第九小隊☆交換日誌

報告その16:倉庫突入  【報告者:キース&レン】

俺のナナたんがさらわれた先は、港にある倉庫の中だった。
俺達は一同集結し、一斉に怪しい倉庫へと入り込む。

――そして俺達は、一斉に叫んだ。
「なんだ、こりゃあ?」
倉庫だと思っていたが、倉庫ではなかったようだ。
いや、本当は倉庫なんだろうが、目の前に広がる景色がそうじゃない。
俺達の目の前には、草原が広がっていたのだ。
「幻術……か?」
ぼそりと斬が呟く。
「幻術って何ですか?」
即座に尋ねたのはレンで、斬が答えた。
「幻を見せる魔法だ。しかし……この規模の範囲となると」
「高位魔術師ッスか?」
らしからぬ言葉がジロの口から飛び出し、斬も重々しく頷く。
「あぁ。強敵だ、心してかからねばなるまい」
こいつが見ても強敵なら、相当の実力者なんだろうな。
にしても、これが幻だって?
俺はしゃがんで、地面に生えている草を引っ張ってみた。
ちゃんと掴めるし、手触りは草そのものだ。
ぐいっと強く引っ張ったら、ブツッと音を立てて引っこ抜けた。
根っこには土もくっついている。本当に、これが幻なのか?
とはいえ倉庫に入ったら草原が広がっていた、なんてのも
常識で考えたら、ありえない。とすると、やはり幻なのか。
「見て」と女医が遠方を指さしたので、皆でそちらを見た。
細長い建物が、ゆらゆらと蜃気楼で陰っている。
「あそこが敵サンの本拠地ってか?」
ボブが肩をすくめる真似をした。
オイオイ、冗談じゃないぞ。
倉庫に入れば即奴らと正面対決になると思っていたのに。
「この付近には誰もいないってのも不気味だよね……」
恐る恐るエルニーが周囲を見渡して呟く。
奴の言うとおり、俺達が立っている付近に人の気配は全くない。
となると、やはり、あの細長い建物に入らないと駄目ってことか。
「めんどくさいねェ」
レピアがぼやき、でも、とも続ける。
「あそこに行かなきゃ助けらんないんだろ?
 囚われのお姫様をさ。じゃあ、行くしかないね」
そうだ、その通りだ。俺達は草原を突き進む。
待っていろよ、ナナたん!すぐに助け出してやるからな。

近づくにつれ、細長い建物は塔だと判明する。
入り口は一箇所。小さな扉がついている。
そこにも人影はない。随分と不用心な奴らだな。
或いは、俺達が来るのを誘っているのか?
無言で扉に手をかけるユンを止めたのは、バージニアだ。
「全員で入るのか?一人、二人は外に残した方が」
だがユンときたら、全然話を聞いちゃいない。
さっさと扉を開けて、入っていっちまいやがった。
「そ、それじゃ僕とジロとエルニーが残りますので
 他の皆さんは中へどうぞ」
なんてふざけたことを言い出したのは、スージだ。
だが、奴の提案は即座に却下された。
「弱ェ奴らが残ったところでどうなるってんだヨ?
 ここはセオリー通り、強いのと弱いのとで二分だろ」
どうでもいいが、早いとこ決めてくれ。
先に入っていったユンが心配だ。
「俺達は、どうする?」
俺がセツナに尋ねると、女医の反応は至極簡潔で。
「さっさと行きましょう。
 ここで押し問答しているだけ時間の無駄だわ」
ときたもんだ。だが、それには俺も同意だな。
大体残ったって、ここは幻術の中なんだろ?
後で合流できるとは限らないし、残ってどうなるかも不明だ。
なら、一つにまとまって行動した方がいいと思うんだが。
うだうだ話し合いを続ける連中を背に、
俺とセツナとレンは、そっと塔の中へ忍び入る。
「おーい、待てよ。俺も行く」
背後で誰かが話しかけてきたが、ついてきたければ勝手に来ればいい。
俺達は細い通路を走って、前を行くユンに追いついた。
「単独行動するなよ、危険だぞ?」
注意してやると、ユンは無言で頭をさげる。
一応反省はしています、といった処か。
「それにしても……狭い通路ですね」とレンが呟く。
確かにな。人一人通れれば充分ってな狭さだ。
やたら足下が暗い。照明が、いやに少ないせいか。
ユンを先頭に再び歩き出しながら、壁に手をつけてみる。
石を削り取って造ったものか。壁の表面は、ひんやりしている。
とても、これが幻だとは信じがたい。
不意にパッと周りが明るくなり、天井に映像が映し出される。
そこに映ったのは、黒いフードで顔を隠したローブの人物だった。
「な、何ですか!?」
レンが驚き、その声に反応したかのように映像の人物が話し始める。
『ようこそ、招かざる異邦の民よ』
ぶしつけに失礼な挨拶だ。
しかも俺達が異世界の住民だと知っているってのか。
何者なんだ?こいつは。
『だが諸君らは実に良いタイミングで現れてくれた。
 そして最高の捧げ物を貢いでくれた。
 これには我らが神も、お喜びであろう』
「……頭がコレな人でしょうか?」
頭の横でくるくると指を回し、レンが小声で女医に囁く。
そいつを女医は「シッ」と短く制し、映像へ話しかけた。
「あなたは何者なの?どうして私達を、ご存知なのかしら」
話なんか出来るのか?と訝しがる俺の耳にも、答えが聞こえてくる。
『諸君らが来るのは判っていた。
 何故なら、あの穴は我らが神の開けた道しるべなのだから』
ただの映像だと思っていたが、会話は可能だったようだ。
いや、それよりも、だ。
あの穴ってのが、俺達の通ってきた扉を指しているんだとしたら。
こいつが次元の扉を開けた張本人なのか?
正確には、こいつの言う神とやらだが。
大体、神って何なんだ。神って。怪しい宗教でもやっているのか。
そいつを聞こうとして、俺の視線はローブの背後に釘付けとなった。

あれは!
ナナたんじゃないかッ!!
しかも、ご丁寧に全裸でベッドに張りつけだと!?

ナナたんが、全裸でベッドに縛りつけられている。
それも淡いピンクの毛が露わに、大股開きのオマケつきで。
つんと立った乳首が俺を誘惑してくる。
ナナたんは顔を上気させ、はぁはぁと荒い息をついていた。
じっとりと汗をかいているようにも伺える。
「むはぁッ!」
思わず叫んだ俺に、レンがぎょっとなって後ずさる。
「キ、キモッ!」
「どうしたの、キース――」
言いかけた女医も、俺が何に興奮したのか判ったのか言葉を失った。
背後でユンが息を飲む音も聞こえる。
「なんて破廉恥な真似を……」
ギリッと女医が歯がみする。
全くだ、ナナたんをあんな格好でベッドに縛り付けるなど
世界中全ての神が許しても、この俺が絶対に許さないぜ。
ナナたんをああしていいのは、俺一人に託された特権なんだからな。
俺達の様子を見て、変態ローブが高らかに笑った。
『気がついたか?この女は我らが神に捧げる大切な贄だ。
 諸君らは素晴らしい者を運んでくれた。
 我らが神の欲する魔力、それをこの女は充分持っている』
「ふざけ」「ふざけないで!」
いきり立つ俺を押しのけ、女医が怒鳴る。
「年若い子供を神の生け贄にする、ですって!?
 気が狂っているとしか思えないわ!今すぐ彼女を解放しなさい!!」
『そうはいかぬ。この者は我らが長い間待ち続けた最高の贄なのだ』
ユンが一歩前に出る。怒りの目を向け、映像へ怒鳴りつけた。
「なら、力尽くでも取り返す……首を洗って待っていろ!」
俺が言おうとしていたことを、全部言われちまったぜ。
まぁ、いい。言葉よりも行動のほうが大事だ。
怒り心頭のユンを先頭に、俺達は走り出す。
この塔の何処にいるのか判らないが、絶対見つけ出してみせる。
救出した暁には、ナナたんの艶やかな唇を思う存分――
「キースさん、妄想は後にしてください!今はナナの救出に集中して」
どうして俺が妄想しているって判ったんだ、レンの奴。
顎に垂れてきた涎を袖でぬぐうと、後は何も考えずにユンの背中を追った。


どれくらい走っただろうか。
狭い通路を抜けた先には、広い部屋が待ちかまえていた。
一体どういう建物構造なんだ。通路の先に部屋が一つしかないってのは。
いや……ここは幻術、幻の世界なんだったな。
ならば、何があっても不思議じゃない。
置いてけぼりにしたと思っていた斬達も、しっかり後から入ってくる。
「ここで行き止まりか?」
ぐるっと見渡したボブが呟く。
そんなはずはない。
だって、ここには誰もいないじゃないか。
この塔の何処かにナナたんがいて、ベッドで縛り付けられているはずなんだ。
――そこまで考えて、嫌な予感が俺の胸をかすめる。
この塔にいると思いこんでいたが、それ自体が間違っていたとしたら?
傭兵達は壁や床を調べている。
と、耳障りな音がして、行き止まりの壁に映像が浮かび上がった。
さっきの風景だ。ナナたんと、変態ローブが映っている。
違うのは、ナナたんの拘束されたベッドが前面に押し出されている点か。
画面には映りきれていないが、複数名がベッドを取り囲んでいるようだ。
時折、チラチラと金属の棒のようなものが見え隠れしている。
「なんだ、あれ!?」
バージニアが叫び、その横ではキャッとスージが両手で目を覆う。
だが、どうせ指の隙間から見ているであろう事など、俺にはお見通しだ。
というか、さっきの映像、こいつらは見ていなかったのか。
「やっべーモロ見えじゃん」
ジロは気のなさそうな調子で呟きながら、しっかりガン見してやがる。
傍らのエルニーが落ち着かない様子で叱咤した。
「あまり眺めてよいものではありませんわ、ジロ!」
『あっ、あ、やぁんっ』
突然映像からエロい声が流れてきたので、俺の意識はそちらへ飛んだ。
金属の棒がナナたんの割れ目を無遠慮にツンツンしてやがるじゃないか!
『や、やめて、やめて、いやぁっ』
ナナたんが精一杯首を振って拒絶しているってのに、全くお構いなしだ。
横合いから別の棒が伸びてきて、ナナたんの乳首をグリグリする。
乳首とアソコの二箇所同時攻撃だ。
『あ、やぁっ……あぁん、はぁんっ、やめ、やめてぇっ』
ナナたんは断続的に可愛い声をあげて、イヤイヤをした。
足を閉じようと無駄な努力を試みているが、当然閉じられるわけがない。
何しろ両手両足を金属の輪で固定されているんだ。
自由に動かせるのなんて、首ぐらいなもんだろう。
ナナたんが喘ぐたびに、俺の股間も熱くたぎる。
だって、ナナたんだぞ?興奮しないわけにはいかないじゃないか。
あぁ……ナナたん。
ナナたんのアソコが、棒でくぱぁっと開かれて大写しになる。
ナナたんのアワビは鮮やかなピンク色で、濡れていた。
まるで俺に「来て……」と囁いているかのようだ。
っていうか、今、聞こえた。来てって言っているナナたんの声が!
ナナたん、俺が今君を楽にしてやるからな。
俺の、この巨大魚雷で!



あぁ、もう!
何を記録しているんですか、何を!
あ、途中からすみません、レンです。
キースさんと交代して、記録の続きを書いています。
えっと、キースさんが見たくないものをズボンから取り出したんで。
つい、ボカーンと頭を殴ってしまいました。勢いで。
んでキースさんが気絶しちゃったので、バトンタッチです。ハイ。
っていうか!
キースさんのことなんて、どうだっていいんです。
問題はナナですよ、ナナ!
この部屋、どうなっているの?本当に行き止まりなの?
壁や床を叩いても押しても、何の手応えもないし。
映像の中では、ずっとナナが虐められているし……
変な棒で体のあちこちを弄られているんです。
ナナは悲鳴をあげ続けていて、もう見てらんない。酷すぎる。
「隠し通路が何処かにあるのではないか?」
斬さんが、ひそひそとユン隊長に囁きかけてきました。
えぇ、だから、そう思ってさっきから探しているんですけど。
でも、どこにも怪しいデッパリや、それっぽい溝がない。
どうしよう、このままじゃナナが、ナナが殺されちゃう!
「大丈夫よ、落ち着いて。焦ったら何も見つからないわ」
パニックになる私の耳に、セツナ先生が囁いて。
あぁ、そうですよね……焦ったら、それこそ敵の思うつぼ。
セツナ先生は落ち着いている。
いえ、落ち着いているように見えます。さすが医者だなぁ。
感心する私の後ろで、小さくガコンと音がした。
「――見ろ」
ユン隊長が小さく囁き、床を指さしている。
床の一部がくぼんでいて、そこにスイッチが隠されていた。
私がパニックでオロオロしている間に、見つけちゃうなんて。
さすが私達の隊長です、すっごい!
隊長がスイッチを押すと、映像を映していた壁が動き出しました。
え、そこ?そこが出入り口だったの!?
でも、さっき押したり叩いた時は何の反応もなかったのに。
「な、何ィッ!?我が魔術の仕掛けを破っただと!」
映像を通した声じゃない、肉声が届いてきて。
私達の見ている前で完全に壁は開ききり、向こう側に部屋が現れました。
そう、ベッドに縛り付けられたナナも一緒に。
ナナの寝ているベッドを、ぐるりと白衣の男達が囲んでいます。
なんというか、超怪しい……怪しさを通り越して気持ち悪いです。
「ナナを返して貰おう!」
ずいっと隊長が一歩前に出て叫ぶと、白衣の一人が答えました。
「そうはいかぬ!この娘の魔力を全て放出させねば
 我らが神は満足せぬであろうッ」
「あなた達の神が満足しようがしまいが、知ったことですか!」
セツナ先生も怒鳴り、私も一緒に叫びました。
「変態!エロ神なんかにナナは渡さないんだから!」
私が叫んだ直後、白衣の人達は明らかに動揺したみたいです。
「へっ、変態……だと!?」「なんと愚かな……」
口々に呟き、私を怯えた目で見つめてきます。
何よ。変態を変態と呼んで、何が悪いっ!
この人達がナナにしてきたことって、イジメじゃないですか。
しかも性的で変態なイジメ。最低です。
「神が造りし空間の仕掛けを破るとは、さすがは異邦の民だ」
狼狽える白衣軍団の中、ローブの人だけは冷静だった。
でも、この人も変態ですよね。一緒になってナナを虐めていたんだから。
「ならば、仕上げも諸君らにやってもらおうか。
 魔力さえ放出させてしまえば、この娘に用はない。
 好きに引き取るがよい」
「勝手な事を言ってんじゃねぇ!」と、これはボブさん。
レピアさんも、その横で加勢してくれました。
「その子はあんたらのオモチャじゃないんだ、さっさと返しなッ」
でもローブの人は全然聞いていなくて、マイペースに話を続けています。
「そこの男!そう、青い髪の男よ、前に出よ」
ユン隊長を指さし、高らかに言い放ちました。
「お前が、この娘から魔力を放出させれば
 我らは、この娘を諸君達に返してやろうではないか」
首を傾げるユン隊長、の横をかすめて、何かがヒュッと飛んでいき。
えっ?と思っているうちに、飛んでいった何かがローブの男の目の前で
パァン!と軽い音を立てて砕けたみたいです。何だったんでしょう?今の。
「やめよ、レイザースの民」
ローブの人に言われ、「チェッ、やっぱ無理か」と誰かがぼやいたので
後ろを振り返ってみたら、ルクさんって人が頭をかいていました。
手に持っているのは短銃です。
あ、もしかして、その銃でローブの人を撃ったけど当たらなかったとか?
「我らに飛び道具は効かぬ……ここが幻廊の塔である以上」
「ゲンロウの塔?」
首を傾げてオウム返しに聞き返すジロさんへ、ローブの人が言い返します。
「そうだ。我らが神が造りし、幻の塔だ。
 ここでは如何なる攻撃も効かぬ。
 代わりに出来るのは我らの指示通りに動くことのみ」
ユン隊長がスイッチを動かしたのも、彼らの意思通りなんでしょうか。
私が不思議に思っていると、ローブの人がまたユン隊長を指さしました。
「だが……諸君らは違った。我らの思い通りには動かぬようだ。
 しかし、最後に微笑むのは我々だ。この娘が手元にある限り」
うぬぬ〜。悔しいけど、その通りかもしれない。
人質作戦だなんて、重ね重ね最低な奴らですね。
「それで……俺に、どうしろと?」
ユン隊長の問いに、ローブの人が勝ち誇って答えました。
「決まっている。魔力の放出だ」
「だから、それを具体的に言えってんだよ」
と、バージニアさんが横やりを入れてきます。
「具体的には何をすりゃあいいんだ?ユンは」
ローブの人はナナを見下ろし、ふっと鼻で笑いました。
そして再び隊長へ振り返ると、朗々と言い放ったのです。
「この娘を抱け。抱いて、オルガスムスを解放させよ」
「お、オルガ……?」
困った顔で隊長がセツナ先生を見ました。
たぶん、ローブの人の言うことが判らなかったんじゃないかと。
実を言うと私にも判りませんでした。オルガスムスって何?
セツナ先生を見てみると、先生は心なしか顔が赤いような?
「ここでやれってのかよ!?」
ボブさんが騒いでいます。
彼はオルガスムスが何だか判っているみたいですね。
なので、私はボブさんに尋ねてみました。
「あの……オルガスムスって何ですか?」
ボブさんは明らかに虚を突かれた顔で私を二度見し、
ぐびびっと喉を鳴らして唾を飲み込みました。
「そ、それを、お前さんが俺に尋ねるってェのか?」
「え、えぇ、まぁ……」
判らないことは他人に聞くのが一番ですから。
「快楽だよ、快楽」
ボブさんが答える前に、ルクさんが答えてくれました。
けど、快楽?これまた抽象的な表現ですね。
首を傾げる私の横で、レピアさんが注釈を入れてきました。
「あぁ、もう、鈍いったらないねぇ。はっきり言ってやろうか?
 セックスだよ、セックスしろって言われてんのサ。
 セックスして、あの子をイカせろ。そう言われてんだよ」

セッ

セッ

せっせっせっせーの、よいよいよい♪


いや、いやいやいやいや。
混乱している場合じゃないですね。
いや、でも指名されたのはユン隊長なわけで……
んでもって、相手はナナでしょ?
ナナをユン隊長が抱く、つまりセックスするって

え、え、えええええ・・・


えええええええええええええええええーーーーーっ!?

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