥ずかしそうに顔を伏せて応えた。
「で、でも、今は俺、じゃなくてボク、こんな格好だし……女の子だし、違うんじゃないかな?さ、坂井はどうなの?女の子とイチャイチャするのって、好き?」
どうなの?と聞かれても、女の子とイチャイチャした記憶など今も昔も一度もない坂井である。
それに、女の子と言ったところで葵野は葵野だ。
「何いってんだ?外面が女になったって、お前はお前だろ。かわんねーよ」
あっさり受け流すと、ぽいぽいと服を脱ぎ散らかし始める。
「ちょっと、今の質問の答えは!?ボクまだ聞いてないんだけどっ」
無視されて憤慨する葵野へ近づくと「敬語」とツッコミを入れてから残った分も脱ぎ終えて、坂井は裸になった。
「……自分で脱いじゃうなんて、ずるいよ。俺が、脱がせたかったのに」
ぽつんと呟き、それでも葵野は坂井の前にしゃがみこむと、彼のモノを頬張った。
彼を見下ろしながら、坂井もまた、ゆっくりと腰を動かし始める。
「へっ……文句言いつつ、やってんじゃ……ねぇ、よっ」
「んむ……だ、だって。ご主人様がやれって言ったんじゃない……ですか」
文句に文句で返す葵野は咥え込むのをやめて、今度は筋にそって舐めている。
空いた手で、もみもみと坂井の睾丸を揉んでやると、彼は思いっきり背中を仰け反らせて吼えた。
「うぉっ!り、力也、サービスしすぎなんじゃ、ねぇのかっ」
ビクビクと感じまくりな彼を、葵野はうっとりとした視線で見上げながらコッソリと呟く。
「うん……サービス過剰な、メイドですから……ボク」
坂井が気持ちよさそうなのを見ているだけで、葵野も感じてしまう。
じゅん、と下着が濡れるのを肌で感じ取り、メイド服の小龍様は相棒に甘えてみた。
「ねぇ……」
「んぁっ、な、なんだ?」
竿を舐めていた舌を止め、今度は先端をチュッチュと吸いあげながら、合間に甘えた声でおねだりする。
「ボクにも、サービス……してほしいです、ご主人様」
「さ、サァビスって、お前、メイドがっ」
メイドが主人に要求するなんて、聞いたことねぇよ。
そう、坂井は突っ込みたかったのだが、次々と己のモノから押し寄せてくる快感に耐えきれずに呻いた。
「あ、あッ、わ、わかった!何してほしいんだ!?言えよ、早くッ」
「ご主人様の手で、ボクの……ココを掻き回して欲しい……です」
きゅっと坂井の腰に手を回して抱きついた葵野は、坂井の手を取り、自分の股間へと導いた。
「俺……もう、駄目だ。このままじゃ、先にいっちゃう」
舐めているだけで、すっかり興奮してしまったものらしい。
うっとりと恍惚の表情で坂井のナニに顔をすり寄せると、葵野はそっと目を閉じた。
普段より積極的且つ愛らしい姿の葵野に、坂井も心臓が激しく高鳴るのを覚えながら、それでも主人らしくメイドを叱咤する。
「お、おい。ご主人様を差し置いて先にイクとか、ふざけんなよ?」
ゆさゆさと揺さぶってみたが、コアラのように抱きついた葵野は引きはがせそうもない。
「……ったく、二段階目はコレで終了だっつーの」
予定していた進行も滅茶苦茶になり、ぶぅっとふくれた坂井が、結局どうしたかというと――
彼は虎となって、葵野のホールドから逃れたのであった。

「次こそは真面目にやれよ?じゃないと、俺は帰っちまうからな」
フン、と虎に鼻先を近づけられ、しゅんとなった葵野は、必死で弁解する。
「だ、だって……坂井がすごく気持ちよさそうにしてたから、俺……」
「言い訳なんざ聞きたくねぇ」
ぴしゃりと言い切り、のてのてと台所へ歩いていく虎。
「夕飯は俺が作っといてやるから、お前はトイレでも行ってきやがれ」
怒られ、再びショボーンとしょぼくれた葵野は、大人しくトイレへ向かった。


トイレですっきりしてきた葵野が「できた〜?」と台所を覗き込むと――
エプロンをつけた虎が、真剣な顔でナイフを口に咥えているのを見て、葵野は仰天する。
「な、何やってるんだよぅ!危ないだろ、バカー」
どんっと後ろから突き飛ばされ、危うく髭をそり落とすところだった。余計危ない。
「何すんだは、こっちの台詞だっ。何って、食事の準備に決まってんだろうが!」
癇癪を起こす坂井からナイフを取り上げると、葵野はコンロにかけられた鍋を覗く。
やっぱり。
スープかなにかを作っている最中だったのだろうが、一面に浮いているのは野菜ではなく虎の毛であった。
「こんなの飲めるわけないだろー!?」
怒りに任せて鍋をひっくり返し、そこら中が水浸しになる。いや、熱湯浸しになった。
突然の大洪水に坂井は慌ててテーブルに飛び乗り、そこから怒鳴りちらした。
「何がしたいんだよ、さっきから!」
葵野は葵野で全然聞いておらず、冷蔵庫からパンとジャムの瓶を取り出し、ぬりぬりと塗り始める。
「もー、坂井って万能かと思えば変な点で抜けてるんだもんなぁ。夕飯は俺が作るよ、パンでいいよね?」
パンにジャムを塗るというのは、『作る』とは言わない。
それに夕飯がジャムパンだけなんて。そんなサモシイ食事でお腹がいっぱいになると思ったら、大間違いだ。
むかついたのか、坂井も冷蔵庫を引っかき回して生肉を見つけると、ビニールのコーティングを歯で引き裂いた。
「ちょっと、何やってるんだよ、もう。大人しくしてろよー」と怒られたが、当然無視だ、無視。
クッチャクッチャと生肉を食べ始めた坂井を見て葵野のほうもブチキレたか、彼はナイフを放り出し、いきなり立ち上がる。
生肉を食いながら横目で眺めていると、彼は黙ったままベッドへ寝ころぶと布団を頭まで被ってしまった。
「何スネてんだよ。いっとくが、俺は慰めてなんかやらねーぞ」
こっちだって作りかけの料理を台無しにされているのである。謝るならば、葵野の方が順序は先だ。
……毛が入っていた?そんなのは謝らない理由にならない。
ごくりと肉を飲み干し、今度は風呂場へ向かう。葵野がフテたいなら勝手にすればいいのだ。
こっちもこっちで勝手にやる。

いつまでたっても坂井が慰めてくれないので、不安になったのか。
葵野は、むくりとベッドから身を起こし、電気のついた風呂場へ忍び寄った。
中を覗いてみると、タオルを頭に乗っけた虎が、ご機嫌で風呂に浸かっている。人の気も知らないで。
「さ……坂井。あの……」
遠慮深げに声をかけてみるも、あからさまに無視された。
なので「坂井っ!」と今度は近寄って大声を出す。
虎は疎ましげに葵野へ目をやり「……何だよ」と、それでも一応は答えてくれた。
「あ、あの……さっきは、ごめん。でも、何で虎の格好のまま食事を作っていたんだ?」
人間に戻った方が作りやすいだろうに。それに人の姿で作れば、毛なんか混合しなくても済んだのに。
そう尋ねると、彼は不機嫌なまま応えた。
「……戻れるなら戻ってるさ。戻れねぇんだよ。なんでか判んねぇが」
「えぇ!?」
じゃあ、このままの彼と口移しや洗いっこやベッドインしなくてはいけないのか。
それもそれで、一つの余興ではある。
坂井の掌をひっくり返し肉球をぷにぷにしてやりながら、葵野は尋ねた。
「えっと坂井、これからも続ける気はある?」
「お前が続けるつもりならな」
そう答えると、虎は葵野の袖をくわえ、彼にも風呂へ入るよう促した。
「え、うん。でも、風呂が先なのか?風呂って御飯の後じゃなかったっけ……ぷわぁっ!」
ゴチャゴチャ言っていたら短気な坂井に湯をかけられて、哀れ葵野は頭から水浸しに。
「ひ、酷いよ、せっかくのメイド服なのに〜」
何がせっかくなのかは判らないが。
「いいから、さっさと脱げよ。風呂に入ってから飯だ、んで最後は一緒に寝る」
まだぶつぶつと文句を言っていたが、葵野も渋々服を脱ぎ、そっと虎の真横に身を沈める。
その胸を、ふにふにと肉球のついた掌でプッシュしながら坂井は満足げに鼻を鳴らした。
「ふん。お前にしちゃあ、結構胸あるじゃん。やーらかいし……」
「や、やめろよぅ……」と嫌がられるのもお構いなしに、柔らかい胸の谷間に顔を埋めた。
「や、くすぐったい!もぅ、坂井ってば」
「敬語。敬語で話せよ」
う、と一旦は言葉に詰まるものの、すぐに葵野も甘ったれた敬語で坂井の頭を抱きすくめる。
「……やめてください、ご主人様〜。あまりオイタが過ぎますとぉ、こうだ〜!」
かと思えば、片方の手で桶を掴み、頭から虎に湯を浴びせてやった。
油断していたのか「ぶわ!」と思いっきり頭からズブ濡れになった坂井。
だが、やられっぱなしで黙るような男ではない。
「てめ、やったな!?お返しだッ」
言い残すやドボンと湯の中へ潜り、葵野のアソコに鼻先を突っ込んでくる。
太股を触るヒゲの感触に「ひゃあ!」と情けない悲鳴をあげて、葵野は逃げようと立ち上がりかける。
が、撤退を許す虎ではなかった。
ぷかぁっと頭だけ水面に出すと「お前も俺を洗えよ?お前は俺が洗ってやっから」と再び水音と共に湯の中へ消える。
「洗うって、それ、洗うって言わな……んぁっ!だ、だめぇ、坂井、くすぐったい、くすぐったいからっ!」
潜水した坂井が何をやっているのかと思えば、前足やら尻尾やらで葵野の乙女な部分を擽りまくっているようだ。
洗うというよりは、ふざけて遊んでいる。そう言った方が正しい。
「も、もぅ、そんなことするなら……こっちも本気でやっちゃうぞっ!」
手を伸ばして、なんとかスポンジを入手した葵野も反撃に出た。
たっぷりボディソープをつけてアワアワにしたスポンジで、虎のお尻、特に尻の穴をコシコシと擦ってやる。
「ぷぁぁっ!?」
驚くべき勢いでザバァッと出てきた虎は、風呂桶の縁に捕まって、ヒクヒクと震えた。
「お……お前、何、どこ擦って」
「はいはい、綺麗にしますからね〜。動かないで下さいね〜」
さらに容赦なくスポンジで穴の周りを責め立ててやれば、坂井はだらしなく舌を出し喘いでいる。
すっかり攻守逆転したところで、膝の辺りに当たっている何かを感じた葵野は、何だろうと湯の中を覗いてハハァと納得。
虎になっても坂井は坂井。尻で感じてしまったせいで、ぶらさがっているモノも見事なまでに勃起していた。
「えへへ、坂井、気持ちいい?いいんだよね。ほら坂井、お前のお尻の穴、すごいヒクヒクしちゃってる」
言葉でも責めながら、尻穴に指を突っ込んで掻き回してやる。
「くぅ……ば、ばか。洗えよぅ」
坂井は何か言いたくても快感が勝ってしまって、思うように動けない。
「洗ってますよ〜?ご主人様のお尻の穴の中を、ね」
クスクスと笑いながら、なおも尻の中をほじくってやる。虎はもう、言葉が言葉にならないようだ。
そうして散々坂井を虐めてやった後、ようやく満足した葵野は――
「ほら、もうあがろう?これ以上入ってたらふやけちゃう」
すっかりクッタリしてしまった虎の坂井を担ぎ上げるようにして、風呂から出たのであった。

バスタオルで丹念に拭いて、虎をベッドに寝かせてから。
テーブルの上にあったカンニングペーパーを見て、葵野は考えた。
台本ではメイドがベッドで弄られるってことになっているけど、このままだと俺が坂井を弄くるハメになりそうだ。
だが、それはそれで有りだろう。ルール通りにやらなくてはいけないっていうルールもないんだし。
仰向けに寝かされた、虎の股間にそびえる塔を軽く握ってやりながら、葵野も横へ寝転がる。
「ねぇ、坂井……俺達の場合、メイドに着替えた意味が全くなくなっちゃったね?」
上下にゆっくりと擦られて、小さく呻いてから虎も横目で彼を見た。
「だ、だから、言っただろ?男でも女でも……お前はお前だって。関係ねぇんだよ」
誰かを好きになるということは、心を好きになるということだ。
例え相手が異形の者に変化しようと、心が変わらない以上は嫌いになることもない。
だから、こんな演出は意味がないのである。この二人にとっては。
いや、もっと言うなればアムタジアに住む者にとって、性別というのは大した問題ではない。
好きになった相手が、たまたま異性だった。或いは同性だった、それだけの話だ。
「まったくねぇ。HENTAI世界の住民はIf話がやりにくくって困りますyo(≧∀≦)☆」
いきなり天井からの野暮な声に、二人ともぎょっとなって真上を見上げてみると。そこから覗いている目が二つ。
「だ、誰でぇ!?」
怒鳴る坂井へ答えるように笹川ともう一人、黒い肌の男が飛び降りてきた。
「やぁやぁ、そろそろタイムアップの時間っぽいんで終了を告げに参りました|ω・)ノ」
「え〜」と声をあげたのは葵野だけで、坂井はむしろ嬉しそうにベッドの上に立ち上がる。
「戻すんだな?こいつを。じゃ、早いトコやっちゃってくれ」
男でも女でも構わない、とは理性の上の話であって、坂井的には葵野は男でいて欲しいようだ。
「なんで嬉しそうなのかねぇ、こいつは。女のオマンコだぜ?オメーのツラじゃ、一生見られねーかもしれねぇっつぅ」
褐色の男が小馬鹿にした調子で言うのへは、何故か胸を反らして坂井は答えた。
「ヘン、判ってねぇな。女のマンコなんかより、普段の葵野のほうがずっとエロっぽいんだぜ」
「何へんな自慢を、知らない人にしてるんだよ!す、すみません、こいつ礼儀と常識を知らない奴で……」
坂井の代わりにペコペコ謝る葵野へ例の装置を向けると、褐色の男は至って気楽に手を振った。
「あ、いーのいーの。そういう趣味の奴が居ることも知ってるから、俺は。じゃ、戻すぞ?」


ってなわけで。
男でも女でも……というか、男のままでも良かったんじゃね?
てな葵野と坂井のクリスマスは、この辺で終わるのであった。

++End++

Page Top