EXORCIST AGE

act20.  巫女の血、発動

携帯電話を切り、VOLTは思案する。
社長直々のコール内容とは、桜蘭学院の学長に関する質問であった。
親善大使のすり替えは、デヴィットの仕業で間違いない。
このことは学長に聞くまでもなく、また、今はこの場を離れるわけにはいかないと答え、学院へ社員を派遣してもらうよう要請した。
デヴィットが桜蘭学院を根城として活動する気だったのならば、学院で何か悪さをしていないとも限らない。
例えば悪魔が活動しやすくなる仕掛けを施す、など。奴なら、やりかねなかった。
以前GENやティーガからも、おかしな報告を受けている。
学内に気配の微弱な生徒が何人かおり、しかも彼らの存在は教師の記憶からは消されている。
悪魔に憑依されてしまったのかもしれない。
調査が必要なのは判っていたが宿舎を訪れる機会が得られず、そのままになっていた。
それを今、電話で頼んだのである。自分達の現在地についても報告した。
GENは今頃アーシュラと戦闘に入ったはずだ。
ティーガも彼と一緒に行っている。
悪魔がティーガを名指しで呼び出したのだ。
こなければ、人質――すなわち、同行している桜蘭学院の生徒に危害を及ぼすと。
ティーガにGENを同行させ、VOLTは、こちらに残った。
人質をデヴィットの魔手から守るために。

バーベキューが始まると、あとは皆、肉や魚を食べるので忙しい。
親善大使を囲む形でキャッキャとはしゃぐ少女の横では、火を絶やさんとばかりに団扇で扇ぐ少女もいる。
そんな中、倭月は浮かぬ顔で兄の姿を探していた。
「お兄ちゃん、どこ行っちゃったのかな……」
さっきから全然姿を見ないのは、兄だけではない。
保健室の先生、長谷部もだ。
まさか、二人っきりで秘密の行動を?
前から思っていたのだが、兄は長谷部先生と異常に仲が良すぎるんじゃなかろうか。
などと悶々考え込んでいると。背後から肩を叩かれた。
「あ……東野先生……」
東野は新学期、親善大使と一緒のタイミングで桜蘭学院へ来た新任教師だ。
何処へ行くにも何をするにも、サングラスと黒スーツのスタイルを崩さない。
何か特別な拘りでもあるのだろう。
「どうした?落ち着かないようだが」
「あ、あのっ。お兄ちゃん、見ませんでしたか?」
思いきって尋ねてみたが、返事をしたのは東野ではなくガルシアだった。
「津山くん?津山くんなら、さっき長谷部先生と山を登ってくるって出かけたよ」
え〜っ!?と声をあげたのは、倭月のみならず他の子達も同様で。
「何で、こんな時間に?しかも二人だけで?」
当然の疑問をくちにする子には、片目を瞑ってガルシアが笑った。
「健康のために歩いてくる、とは本人達の弁だけどね。本当のところは僕にも判らないな」
女の子達がキャーッと黄色い悲鳴をあげるのを横目に、こう締めくくる。
「二人の邪魔をしちゃ悪いしね。戻ってくるまで、ここで待っていよう。いいね?」
面と向かって聞かれては、倭月も渋々頷くしかない。
「は、はい……」
悪魔遣いとしても今、ティーガの義妹に山へ入られるのは好まざる展開なのであろう。
彼女たちは人質だ。万が一、アーシュラがティーガに遅れを取った時の。
だからデヴィットは残り、VOLTも残った。
――二人は大丈夫だろうか?
山を登る前、GENはVOLTに秘策があると言っていた。
しかし、アーシュラはベテラン数人がかりでも苦戦を免れない悪魔だ。
一体、どんな秘策を用いるつもりなのか?
山間から吹き下ろしてくる風にVOLTは、ぶるっと体を震わせた。
嫌な予感がする……


目の前で繰り広げられる戦いを、固唾をのんでティーガは見守る。
どちらの動きにも無駄がない。
寸前で互いの攻撃を見切り、最小限の動きでかわす。
気の弾が次々と放たれ、閃光が瞬く。
互いの弾が弾を打ち消しあっているのだ。
完全にかわしているように見えて、かわしきれない攻撃が何発かあるのか、時折両者の間でパッと鮮血があがる。
それでも双方一歩も後に退かないというのだから、圧倒される。
先の一撃で負傷した自分の出る幕などなく、ティーガに出来るのは先輩の勝利を祈るぐらいだ。
混ざりたくても混ざれなかった。
混ざれば当然アーシュラの攻撃は未熟なほうへ向かうことになろうし、そうなったらGENにも余計な負担をかけてしまう。
殴られた腹をさすり、ティーガは心の中で悪態をつく。
アーシュラの動きが見えない自分なんて、足手まとい以外の何者でもないじゃないか。
出がけ、よく一人だけで行くなどと言えたもんだ。
GENが同行してくれなかったら、とっくに三途の川を渡っていた。
GENが善戦しているのにも驚きだ。
山道を登る間、彼が浮かぬ顔をしていたのを思い出す。
いつもの余裕ありげな態度は微塵も見られず、アーシュラに勝つ自信がなさそうであった。
アーシュラが凶悪な悪魔でベテランでも手こずるという話なら、ティーガも耳にしている。
その一方で、GENの強さも間近で見てきたつもりだ。
もっと強そうに見える悪魔だって、GENさんは余裕で倒してきたじゃないか。
だから、今度だって。
悶々とするティーガの前でGENが激しく殴られ、よろめいた。
「GENさんッ!」
飛び出しそうになるティーガを抑えたのは、他ならぬGEN自身。
「平気だ、近寄るな!!」
と言われても口の端からは血が垂れているし、腕も太ももも悪魔の爪で切り裂かれて傷だらけだ。
額にも頬にも汗を浮かべて肩で激しく喘いでいる。
先ほどまでとは比較にならないほど、GENは疲労している。
相当無理して戦っているに違いない。
悔しい。何も出来ない自分が。
こんな自分のために、先輩を死にものぐるいで戦わせている現状が悔しくて堪らない。
大体巫女の血、巫女の血っていうけど、自分の血に、どれほどの価値があるというのか。
本当に悪魔を強くする効果なんて、あるのか?
耳にタコができるほど聞かされて育ったけど、本人は半信半疑だった。
肩越しにGENの口が動いたような気がして、ティーガはハッとなって耳を澄ます。
声は聞こえてこない。だから、唇の動きを読んだ。

「ラ ス ト ス パー ト を か け る。 こ れ で た お れ な け りゃ お ま え は に げ ろ」

「えっ!?」
読み間違えたのかとティーガは思わず大声をあげるが、GENは黙ってニッと口の端を釣り上げた。
読み間違えていないというのか。
本当に、次の攻撃で全てをかける気だ。
逃げろ、だって?冗談じゃない!
疲れ切った先輩を置いて一人だけ逃げるなんて、絶対に出来ない。
GENの体が光り出す。
今までとは比較にならないほどの霊気の弾が、まわりを囲んでいる。
ただならぬ気配にアーシュラも警戒しているのか、迂闊に飛び込んでこない。
じりじりと間合いを測っている。
――動いたのは、GENのほうが先だった。
野獣の咆吼をあげると同時に、一斉に霊気の弾が発射される。
当たる寸前で宙に飛んだアーシュラの後を弾が追いかけていき、『むっ!』と悪魔が霊気に気を取られて一瞬の隙が生まれた。
一瞬でも相手から目を離すのは、戦闘では命取りになる。
気配に気付いた時には目の前に風圧が迫っていて、防御する暇もなくアーシュラの頬をGENの拳が捉える。
宙に飛んでから落ちるまでの間、何発も拳を叩き込む。
この攻撃に全てをかけるつもりでいた。
勝てなくてもかまわない。
アーシュラにティーガを襲う体力さえ残らなければ。
片手だけでは足りず、両拳を交互に叩きつける。何度も何度も叩きつけた。
超至近距離の為、アーシュラも避けられないのか面白いぐらいに攻撃は当たり、奴のすましたツラが醜く歪んでゆく。
ぶちっと腕の神経の切れる嫌な音がGENの耳に届いたが、それでも彼は殴るのをやめなかった。
肘から先の感覚は、既にない。
腕をふるっているのか、それすらも自分では感覚がない。
まるで、脳と体が別々の生き物になってしまったようだ。
GENの腕は休むことを知らないかのように、拳を繰り出す。
神経が切れたというのに、不思議と痛みは感じない。
事前に飲んだ薬のおかげで、気分は最高にハイだ。
戦う前に飲んだモノ。あれは闇取引で手に入れたドーピング剤で、ポテンシャルを最大まで引き上げてくれる。
その代わり、反動は薬が切れた後にどっとくる。
体中の神経がズタズタにされて廃人化した者も多いという、言ってしまえば麻薬のようなシロモノである。
そんなものを悪魔対策で使おうってんだから、自分も相当イカれている。
――否。
そんなモノに頼らなくてはいけないほど、GENとアーシュラの実力には差があった。
それなりにベテランと呼ばれる年数は過ごしてきたが、まだ、姉に追いついたといえるほどの自信がない。
自信がないまま、戦いになった。
無理をしなければ、ティーガを無事に帰すこともかなわない。
地上へ落下する寸前、GENの両手がアーシュラの頭を抱え込む。
抵抗するアーシュラの爪に腕の肉を、ごっそり掻きむしられたが、GENの勢いは止まらない。
「うおあぁぁぁぁあああッッ!!」
全力で、奴の頭を地面に叩きつけた。
激しい衝撃で砂埃が辺り一面を覆い隠し、離れて見守るティーガにも二人の姿は見えなくなる。
「GENさんッ!」
叫んでも返事はなく、かといって飛び出そうにも砂埃が酷くて躊躇しているうちに人影を二つ視界に捉えたティーガは、確認せずに飛び出した。
「GENさんっ、GENさんでしょ!?」
吹きつける風が砂埃をさらってゆく。ティーガの顔に歓喜が浮かぶ。
「GENさん……!」
膝をつき、両手を大地につけてゼェゼェと息を荒くしているのはGEN。
その隣で、地面に顔面を突っ込んで倒れているのはアーシュラだ。
GENさんが、GENさんが勝ったんだ!
再び走り出そうとして、ティーガは足を止める。
もう動かないと思っていた悪魔が、ピクリ、と動いたのだ。
ゆっくりと起き上がった悪魔の双眸が、ぎらりとティーガにターゲットを定める。
『巫女の……血……ッ』
ティーガは射すくめられたように動けないでいる。
完全に気圧されている、目の前の悪魔に。
まだ奴に動く力が残っていたとは誤算だった。
GENにとっても、ティーガにとっても。
GENは立ち上がろうと両手に力を込めるが、込めた側から力が抜けていく。
駄目だ、体がいうことを聞いてくれない。
そうこうしている間にも、アーシュラは一歩、また一歩とティーガに近づいていく。
逃げろ!そう叫びたかったが、声が出ない。
喉にいがらっぽいものを感じて、二、三度GENは咽せた。
しかし、駄目だなんて言っている場合じゃない。
ティーガが、ティーガがやられてしまう!
『貴様を殺せば、我はあァァァッ!!』
アーシュラが一気に飛びかかり、臆したティーガは一歩も逃げられず――


目の前で真っ赤な大輪の花がぱぁっと開いて、飛び散った。


「……GENさん……?」
アーシュラと自分を挟む、その間に飛び込んできたのはGENで。
その背中からは、真っ赤に染まった腕が生えている。
悪魔の腕なのだとティーガの脳が理解する頃には、ずぼっと抜き取られ、GENの体が崩れ落ちる。
「GENさんッ、GENさん!?」
悪魔の手には何かが握られていたようであったが、それを確認するどころではない。
ティーガは慌ててGENを抱き上げる。
土手っ腹を中心に、GENの体には赤い染みが広がっていく。
抱き上げた時には、まだ彼には息があり、途切れ途切れに話しかけてきた。
「ティー、ガ……すま、ない。奴を、やり損ねた……」
「すまないって!それどころじゃないだろ!?なんで、こんな!」
「お、俺は、ずっと……空っぽ、だったんだ」
「えっ?何言って」
「姉さんが、ANIMAさんが死んでから、ずっと……でも、お前と会って、俺は、変わった……」
瞳からは、どんどん光が失われていく。
「ちょっと!これから死んじゃうみたいなこと、言わないでよ!!」
このまま放っておけば、GENは死んでしまう。
それくらいはティーガにだって判っている。
しかし悪魔が下山を許してくれるか、どうか。
横目で様子を伺うと、アーシュラは手で掴んだ何かを口に運んで、くちゃくちゃと食べていた。
それが何なのか見極めようとティーガは目を細めるが、月の光が奴の顔に影を落としてしまって見えづらい。
「てぃ、ティーガ」とGENがまた話し始めたので、ひとまず意識をそちらへ戻す。
「逃げろ、逃げて、くれ……」
ごぼっと赤いものを吐き出して、GENが目を閉じる。
「逃げるよ、逃げるけどッ!」
反射的に叫び返しながら、ティーガはシャツを脱ごうと藻掻いた。
傷は深いけどシャツで血止めすれば、もしかしたら助かるかもしれない。いや、助けるんだ!
「GENさんも一緒に逃げるんだ!そうじゃなくっちゃ、やだ!!」
「俺は、無理だ、よ……お荷物には、なりたく、ない。ティーガ……ここで、さよなら、だ……」
だらりと手が落ちて、GENが動かなくなる。
「う……そ……?ゲッ、GENさん!?GENさんッ!!」
何度揺さぶろうとも反応がない。
口元から流れ出た血が、地面にしたたり落ちる。
まさか、死んで……嫌だ、そんなの嫌だ!絶対に認めたくない。
『……不味い』
ペッと吐き出す音を耳にして、ティーガが顔をあげる。
悪魔が何を食べていて、そして何を吐き出したのかを悟った時――
全ての血が沸騰するんじゃないかと思うぐらいの怒りが、彼の体を満たした。
「うわあぁぁ━━━━━━━━ッッ!!!!」
理性も意識も何もかもが吹っ飛び、ティーガの口からは絶叫がほとばしる。
いや、ほとばしったのは絶叫だけではなかった。
『何ッ……!?』
彼の体を包み込む目映い光に、アーシュラも驚愕する。
ただの光ではない、霊気だ。
それもドーピングしたGENなど比にもならない、おびただしいほどの量の霊気だ。
ティーガの全身を包み込んだ光は、いまや怒濤の勢いで押し寄せてくる。アーシュラの元へも。
ようやく事態を察したアーシュラは『く、くそッ』と身を翻して逃げようとしたのだが。
悪魔は逃げ切れず光に飲み込まれ、周りの木々も光に包まれ、やがて山全体が白くぼうっと輝いた。


山頂の異変は麓にいる倭月達にも届いていて、「何あれ、山が光っている!」と大騒ぎになっていた。
「ねぇ、どうしよう先生!警察か消防署に連絡したほうがいいんじゃありませんか?」
生徒の一人に尋ねられ、VOLTは目線でデヴィットを促す。
「うむ、そうだな。今、山に入るのは危険だ。危険な仕事は警察か消防署にお任せするべきだと思うが、どうだろう」
「そ……そうだね」
上の空で生返事をし、デヴィットの喉がゴクリと鳴る。
あの異変を引き起こしたのは、きっと巫女の血を引くティーガの仕業に違いあるまい。
デヴィットもVOLTも、そう確信していた。
「とにかく、早く警察呼んで!」と皆に急かされ、デヴィットは携帯電話の番号を押す。
警察と話す傍ら、何度も遣い魔へ念を送ったがアーシュラの反応はない。
まさかと思うが負けたのか?巫女の血を守っていたエクソシストに。
遣い魔が敗北した時、倭月を人質に取るのは最初から考えていた計画である。
だが、アーシュラが全く応答しないのは気がかりだ。
負傷どころではなく、消滅させられてしまったのだろうか。
警察との遣り取りを終えても浮かぬ顔のデヴィットに、数人がけたたましく話しかけてきた。
「津山くんと長谷部先生って山へ登ったんですよね?大丈夫かなぁ、二人とも!」
「早く、探しに行かなきゃ!」
「それも含めて警察の皆さんにお任せしよう」と場を取り仕切ったのはVOLTで、女の子達は不安顔ながらも渋々従う。
デヴィットも然り、光る山を遠目に見つめて、やれやれと首を振った。
「バーベキューどころじゃなくなっちゃったな。僕達も早々に引き払った方が良さそうだ」
「でも、お兄ちゃんの安否がまだ判らないのに!」と異を唱える倭月には、VOLTが横から、そっと囁く。
「俺は捜索が終わるまで残ろうと思っているが……君は、どうするかね?残るなら先生と同行しよう」
倭月の反応たるや即答で、「残ります!」と叫ぶ彼女の肩に手をやり、VOLTも満足げに頷いた。
その時。
「動かないで!全員、両手を地面につけて地に伏せなさいッ」
草むらから、何者かが数名飛び出してきたかと思うと。
黒光りした銃口が、こちらに狙いを定めている。
「えっ?何?」と、状況の急展開に困惑する子供達へは鋭い叱咤が飛んできた。
「動くなと言ったでしょう!撃つわよ、本気で!!」
金髪の麗しい美女が銃を向けている――と判った一同は、たちまち恐慌に落ちかける。
だがしかし、パニックに陥って騒いだ誰かが撃たれるのを阻止したのは、一人全く動じていないデヴィットであった。
口元に嫌な笑みを浮かべ、心底軽蔑の眼差しを向けて、美女に問う。
「何しにきたんだ?バルロ、それにラングも一緒とはね」
「決まっておろう!巫女の血を頂きにきたッ」
茂みの中から答えが返ってきて、頭のはげ上がった黒衣の男が姿を現す。
「エイジに言われても、あんたが止めないだろうってのは予想していたわ。だから、こうやって取りに来てあげたのよ。感謝なさい?」
「銃口を向けて?ご苦労な事だね」
デヴィットはバルロッサとラングリットを交互に眺め、ふんっと鼻で笑い飛ばした。
「ガルシアさんの顔見知り……なの、かな?」
小さく囁く佐奈に、黙って倭月は首をふる。
何が何だか判らない、この展開。
大人しく見守っているほうが良さそうだ。
皆が地面にはいつくばる中、東野先生がジリジリ這っていくのを横目に見た倭月は内心慌てたが、銃が怖くて声が出ない。
あぁ、誰か。誰か、この窮地を早く救って……!


気付けば何もない場所に、裸で寝転がっていた。
あぁ、死ぬってのは、こういう感じなのか。
朧気に記憶を辿りながら、GENは身を起こす。
額に手をやると、バンダナも何処かへ消え去っている。
形見の品すら冥土へ持って行けないとは、不便なものだ。
死の直前の光景は、鮮明に覚えている。
アーシュラに狙われたティーガを助けるため、身を挺して庇ったのだ。
腹を貫通する腕の感触があり、次の瞬間には全身に激痛が走り、目の前が真っ暗になった。
しばらくして光が戻ると、涙と鼻水でグチャグチャなティーガの顔が映り、抱きかかえられる温もりを背に感じた。
再び目の前が真っ暗になるまでの間に、自分は、ちゃんと伝えられただろうか。
姉が死んで以降、ずっと胸に開いていた空洞を埋めてくれたのは、ティーガ、お前だ……って。
彼のお守り役兼教育係を仰せつかってから、常に一緒にいたけれど。
一日だって寂しさを感じる暇などなかった。
姉のあゆみが死んで以降、いや、もしかしたら生まれて初めて人生を『楽しい』と思えたのはティーガのおかげだったかもしれない。
それだけに、こんな酷い別れを経験させてしまったのは申し訳なく思う。
ティーガは、俺が死んで悲しんだだろうか。
いつまでも、忘れないでいてくれるだろうか?
考えても答えは出ない。
本人に尋ねることも、かなわない。
自分はもう、死んでしまったのだから。
前だか後ろだか判らない道を、とぼとぼとGENが進んでいくと、前方に白い、ぼんやりとした灯りが見えた。
駆け寄ってみると、そこに立っているのは懐かしい顔。
「……ANIMAさん」
GENの記憶にある、そのままの姿だ。
違うのは、姉が手にした花束ぐらいで。
花束には見覚えがある。
今の長期任務に入る前、自分が彼女の墓に供えたやつじゃないか。
姉の口が動く。
なんと言ったのか判らず、GENは聞き返した。
「えっ?」
悲しげに瞳を伏せて、もう一度、あゆみが何かを言う。
まだ、ここに来てはいけないわ――そう、口元が動いたように見えた。
驚いて姉に触ろうと一歩近づくと、目の前が不意に激しく輝いて、視界は白一色で覆われた。


一方、山の麓では、突然の悪魔遣い奇襲により帰るに帰れず膠着状態の倭月達がいた。
一刻も早く拓を捜したいのに、銃口を向けられていては動くこともできやしない。
でも、さっきガルシアさんが警察と捜索隊を呼んでいたから、彼らさえ到着すれば何とかなるはずだ。
問題は、東野先生が無茶をしそうで心配な点。
ジリジリと匍匐前進しているけど、相手は銃を持った二人組。
大人しくしていてと伝えたいが、金髪の女性が、ずっとコチラを睨みつけているので倭月は一言も発せない。
なんで、こんな事になっちゃったんだろう?
私達はただ、キャンプを楽しみたかっただけなのに。
巫女の血がどうたらと言っているけど、何の話?
ガルシアさんだけは、事情が判っているみたいだけど。
そのガルシアことデヴィットに、銃口を向けたラングリットが話しかけている。
「アーシュラが側におらんな。魔界にでも帰しておるのか」
「さぁね、気になるなら探してみたら?」と、デヴィットは余裕のポーズを崩さず肩をすくめた。
何でこんな事になっちゃったのかは、デヴィットが一番問い質したい。
手数は多い方がいいと思って誘ったのだが、こんな裏切りに遭うぐらいなら誘わなければよかった。
ラングリットは、どうせバルロッサに言い含められて、やっているんだろう。
こいつは自分で物事を考えるのが苦手なアホだからな。
バルロッサは……欲が出たのか?
なんとも彼女らしいというか、愚かな行動だ。
エイジには、彼らも会ったらしい。
だが会社のナンバーワンに帰郷しろと言われて、この二人が大人しく帰るタマではあるまい。
エイジもエイジだ。もう少し上手く説得してくれれば良かったのに。
例えば、色仕掛けとか。
エイジが色気をちらつかせれば、バルロッサなら一発で落ちる。
あぁ、でもエイジとバルロッサがつきあうなんて事態になったら、たまらない。そんなエイジは見たくもない。
もっとも、そういう真似の出来ない男だからこそ、気に入ったのだが……
アーシュラさえ側にいれば、この二人の連れている悪魔など敵ではない。
しかし、今は彼がいない。
気配すら感じられず、内心では焦りを覚えている。
だが自分が焦っていることを、この二人には知られたくない。
巫女の血が、どこにいるのかもだ。
「同行させていないなんて、馬鹿な真似をしたものね。今のアナタ、隙だらけじゃない」
フン、とバルロッサには鼻で笑われた。
「それで?僕を銃で脅せば、巫女の血が何処にいるかを聞き出せると思っているんじゃないだろうね」
デヴィットが強気に聞き返すと、銃の先端を額に押しつけられた。
「その通りよ。悪魔は銃で吹っ飛ばされても死なないけど、人間は脳をやられれば一発で即死ですもの。いつまで強がっていられるかしら?我が社のナンバー2さん」
「僕が答えると思っているんなら、おめでたいな。僕の性格をご存じないわけじゃないだろ?」
銃を押しつけられても平然と返すデヴィットに、バルロッサの片眉が跳ね上がる。
「どうしても答えたくないというなら、別に構わないのよ?あなたを、ここで片付けるだけだから」
「だが、僕を殺せば巫女の血の居場所は判らなくなるぞ」
じわりとデヴィットの脇の下に汗が滲む。
この女は、やると言ったら本当にやる。
助かるには素直に情報を渡すか、不意をついて銃を取り上げるか。
だとしたら、選ぶのは決まっている。
隙をついて銃を奪うしかない。
誰が、この二人なんかに情報をくれてやるもんか。
「あなたが死んだら、そこの子供達に聞くから問題ないわ」
ちらりとバルロッサに睨み付けられて、地に伏せた倭月はヒィッと身をすくめる。
聞かれたって答えられようもないのだが、そうすると銃で撃たれてしまうのか?嫌だ、まだ死にたくない。
目線を動かして、倭月は東野の様子を伺う。
前進するのをやめた先生も、襲撃犯の様子を伺っているようだ。
いや、ズボンのポケットに片手を突っ込んで何かを操作している。
何をしているのか知らないが、あの人達に気付かれたらお終いだ。
先生、お願いだから妙な真似をしないで――撃たれちゃう!
「そこの子供達は何も知らない。そこの、黒づくめなオッサンもね。だからといって、殺せば国際問題になっちまうぜ?」
にやりと口の端を歪めて、デヴィットが笑う。
とても親善大使らしからぬ態度に、VOLTは眉をひそめた。
悪魔遣いは、既に演技するのをやめたのか。
「じゃあ、この子達は何だと言うの?人質……かしら」
バルロッサの問いに、ラングリットとデヴィットの声が重なる。
「人質とは何の?」
「親善旅行だったんだ。君達が出てくる前までは」
その言葉で、ラングリットもバルロッサもデヴィットが東大陸へ入国するため入手した立場を思い出す。
彼は、どこぞの学園の親善大使として潜り込んだのだ。
ちょうど同じ時期に、渡るはずだった本物の親善大使を始末して。
目的は巫女の血探しだが、悪魔の餌を探すにも、うってつけの立場といえた。
「あなたが親善大使に見えたようじゃ、東の連中の眼力も大したことがないわね」
「なぁに。君達が来るまでは大人しくしていたからね。僕は皆の目には、好青年に映ったはずだよ。なぁ、護之宮さん?」
デヴィットに名指しで呼ばれ、ビクリと倭月が肩を震わせる。
親善大使は、本当の親善大使ではなかった。
じゃあ、この人は何者なの……?
ガルシアだったはずの人は、今やサワヤカスマイルなど捨て去って邪悪な微笑を浮かべている。
考えるよりも先に、声が出た。
「あなたは……一体?」
戸惑う倭月を鼻で笑うと、デヴィットは吐き捨てた。
「答えたところで、どうせ僕の名前など知らないだろ?君が知る必要もない。君と僕とでは、生きる世界が違いすぎるからな」
「生きる……世界?」
倭月から視線を逸らし、デヴィットが小さく呟く。
「生きるか死ぬか。僕の暮らす場所は、平穏に包まれて暮らしていた君とは最も縁遠い世界なのさ」
その声は、あまりにも小さくて倭月の耳には届かなかった。
「それぐらいにしておきなさい」と、バルロッサが話に割り込んでくる。
「時間稼ぎをするつもりなんだろうが、そうは問屋が卸さんぞ。デヴィット」
ラングリットは地に伏せたVOLTへ近づくと、銃の先で彼の頭を小突く。
「片手を表に出せ。何をするつもりか知らんが、大人しくしていろ。死ぬぞ」
地に伏せたまま、VOLTが答えた。
そろりとポケットから手を出して、握りしめていたものを奴らに見せつける。
「……時間稼ぎは充分に成った」
「何?」
「皮肉にも貴様達の同僚のおかげで、な」
「どういう意味――」
バルロッサの問いは、途中で頭上からの爆音にかき消される。
慌てて見上げると、空に浮かぶヘリが見えた。
「何よ、あれ!?救助隊が来るにしたって、早すぎるんじゃない?」
轟音に負けじと叫ぶバルロッサの横では、ラングリットが歯がみする。
「違う……あれは警察でも救助隊でもない!」
「じゃあ何だっていうのよ!?」
答えたのはラングリットでもデヴィットでもなく、VOLTだった。
「私の仲間だ。救難信号を受け取れば、五分で現場に到着する。優秀な仲間だよ」
彼が手に握りしめていたもの。
それは、小型の発信器であった。
非常事態が我が身に起きた時にスイッチを押せば、本社へ救難信号が届き、直ちに救援部隊が急行する。
『THE・EMPEROR』に所属するエクソシスト全員に配布される発信器だ。ティーガやGENも持っている。
「仲間ですって!?あんた、一体何者なの!」
バルロッサが銃先をデヴィットからVOLTへ移した一瞬、ほんの僅かな隙が生まれる。
無論その隙を見逃すデヴィットではなく、横合いからバルロッサの手を殴りつけて銃を叩き落とした。
「きゃあ!」と彼女が叫ぶのと、ラングリットがデヴィットへ銃を発射するのとでは、どちらが早かったのか。
いや、その前にVOLTが野獣のスピードでラングリットへ飛びかかり、豪快に背負い投げで銃ごと地面に叩きつけた。
「ふんッ!」
さらに追い打ち攻撃で腕ひしぎ。
VOLTに腕を決められて「ノー!ノー!ギブ、ギブッ」と叫ぶハゲ頭を、倭月が呆然と眺めていると。
頭上に影が差し、「大変だったね。立ち上がれる?」と気遣う声が降ってきた。
「あ……は、はい」
差し伸べられた手に掴まり、ようやく倭月は立ち上がる。
服が泥だらけだ。でも、もっと気になるのは山の中だ。
光は収まったみたいだけど、お兄ちゃんは、どうして、いつまで経っても下山してこないんだろう。
安堵して泣きじゃくる友達や救護部隊に介護される皆を背に、倭月は山を見つめて立ちつくした。


「ん……う、ん……」
月が眩しい。
ゆっくり瞼を開いて、しばらく空を眺めた後。
GENは小さく呟いた。
「あれ……?俺、死んだんじゃ……」
身を起こした途端、現世へ戻ってきた実感を噛みしめる暇もなくティーガには飛びつかれ、GENは勢いよく後頭部を地面に打ちつける。
「GENさん!GENさぁぁんッ!!」
「グハッ!!」
GENの目の中に無数の星がちらつくも、元凶のティーガは気付いているのかいないのか、ぐすぐすと鼻をすすって泣き言を漏らす。
「GENさん、俺、俺っ、GENさんが死んじゃうんじゃないかと思ったんだからね?もう嫌だよ、あんなの……」
正直もう一回黄泉に行くかと思うほどの激痛だったのだが、後頭部の痛みを堪えてGENは微笑んでやった。
「大丈夫、大丈夫だよ、ティーガ……お前を残して死んだりしないから」と言ってから、あれっと自分の体を見下ろした。
アーシュラの腕は、確かに自分の腹を貫通したはずだ。
その時の激痛も覚えている。
なのに今、自分の腹を見下ろしてみると開いたはずの穴がない。
綺麗サッパリ塞がっているではないか。
それだけじゃない。
ハッと気付いて辺りを見渡すも、あの悪魔、アーシュラの姿気配が何処にもない。
「ティーガ、アーシュラは?それに、俺の体……お前が治してくれたのか?」
そんな馬鹿な。
自分で言っておいて、GENは自ら否定する。
ティーガに治癒能力があるなんて、聞いたことがない。
ティーガ本人はキョトンとした顔でGENを見つめ、ふるふると首を真横に振った。
「うぅん?俺、何もしてないよ。神様が治してくれたんじゃない?」
それこそ、そんな馬鹿な話があるものか。
神様なんてものは、人間の創り出した空想の産物だ。
「アーシュラもねぇ、気がついたらいなくなっていたんだ。おかしいよね、俺達のトドメも刺さずにいなくなっちゃうなんて」
ティーガの言うとおりだ。何もかもがおかしい。
もしかして、ここでアーシュラと戦った事が全て夢だったのでは?
――と思いたい処だが、服についた大量の血と汗の匂いが、戦いが本当にあったと嫌でも思い出させてくれる。
穴が開いていたはずの箇所には、乾いた血がこびりついている。
そして服自体も、お腹と背中の部分には大きな穴が開いていた。
腹は、もう痛くも痒くもない。
不思議なものだ。意識を失う直前まで、ずっと痛かったはずなのに。
腹をさすっていたGENは、不意に「あ……」と思いつき。
「どうしたの?」と尋ねてくるティーガへ向き直る。
「もしかして、巫女の血のおかげじゃないか?俺の体が治ったのも、アーシュラがいなくなっちまったのも」
「巫女の血って、俺が母さんだった人から受け継いでいるっていう?」
そう言われても、ティーガ自身にもピンとこない。
自分を悪魔が狙っていると言われた時も、どうして自分が狙われなくてはいけないのか。全然実感がわかなかった。
悪魔にとっては重要でも、ちょっと優れた霊力の持ち主。
ティーガにとって巫女の血とは、その程度の存在だったのだ。
「きっとそうだよ!アーシュラは、お前の血が追い返したんだ!」
GENは無邪気に喜んでいる。
いつもマイペースな彼からは想像もつかないほど、大喜びだ。
……まぁ、いいか。こうしてGENも自分も無事だったのだし。
ついでに悪魔も追い返せたんなら任務も、めでたく完了だ。

下山した二人を待っていたのは、何もかもが片付けられた後の別荘で。
それでも待っていてくれた倭月とVOLTの説明により、何が起きたのか知って驚いた二人であった。

Epilog

そして時は流れ――一年後の春を迎える。


「倭月〜!ほら、早く早くっ」
ドタバタとティーガが階段を駆け下りる、忙しない足音。
続いて階段を駆け下りてくるのは、妹の倭月だ。
「ま、待ってよ〜!お兄ちゃんっ。まだ朝ごはん食べ終わってもいないのにィ」
「食べてる場合じゃないって!遅刻、遅刻ゥ!!」

ティーガと倭月の二人は今、『THE・EMPEROR』本社のある結界の中で一緒に暮らしている。
あの任務で倭月は全てを知り、そして一年後にはティーガの勤める『THE・EMPEROR』の社員となった。
つまり、今の彼女はエクソシストだ。
勧誘したのはVOLTである。
最初に知った時は勝手な事を、と憤ったティーガだが、驚愕の事実が彼を待ち受けていた。
なんと、倭月は見えるというのだ。霊や悪魔の存在が。
それだけじゃない。
あの任務以降、急激に霊力が成長を遂げている。
「どうして教えてくれなかったんだよ?悪魔が見えるって」
怒るティーガに、妹は言った。
「だって、笑われると思ったんだもん。お兄ちゃんには」
あの時も倭月にはアーシュラが見えていたというのかと問えば、それは否定された。
「あの時はまだ、見えなかったよ。ガルシア……うぅん、デヴィットさんも普通の人だと思っていた」
ガルシアに化けていたデヴィットは、救助部隊に連行されたとVOLTから聞いた。
尋問を受け、やがては西に強制送還されるのだ。共にいた悪魔遣いも同様に。
死刑にしたっていいのにとティーガが口を尖らせると、それは国際問題になるから……と、局長は言葉を濁らせた。
「じゃあ、いつ頃気付いたんだ?悪魔が見えているって」
「あの後……ぐらい、かな?皆には見えないものが、私にだけは見えているって。最初は見間違いかと思ったんだけど、東野先生に電話で相談したら、それは悪魔だって教えてもらったの」
いつの間に電話番号を教えあっていたんだ、あのオヤジめ。
それはともかく、局長が言うんなら間違いない。
きっと悪魔遣いや悪魔との接触で、倭月の体質に変化が起きたのだろう。
妹は新米エクソシストになり、教育係兼パートナーには兄のティーガが抜擢された。
ティーガの教育係だったGENは、お役御免となり、今はソロで活動している。
パートナーは相変わらず不在だが、本人曰くアテはあるそうだ。
誰を選ぶつもりなのか、ティーガの予想ではミズノあたりが本命ではないかと思うのだけど。
倭月のコードネームは『WATTUN』――本人の希望で、そうなった。
「わっつん?何それ、学生時代のアダナじゃん」
ティーガが突っ込むと、倭月は照れくさそうに微笑んだ。
「卒業しないで学校辞めちゃったから。想い出だよ、友達との」
そう、彼女は学校を辞めた。
辞めて、すぐに結界の中へと引っ越した。
よく両親が許したものだとティーガが妙な感心をしていると、社長には突っ込まれた。
「護之宮家は我が社のスポンサーだからね。娘が社員になると知ったら快く送り出してくれたよ」
「えぇっ!?何それ、初耳なんすけど!」
驚くティーガへ意味ありな視線を向けて、社長は軽く肩をすくめる。
「もしかして、倭月ちゃんに霊力があるのも意外だと思っている?まさか護之宮家が名士ゆえにDNAを提供して貰ったんだと勘違いしているんじゃないだろうね。霊力のない人間のDNAを貰ってくるほど、私はボケちゃいないつもりなんだけど」
最強の巫女の血に霊力の高い人間の血を混ぜる。
そうして君は生まれたのだ、最強のエクソシストを生み出すために。
と、今更ながらに自分の出生の秘密を教えられて。
目をパチクリさせたティーガであった……

「いってきま〜す!」
誰も残っていない家に挨拶して、倭月とティーガの二人が飛び出していく。
まだまだエクソシストとしては頼りないティーガだが、倭月は全面的に信頼している。
先輩として、兄として。
これから先、何が待ち受けているのかは判らない。
でも、きっと大丈夫だ。だって、お兄ちゃんと一緒なんだから。
学校では、ほとんど一緒にいられなかったけれど。
これからは、邪魔な存在など一つもない。二人っきりだ、仕事も生活も。
これからも、ずっとずっと一緒にやっていけたらいい。
そんな事を考えながら、慌てて発車時間ぎりぎりの列車に飛び乗った。

END