二十三周年記念企画・チェンジif

絶対天使と死神の話←→Folxs

アーステイラにピコが誘拐された時、同行したのが優しく見守ってくれるジャンギだったから原田は覚醒できた――とも言えます。では、その優しい同行者が意地悪な魔族だったら、どうなってしまうんでしょうか。「絶対天使と死神の話」のジャンギと「Folxs」のクォードで入れ替えっこ!

「絶対天使と死神の話」より
輝ける魂編 06.予想外のタイミングで


「探しにいくっきゃねぇぜ!」と、生徒の誰かが叫ぶ。
「何が怪物の王だ!俺達がブッ倒してやる」
あちこちで気勢があがり、血気逸るのは現役ばかりじゃない、見習いもだ。
もはや警備隊程度で止められる騒ぎではなく、今しも外へ飛び出していきかねない彼らに「逸るんじゃねぇ!てめぇらが出ていったって捕まえられる相手じゃねぇだろうが!」と大声で喝を入れたのは誰であろう、この町に居着いた余所者のクォードだ。
一斉に静まり返った場で、彼の声が朗々と響く。
「相手は怪物の王を名乗る邪悪な存在だぜ?闇雲に探したって見つかるアテもねぇ。ここは俺がいく、異論は許さねぇぜ」
全くの無関係とも言える者の決断に群衆はポカンとなり、そうした周りの反応も無視して、クォードは口元を歪ませた。
「ただし、俺がやるのは探索だけだ。戦うのは、そこの原田に任せる。原田、テメェも、それでいいだろ?」
この話の流れだとクォードは一人で探索の旅に出るようであり、それはそれで心配だ。
たった一人での探索は危険じゃないか。
原田は叫んだ。
否、クォードに勢いよく掴みかかって頭を下げた。
「俺も、俺も連れていってくれ!クォード一人じゃ危険だ!」
必死の懇願に続くようにして、もう一つ声がかかる。
「なら、俺とヤフトクゥスも同行するぜ。結界を破る魔力が三つもありゃあ充分だろ?」
神坐だ。
何でかヤフトクゥスまで頭数に加えているが、彼を連れていったら却って面倒なことになるんじゃ?と心配する原田へウィンクして、神坐が言うには。
「絶対天使のリソースは無限だかんな。こいつも連れていくのは悪い案じゃねぇと思うぜ」
なら、神坐は留守番してヤフトクゥスだけ同行させれば……と途中まで考えて、原田は自身の考えを破棄する。
ヤフトクゥスが「安心しろ、この俺が同行するのであれば道中の安全は約束されたも同然だ」などと言葉は凛々しいながらも馴れ馴れしく原田の肩を抱き寄せようとしてくるもんだから、身の危険を感じたのだ。
「四人だけで世界を横断するのか!?危険だぜ!」と、現役自由騎士の指摘に「四人だけじゃないぜ!」と答えたのは小島で、原田の横に並び立つ。
「クォード、俺達も行く。お前が止めようと誰に止められようと、俺達は絶対探しに行くのをやめないぞ。だって、ピコは俺達の仲間なんだ!」
原田の手を、ぎゅっと握りしめて、水木が囁いた。
「……大丈夫だよ、原田くん。ピコくんは絶対見つけだせる。神坐先生は私達を森林地帯から救い出してくれた……今度だって絶対、アーステイラの結界を破ってくれるよ。その時、私達が一緒じゃなかったら、ピコくんだって不安になっちゃうだろうからね。だから、全員で探しに行こう」
コクリと真剣な眼差しで水木に向かって頷く原田を横目に、クォードは思案する。
このまま黙って眺めていたら、一人旅の予定が足手まといを何人も引き連れての大所帯になりそうだ。
クォードは無言で踵を返し、空を見上げる。
「ん?クォード、空なんか見上げちゃって、どうしたんだ。もう出発すんのか?」と問いかけてくる小島へは、振り返らずに答える。
「テメェらはテメェらだけで出かけるんだな。俺は好きにさせてもらう」
言うが早いか真上へと飛び上がり、そのまま一直線に空を飛んで水平線の彼方へ消えていった。
まさかの単独行動に、原田たち四人はポカンとなり――
すぐに「ま、待ってよー!」と全員が泡を食ってクォードを引き留めようとしたが、後の祭りであった。

End.

Page Top