10.白と、黒と
飛び入り参加の笹川を加え、ダグー達は夜の見回りに繰り出す。今夜は、ただ巡回するだけじゃない。
キエラかクローカーの発見以外にも、やっておきたいことがあった。
「あぁ、そうだ」と教室の扉を開いたダグーが振り返る。
「俺のことは蔵田と呼んでくれませんか」
「蔵田ぁ?」
怪訝に眉をぴくりとあげて聞き返す笹川へ頷くと、ダグーは彼にも見えるように名札を引っ張り上げた。
「ここでは、蔵田剛志と名乗っているんです」
直後の笹川の反応は奇妙で、ダグーはおや?となる。
笹川は口をへの字に曲げ、小さく呟いたのだ。
「蔵田、剛志か……その名前をココで聞くたぁ」
「ご存じなんですか?」と聞き返すダグーへ、笹川も質問で返す。
「命名は、犬神くん?」
「えぇ、そうですけど」
「やっぱりねぇ」と頷き、ダグーの視線に気づいたか、笹川は、ひらひらと手を振って微笑んだ。
「あ、気にしなくていいよ。昔、知っていた人と同じ名前だなっと思っただけだから」
要するに蔵田とは、犬神と笹川、双方に共通する知人の名前か。
それにしても、二人に共通の知人がいたとは驚きだ。
犬神が笹川を快く思っているようには、到底見えなかったのだが……
一体いつ頃から、二人は知りあいだったのだろう。
だが、あっさり流したところを見るに、聞いても無駄だ。
なんとなくモヤモヤしたものを抱きながら、ダグーは三年の教室へ入る。
いつもはざっと見て次へ行くが、今夜は違う。
お目当ての席まで歩いていくと、ダグーは懐から手紙を取り出した。
「あらあら、何それ?どなたに渡すのかな?ヌフフ」
めざとく見つけて絡んでくる笹川へは、ウィンクで答えた。
「ラブレターを、ちょっとね」
「ほほぅ!JKに恋文を!It's Love Letter」
何やら背後で笹川が騒いでいるが、それは、ひとまず置いといて、真宮愛理の机の中へ先ほどの手紙を忍ばせる。
手紙は昨日、大急ぎで作成したものだ。
真宮へ向けた愛の囁きが、これでもかというぐらい書き並べてあった。
差出人は蔵田でも雪島でもなく、龍騎になっている。
淀塚龍騎が真宮愛理へ当てたラブレター――という設定だ。
裏ではイジメっ子のリーダーだが、表では龍騎は学園のアイドルである。
そのアイドルにしてイケメン主将から手紙をもらったとなれば、剣道部マネージャーとしても無視できまい。
手紙には、愛の囁きと共に中庭への呼び出しも書かれていた。
手書きにするかどうか迷ったものの、結局パソコンで作成した。
もしかしたら、悪戯かと疑われるかもしれない。
だがラブレターなら、おいそれと友達には相談すまい。
ましてや本人に確認したりなど、怖くてできないはずだ。
何が怖いって、そりゃあ勿論、龍騎の取り巻きの視線が……だ。
ダグーは二通目を取りだし、雪島の机に放り込む。
手紙の内容は、ほぼ同じだ。
ただし、こちらは愛理が雪島へ書いた手紙になっている。
雪島の片想いは愛理には伝わっていないと、もっぱらの評判だ。
下校途中の女子達が声を揃えて言うのだから、まず間違いない。
愛理が鈍感なのか、それとも雪島が恋に奥手なのかはさておき、こちらも本人に直接確認はしないだろう、という確信があった。
「俺が、この席の子と交際したいんじゃないですよ。片想い同士のキューピッドになってやろうと思ってね」
心にもない嘘をつくと、ダグーは、さっさと教室を出る。
「あぁん、待ってちょーだい。暗いの怖いの〜」
ふらつく足取りでやってきた笹川が、ダグーの右手をぎゅっと握った。
彼の手は汗で湿っていて生暖かく、気持ち悪い。
本当に暗所恐怖症なのか。
それで、よく夜の見回りに参加しようなどと思ったものだ。
「どうして俺達に協力する気になったんです?」
ダグーの問いに、笹川が顔をあげる。
怖がっていたはずの目から恐怖は消え、真顔に戻っていた。
「協力ってのは、ちょっと違うな。この場合は共同作戦、そう呼んだ方がいい」
あぁ、それと、と付け加えた。
「クローカー達の狙いは判っているよな?トーゼン」
「え、まぁ」
唐突な話題転換に戸惑いつつも、ダグーは頷いた。
「確か……魔力を集めるんでしたっけ」
「そう。彼らは何かの目的で、魔力のある人間を捜している。君も気をつけたまえ」
「俺が?」
突拍子もない発言に、ダグーの目が点になる。
「俺には、魔力なんてありませんよ?」
苦笑したが、笹川は大真面目な顔で首を真横に振った。
「多少の個人差はあるが、皆、微量の魔力を持っている。それに、君は他の奴らとは違う。君は――」
言い終える前に、ガラスの割れる激しい音が廊下に響く。
「なっ、なんだ!?」
慌てるダグーの横を駆け抜け、笹川が叫んだ。
「出たぞ!追えッ」
「お、追えって何を」
「決まっているだろ!奴らだ、闇の眷属だ!!」
懐中電灯もなしに、真っ暗な廊下を走っていく。
暗いところは苦手なんじゃなかったのか?
と、悠長に突っ込んでいたら、置いていかれそうだ。
暗がりに消えゆく背中を追いかけ、ダグーも走り出す。
一方、その頃の犬神は、大原と共に中央校舎を回っていた。
「お前さんらは、ダグーって呼んどるんかい」
「――え?」
不意に話しかけられ、犬神は我に返る。
少々、考え事をしていた。
笹川修一の件だ。
彼の噂は、上京したての頃から聞き及んでいた。
新宿界隈において、笹川は有名人であった。
無論、表立ってではない。裏社会での有名人だ。
政治家や特殊部隊にも顔が利き、幅広いコネを持つ。
その彼が何故、学園への潜入など請け負ったのか。
目的は自分達と同じだと言う。
恐らくは、クローカーとキエラの討伐ないし捕縛が目的だろう。
それはいい。
だが、笹川には良くない噂もまとわりついている。
いかなる手段を用いても、任務を遂行する男らしい。
その為には、仲間の犠牲も厭わないとか。
あまり仲間に加えたくないタイプだ。
それに、彼のクライアントも気になる。
何故、あの学園に闇が潜んでいると踏んだのか。
或いは自分達が考えているよりも、大事になっているのかもしれない。
彼らの――魔族の存在は。
「だから蔵田の事を、笹川って奴がダグーと呼んどったろ?いつもは皆、ダグーと呼んでいるんかなっと」
「あぁ、はい。そうですね」
犬神は頷いた。
「そう呼んでいます。本人の希望で」
「で、どういう意味なんだ?ダグーってのは」
「知りません」
さらりと受け流し、付け加えた。
「本人が、そう呼んで欲しいって最初に言ったんですよ。でも、意味は知りません。聞かなかったものですから」
嘘ではない。
初対面の頃、彼はダグーと名乗り、気楽に呼び捨ててくれと言った。
ファミリーネームは知らない。
名前の意味も、言われてみれば聞いた覚えがなかった。
「ふぅん」
判ったような、判らないような顔をして、大原が首を傾げる。
「あだ名か何かかねぇ」
「多分、そうでしょう」
適当に相づちを打っておき、それよりもと犬神は話題を変えた。
「大原さんは、これまでに一度も見なかったのですか?」
「うん?何をだ」
「クローカーやキエラを、です」
「あぁ。俺は見ていないんだが、前の奴が」
辞めた警備員の目撃証言を、大原は犬神にも話す。
犬神は、しばし考える素振りを見せ、やがて口を開いた。
「その方は、今どちらに?」
「さぁなぁ。会社を辞めた後の話は、とんと聞かんよ」
「そうですか……」
その男の口から話が漏れて、笹川へ依頼が回ったのかもしれない。
そう考えてみて、突拍子のなさに犬神は自分でも呆れる。
ありえない。
一介の元警備員が、裏の大物と結びつくなど非現実的だ。
緩く首を振って馬鹿げた推理を脳裏から追い出すと、犬神は懐中電灯で校舎を照らす。
「この校舎……だいぶ古いようですが、築何年なのですか?」
どこか誇らしげに、大原が答えた。
「ん、あぁ、何年に建てられたのかまでは知らん。だが、今年で創設七十年を迎えるってのは学長から聞いたぞ」
「七十年ですか、道理で」
あちこちに年季を感じるのは、そのせいか。
壁には漆喰が塗り重ねられており、修理した跡が伺える。
綺麗に塗り直されていても、建物の古さは隠せない。
これだけ古ければ、何が出てもおかしくない。
「この学園に七不思議といった怪談は、ありますか?」
大真面目に質問する犬神へ「そんなのは判らん」と、大原は笑った。
「俺達の仕事は見回りだ、学園の不思議を集める仕事じゃない。ま、学生諸君なら何か知っているかもしれんがな」
やはり学内の情報は、学生に尋ねるのが一番か。
とはいえ、最後の質問は犬神の好奇心でしかない。
ダグーの仕事を、これ以上増やすのは迷惑だろう。
「お前さん、もしかして信じているのか?」
「えっ?」
再び自分の考えに没頭していた犬神が顔をあげると、興味津々覗き込んでくる大原と目があった。
「七不思議だの、怪奇現象だのってのをだ」
「えぇ、まぁ」
にっこり微笑んで頷くと、犬神は視線を暗がりへ向ける。
「僕は昔から、そういうのに囲まれて暮らしていたもので」
「ま、どこにでもおるわいな。オカルト大好きな人種ってのは」
犬神の言葉をどう受け取ったのか、大原も笑った。
「さて、おしゃべりも楽しいが仕事も真面目にやらんとな」
「はい」
雑談は終了だ。
止まりかけていた足を動かし、見回りを再開した。
「さ、笹川さん……どこですか?」
階段を上った先で背中を見失い、ダグーは焦りを覚える。
馬鹿な。この狭い一本道で笹川を見失うなど。
教室の電気は、全て消えている。
腕時計を見ると、夜の九時。保健医も帰った時刻だ。
ならば大声を出したところで、誰にも聞きとがめられまい。
「笹川さん、返事をして下さいッ!笹川さん!」
懐中電灯をぐるりと回すと、廊下の先に人影を発見する。
「笹川さん、そこにいたんですか?賊は……」
ホッとして駆け寄ると人影も近寄ってきて、その髪の毛が黒ではなく白だと気づき、ダグーは足を止めた。
「だ……誰だっ!?」
鮮やかな白い髪の毛。だが、老人ではない。
若い男だ。
背丈は自分より、少し低いぐらいか。
黒いTシャツを着ていて、下はジーンズ。
スマートな体格だ。二の腕は犬神と、どっこいどっこいか。
やや吊り目の瞳が、ダグーを興味深げに見つめている。
「誰だって聞きたいのは、こっちだっての。何?お前も、さっき追ってきた奴の仲間?にしちゃあブルブル震えて、頼りないったらねぇな」
男は全く警戒の色を見せず、ずんずん近づいてくる。
汗ばむ手で懐中電灯を握りしめ、ダグーは叫んだ。
「こ、これは武者震いだ!!それより、笹川さんをどうした!?」
「あー、ちょっと時空の狭間に閉じこめといた。安心しろよ、死んじゃいねぇから」
と言って笑った男が、突然ぎゅびっと生唾を飲み込む。
そのままジロジロ眺め回してくるもんだから、ダグーも落ち着かない。
「時空の狭間って、何――」
質問を言い終える前に青年が一気に間合いをつめてきて、身構える暇もなくダグーは壁際に押しつけられる。
「やっべ、カワイー。ものすんげぇ、好み」
何かをするかと思いきや、白髪の青年がぎゅっとダグーを抱きしめる。
これにはダグーも吃驚仰天、慌ててドーンと相手を突き飛ばした。
「なっ、な、何をするんだ!」
慌てふためくダグーの前で、青年がゆっくりと立ち上がる。
赤い両目はギラギラと欲求に満ち、頬を上気させていた。
どう見ても、まともじゃない。
「そんな嫌がんないでよ。ビビッと来たんだよ、胸にも股間にも。こーゆーのって一目惚れっていうんだろ?人間の世界じゃ」
言っている事も、まともじゃない。
さっきから全く話の通じない相手に、ダグーの恐怖は増すばかり。
一体、笹川は何処へ消えてしまったんだろう。
何の為に、二人一組で行動していると思っているんだ!
不意に『神隠し』――という言葉が、ダグーの脳裏に浮かぶ。
目の前の奴が言った『時空の狭間』が、もし、それだとしたら?
笹川は、神隠しに遭ってしまったのか。
「な、俺のモノになんなよ。つらい思いはさせないからサ」
そう言って、また抱きついてこようとする。
容赦なく突き飛ばしてから、ようやくダグーにも相手が誰なのかピンときた。
そうだ、こいつは御堂の言っていたキエラってやつじゃないか?
白髪の若い男なんて、そうそう遭遇するもんじゃない。
「あ〜も〜、精一杯の抵抗しちゃって!カワイイッ」
突き飛ばされて喜んでいる変態に、ダグーは話しかけた。
「君は、もしかしてキエラなのか……?」
「ん?」
青年は一瞬怪訝な顔を見せるも、すぐさま笑顔に戻り、頷いた。
「なんだ、俺の名前知ってんのかよ?あー、てことはクローカーが会った警備員って、お前だったのか!やー、これはラッキー」
何が嬉しいのか両手を揉みこする相手に、ダグーが尋ねる。
「ラッキーって何が?」
「そりゃ〜、茶髪のほうは俺の好みじゃねぇからな」
不意を突かれ、再びキエラには抱きつかれた。
「離してくれ、苦しいっ!」
じたばた藻掻いても、今度は駄目だ。
がっちりホールドされていて、振りほどけそうにない。
「あー、イイ匂い……ムラムラする。なーキスしていい?すっげぇキスしたいんだけど」
涎を垂らさんばかりの勢いで、キエラが愛を囁いてくる。
ぞわっと己の背中が総毛立つのを、ダグーは感じた。
「なんでムラムラしているんだ!?おかしいだろ、状況として!」
言い合いの間にも力の限り押しているのだが、びくともしない。
細身に見えて、なんて馬鹿力だ。
いや、ランカ曰くキエラは魔族だそうだから、人間の常識で彼らを測っては、いけないのだ。
「だから、言ってんじゃん。ヒトメボレだって」
そう言ってキエラはダグーの首筋を、くんかくんか嗅いでくる。
男同士かどうかなんて、彼にとっては大した問題ではないらしい。
いわゆる、種族間の違いってやつなのかも。
だが、それはそれ。これは、これ。
異種間愛以前に奴は不法侵入者、学園に害をなす輩である。
「ん〜……」
唇を寄せてくる相手の足を、ダグーは思いきり踏みつけた。
「いい加減に、しろ!!」
「ぐげッ!?」
さすがに、これは効いたのか。
ピョンと飛びはね、キエラが一歩下がる。
同時に懐中電灯の輪が二人を照らし、笹川の叫びが木霊した。
「ひとぉつ!嫌がる相手に無理矢理キスを迫る奴!ふたぁつ!二人の世界を築き上げ、俺を空気と化させる奴!みぃっつ!めんどくさいので省略ッ。セクハラ魔族は、この俺が退治してくれよう、あ、桃太郎〜侍ッ」
誰が桃太郎侍だ、誰が。
「チッ、もう復活しやがったのか」
笹川には憎々しげな表情を向け、キエラが吐き捨てた。
「さては、テメェも普通の人間じゃねーな?」
「貴様に教える義理は、あ、なぁ〜い!」
笹川は開け放った窓の桟の上に立ち、歌舞伎のポーズをキメている。
「あの……危ないですよ?」
落ちるんじゃないかとヒヤヒヤしながらダグーは一応忠告したのだが、笹川は全然聞いておらず、ビシッとキエラに指を突きつける。
「尋常に、あ、お縄につけぇ〜ぃ!貴様を捕縛する、とぅっ!」
言うが早いか勢いよく飛んで、キエラの背後へ降り立った。
「捕縛だぁ?人間が俺を捕まえようってのかよ」
キエラが不敵な笑みを浮かべ、身構える。
「そうだとも。そのために、俺はココへ来たんだ」
むすりと口をへの字に曲げ、笹川も胸の前で印を組んだ。
ダグーも、笹川に負けじとキエラを怒鳴りつけた。
「観念しろ!君にはもう、逃げ場がないぞ」
「ん〜、どうしても俺を捕まえたいってんなら、そっちのカレがキスさせてくれれば、考えない事もないけど……」
バチーンとキエラにウィンクされて、笹川とダグーの声が一つに重なる。
「ふざけるな!」
「駄目よ、キスは恋人になってから!」
言っている事は二人とも、全く違ったけれど。
「余裕こいていられるのも、今のうちなんだからね!誤解しないでよねっ!」
何故かツンデレ口調で怒鳴った後、笹川が素早く印を切る。
しかし、それにもましてキエラの行動は迅速であった。
「結界かよ!だが、俺は捕まるわけにゃあいかねぇのさッ」
粉々に飛び散る窓ガラスに「わぁっ」とダグーは身をかがめる。
チッと短く舌打ちをして、笹川が窓の側に駆け寄った。
笹川の印が完成するよりも早く、キエラが窓を突き破って逃走したのだ。
「逃げ足の速い……つか、戦わねぇのかよ。あいつ」
ブツブツ呟く笹川へ、ダグーが安堵の表情で近づいた。
「笹川さん、ご無事で何よりです。あいつの話だと次元の狭間に閉じこめられたそうじゃないですか」
「ん?あぁ」
手をひらひらさせて、何でもない事のように笹川が応える。
「あんなの、抜け出すのは簡単だし。でも、閉じこめられたのが俺で良かったよ。お前だったら、助け出すのに手こずっただろうしな」
「あの」
ついでに聞いてみる事にした。
「次元の狭間って……なんですか?」
「んあ?次元の狭間は次元の狭間だよ」
要領を得ない返事がきた。
困惑するダグーの肩に、笹川がポンと手を置く。
「知らない方が幸せになれる物もあるんだぜ、世の中には。今のは、そういう系の話題だ」
誤魔化されてしまった。
だが、たとえ説明されたとしても理解できないのではないか?
ダグー本人にも、その予感はあった。
「……またガラス、割られちゃいましたね」
話題を変えたダグーに、笹川も併せてくる。
「またって、逃げられたのは二度目かいな。なんで、あいつ戦わないんだろうな?戦って勝てない相手でもないだろうに、俺以外は」
そんなのは、ダグーの知った事ではない。
だが、こうも逃げられてばかりじゃ話にならない。
逃がさない為の対策を講じる必要がある。
「次は罠を張ってみるか……」
ぼそりと呟く笹川の独り言を耳にして、ダグーもまた、皆と相談して罠をかけることに決めたのである。