あの野郎、逃げ足の早い……どこ行きやがった?
よぅ 一人で乗り込んでくるたぁ意外だったぜ
お前さんは、もっと冷静な奴かと思っていたんだが
レキ!!
その様子だと、俺様の演説は聴いちゃいなかったみたいだが……
演説?
立派なもんだったぜ お前にゃ聞いて欲しかったんだがなァ
自画自賛してんじゃねーよ で、何を言ったんだ?
なに、大したことじゃない
バルサウェイがツェッペリンから独立して武装国家になると宣言したまでだ
武装国家……!?
ま、そのために親父殿と国王にゃちょっとばかり痛い目を見て貰ったけどよ!
後世になりゃ〜俺様の判断が正しかったと草葉の陰で涙してくれるだろうぜ!
お前、まさか……殺っちまったのか!?親父さんと国王をッ
そうだ
親殺しかよ……堕ちたもんだな、レキ
そうか?オーツォメンに装置で支配されるよかぁマシな選択だと思うがな
で、お次はお前らの番ってわけだ
オーツォメンと敵対するんなら俺とお前らは仲間じゃねぇのか?
バルサウェイがオーツォメンを倒すっつー正義の花道にお前らの存在は邪魔なんだよ
ま、口封じってやつだ だがギア、お前は見逃してやってもいい
お前とサイラックスは利用価値があるからな これが最後だ……俺様の元に来いよ、ギア
断る!!
おいおい、血の気の多い奴だなぁ
だが……悪くない 俺様自ら相手してやるから、かかってきな!
ギア!焦ってはいけませんっ
今、我々もそちらへ向かいますから……
伏兵っ!?
当然だろ?ここは俺様のホームエリアなんだからよ
突破します!今の我々になら不可能ではありません
そりゃ〜どやろね
あんさんらがパワーアップしたようにウチらかてパワーアップしとるんやで
実力互角とちゃいまっか?ほなー最終戦いきまっせぇ!
これがやつらとの最後の戦いだ 絶対にやられるなよ
言われるまでもねぇって♪
完膚無きまでに叩き潰してやらぁ!
しかしサイラックスはん あんたも役者やねぇ……
ウチもついつい騙されるとこやったわ
人工バイノアを反乱させるだけでなく、あないな事まで企んでいようとはねぇ
……何の話かね?
ホントに何の話だよ!おいサイラックス、お前まさか!?
あれ〜知らなかったんかぁ そら悪いこと言ってもうたなぁ
そこにおわすサイラックスはんはオーソリアンを乗っ取って自分が世界の王になる気でっせ
ぬわにぃ〜っ!?
……違うな 世界の王となるのは私ではない
ギア=エートウヴェこそが真の王だ
どっちだって関係ねぇ!
俺は一つの国家が制圧する平和を望んでるわけじゃねーんだ!
勝手に話を自分の良いように持ってくんじゃねぇぞ、二人とも!
サイラックス……どういうつもりだ 俺達を騙していたのか?
黙っていたのは悪かった だが騙していたわけでもない
私の目的は最初からオーソリアンの王位をギアに継がせる事にあった……
今のまま戦いを終わらせても、それは無意味だ やがてまた同規模の戦が始まり……ヒトが死ぬ
誰かが世界そのものを作り替えなければならんのだ
だからといって何故ギアを?ギアでなければいけないのか
それに……機械でヒトを支配するような国が世界を率先していくのは危険思想だ
本来ならばノンポリのような非戦闘国家が先陣に立つべきじゃないのか?
ホンマやで
武器を所持しとるツェッペルやオーソリアンが頂点に立つっちゅーのは支配に他ならないんや
おいおいおい お前さん、ここに来て交渉決裂かよ?
ウチは最初から援護っちゅう契約であんさんに力を貸しとるだけや
仲間になった覚えはないで
せやけど、ウチと離れて困るんはあんさんのほうと違いますの?
劣勢になった時、復活させられるんは、ウチだけやで?
この野郎……
さ、動揺しとるとこ悪いんやけど 戦闘再開といきまっかぁ
ちょ、ちょっと待てぇ!タンマだタンマ!
待ったなし!ほないきまっせぇ〜
結構ねばりまんなぁ
お互い様だろう
再生技術のおかげで、こちらとしても攻めにくくてかなわんよ
ふふん 自分で開発した装置を使われるのはご立腹のようやねぇ
せやけどウチらの奥の手はこれだけと違いまっせぇ
自ら奥の手をバラすと?大した余裕だ
そや、超余裕や!
あんさんの研究成果を存分に試せるんやからな
てめぇ……ッ!まさか、てめぇらも意識増幅装置をッ!?
なんだっけ、それ
おい!
使いこなせる力量はあるのかね?装置だけでは何の役にも立たんよ
そいつぁお言葉だね 悪いが俺様には使いこなせる自信がある
まぁ、そいつを使うのはとっておきの必殺技として最後の最後まで取っておくがな!
それは好都合だ
サイラックスさん……
ここを切り抜けたら、次はオーソリアンが相手です……よね
母国に攻め入るのは抵抗があるか?
だが我々は一滴の血も流さずに勝利する
えっ?
私とてオーソリアン人だ 母国の民を殺すのは忍びない
奥の手があるのだ、安心して見ていてくれ
それを聞いて、少し、安心しました
だが、この手は私が一回……そしてギアに至っては実戦が初の試みとなる
使いどころを見誤らぬようにせねば
ねぇ翔 あんた、この戦争が終わった後のこと考えてある?
うん 一応は
まず父さん達のところへ帰って……学者になろうと思う
あんたらしい平凡な選択ね おじさんの跡でも継ぐ気なの?
うん……それもあるけど ラキアは?
あたし?あたしは傭兵と占い師続けながら世界中を旅しようと思ってる
まだ全部の世界を見終えてないもんね!
早く平和になるといいよね
何たそがれちゃってんのよ
なるといいよね、じゃなくて平和にするのよ、あたし達の手で
……うん
彼は……どうするつもりなんだろう
この戦いが終わったら、やはりオーソリアンに攻め込む気なのか?
……お前が考えていることは判る
安心しろよ、俺が倒すのは現国王一人だけだ
えっ!? 何、いきなり通信……?
え、えっと僕を心配してくれたのかな……ぼ、僕は大丈夫 大丈夫だよ……うん
そうか? あんまムリすんじゃねぇぞ
う、うん
ごめんね、心配させちゃったみたいで……
あんたむかつく〜!
い、いきなり何!?
なんであんたが心配されて、あたしのことは心配してくれないわけ!?
あたしだってオーソリアン人なのに!
あ……そうだよね ラキアもやっぱりおじさん達のこと……
そんなのどうだっていいわよ!
も〜ッ、ギアの馬鹿!鈍感!とーへんぼくぅぅっ
どうだってよくないだろ
でもこれってもしかして、愛情の裏返し?
うふふ〜、恥ずかしがり屋さんなんだからぁ☆
いや、あの、ラキア……?
よ〜し、張り切って全滅させるわよ!
そして戦いが終わった後には……うっふっふっ
こ、怖いよぅ
…………フェン 聞きたいことがある
あ、はい 何でしょうか?
気が早いかもしれんが……この戦いが終わったらお前はどうする?
え?そう……ですね 母さんは死んでしまったし……
父さ……マスターについていって研究のお手伝いをしようと思っています
……そうか
あの、ゼインさんは?やっぱり故郷に戻られるんですか
いや ソレイアに戻る気はない
えっ じゃあ、どこへ……?
…………
聞いちゃいけないことだったんだろうか
大丈夫でしたか?ギアさん
お前に心配されるほど、やられちゃいねぇよ
す、すみません……でも父さん……
いえ、マスターがあなたのことをとても心配していたものだから
俺を王座につかせたいらしいからな、心配するのも当然だろ
そんな……マスターはヒトとしてあなたを心配してるんです
一番可愛がって育ててきたあなただから……あなたはマスターに一番愛されていて……
羨ましいのか?俺が
……はい
父さんを独り占めできるなんて……うらやましいです
いっとくがな、あいつにつきまとわれてもいいことなんか何もねぇぞ
鬱陶しいだけだ
そんなにサイクが好きなら、この戦いが終わった後、お前にくれてやるよ
ほ……ほんとですか!?
本気で喜んでやがるよ、コイツ
……まぁ、とにかく 生き残るつもりで戦えよ
絶対に落とされんじゃねーぞ
はいっ!
あ、あの マスター……?
うるさいッ!
無駄通信をしている暇があるなら早くアンカードを撃墜しろ!!
す、すみません……
お兄さま〜
いらいらしているからといってヒトにあたるのはよくありませんわ〜
っと……すまない 少々考え事をしていたものでな
フェン、何か気づいたことでもあったのか?
いえ この戦いが終わったら、ボク……
戦いの最中に終結後の話か?
馬鹿者!まずは戦闘を終わらせる事だけを考えろッ!
あぅ
お兄さま〜
フェンさんは戦闘訓練を受けたお兄さまの部下ではありませんわ〜
す、すまない
フェン、雑談は後に回してくれ 戦闘中だ
は、はい すみませんマスター……
ギアさんといる時はデレデレして頼りない感じだったけど……
怒る父さんって、かっこいいな……
レキ……これで終わりにしようぜ
ああ だが、一つだけ聞かせてくれ
お前……いつからサイラックスの秘密に気づいていた?
ただの科学者じゃないぐらい、一緒に暮らしてりゃそれとなく判るさ
あいつが不死身の現場も見ちまったことだしな……
ほぅ?
あいつ、自己回復能力がありやがる
特異な力は俺より上なんじゃねぇのか?
なのに何で俺なんかを王位につけたがるのかが理解できねぇ……
お前さんも脳天気だね
天然のバイノアが何で力を出し惜しみしてんのか、ちょっと考えりゃあ判りそうなもんだがなぁ
どういう意味だ?
そいつぁ、俺との勝負に勝った後サイラックスにでも聞いてくれ
聞くチャンスは二度と来ないがなッ!
お前さんとは長いつきあいだったが……
最後までわかり合えることが出来なかったか
これだけ性格が違うんだ わかり合える訳ねぇだろ
そうかい? だが俺はお前のことが嫌いじゃなかったぜ
そう、大好きってやつだ!
…………
おい、何か言ってくれや 俺様が馬鹿みたいに見えちまうだろ?
悪いな、ついボーッとしちまった
お前との腐れ縁も、これで終われるかと思うと嬉しくてな
さぁ、始めようぜレキッ!!てめぇと俺のファイナルバトルだ!
まったく残念だ これだけ好戦的なヤツなら俺様のよき片腕になれたってのによ
……何故自ら反乱を起こした?
決まってんだろ オーツォメンに支配されたくなかったからだ
機械に操られる人生なんざぁまっぴらごめんだね
ところが親父も国王も家臣もみんな、奴らの言いなりになっちまってる
あんたの処の”再生技術”ってやつぁそうとうに魅力モンらしい
……不老不死はヒトが永遠に憧れるテーマだからな
不死が何であるかも理解しようとはせずに……哀れなものだ
そいつはあんた自身も含めてかい?
……まぁいいさ 俺はあんたの哲学にゃあ興味がねぇ、とっととおっ始めようぜ
そうだな
悪いな あんたの作戦に便乗しちまって
何の話かね
とぼけるねぇ バイノアを使って暴動を起こそうとしていたくせしてよ
俺様はこれでも一個小隊任されてる身だぜ?
兵の様子に気づかんで何が隊長だ
そこまで判っていたのなら、国王殺しも私達に任せればよかったのだ
何故自分で動いた?
バイノアには借りを作りたくなかったもんでね
……バイノアは信用できねぇ 兵器として俺様の役に立ってりゃいいんだよ
我々は兵器ではない……我々もまた、この地に生きるヒトの一種なのだ
エドを突っ込ませやがったのは、お前か!?
違うね アルフレッドのやつさ
えっ……そ〜なの?
そうそう 俺様じゃないぜ
……そっか 悪かったな、勘違いしてて……
おいおい 敵の言うことを真に受けるってか?馬鹿だねぇ
なんだとッ!?
じゃあ一体誰がエドを前線に引きずり出したってんだ!
生き残ってる奴らに決まってんだろーが
だましやがったな!?もう絶対に許さねーっ!!
アルフレッド、てめぇ!メキシクではよくも罠にハメやがったな!
おまけにエドまで殺しやがって!!
エドはなぁ、戦いにゃ向いてなかったんだ!
だから俺がエドの代わりに戦ってやろうと思ったんだ!!
何言うてまんねん
エドウィンはんを殺したんは、あんさんらやおまへんか
殺人者は怖いでんなー 自分の罪さえヒトに押しつけよる
うっ……うるせぇ!そうなるように仕組んだのはお前じゃねーか!
殺しとぅなかったら殺さなんだらよかったんや……
エドウィンはんにやられりゃ〜殺さずにすみましたで
ま、判ったやろ?戦争ちゅうんは綺麗事やないんや
他人を殺さな自分が死ぬんやで
エドはんはウチらの元についた時点で運命が決まっとったんですわ
前線に出る覚悟もあったはずやで
う、うそつけ!あの臆病モンがそんな覚悟持ってるわけねーだろ!?
あんさんが思っていたよりエドはんは男やったっちゅーこっちゃ
よく言うぜ、あの野郎
ノンポリ住民の命を盾に、エドウィンの野郎を脅しておいてよ
何をどう言おうが関係ねぇ!!俺にとってお前らはエドの仇だ!
お前らがいなきゃ……戦争がなけりゃエドは死ななかった!!
戦争を続ける奴は全員俺の敵だ、覚悟しやがれ!
なら、あんさん自身も敵やないんか!?
この戦い終わったら、責任取って潔く自決しなはれ!