2020年クリスマス企画・闇鍋if

世界観闇鍋カップリング

ヨセフと九十九のクリスマス

かつて、ゲートを通りファーストエンドに現れた異世界人がいた。
彼は多くの文明を、この地にもたらした――


しんしんと雪が降り積もる晩。
ロイス王国の騎士、ヨセフの私室には一人の青年が運び込まれていた。
見回りの途中で見つけた行き倒れだ。
どこを通ってきたのか着ていた服は煤だらけで、今は洗濯して城の屋上に干してある。
素っ裸の彼を寝台に乗せると、ヨセフは惚れ惚れ彼を眺めまわした。
ムキムキというほどでないにしろ、青年は鍛えられた体をしており、余分な贅肉が全くない。
下腹部には黒々とした剛毛が生えており、埋もれたものをツンと突くと、唇からは淡い吐息が漏れる。
毛の黒さを見るに、ロイス人ではない。
東大陸ジパンの人間だろうか。
だがジパンは今、内戦が起きているそうでテレポットは封鎖されている。
密航で逃げてきたのか、あるいは武者修行で、こちらへ来たのか。
それは彼が起きた時に尋ねれば判ることだ。
ヨセフは、そっと引き出しから小瓶を取り出すと、刷毛で丹念に青年の体へ液体を塗りつけてゆく。
裏ルートで手に入れた、非合法の薬だ。
本来は知人に使う予定であったが、思わぬ拾い物を前に予定を変更した。
くすぐったいのか、青年は時折「ん……」と小さく喘いで、ヨセフの股間を熱く滾らせる。
なかなかに、良い感度だ。だが、この程度では、まだまだだ。
薬は彼が起きる前に、たっぷり体に染み込ませておかねばならない。
刷毛で塗るばかりではなく、キュッキュと乳首を摘まんで馴染ませる。
尻の穴に指を突っ込み、内側の奥にも丹念に塗りつけた。
奥へ突き入れるたびに小さく声が漏れて、意識の覚醒が近いのだと判る。
「ふふふ、よいですね……東の民とは一生関わりがないものかと思っていましたが、内戦が終わったら旅行へ出かけてみるのも一興かもしれません」
ヨセフは思わず独り言を呟き、それがきっかけかどうかは判らないが、青年が目を覚ました。
「ん、うぅぅ……ふぇっくしゅ!」
暖房もない冬の部屋で素っ裸だったせいで、起き抜けに大きなくしゃみをかまして、ガバッと身を起こす。
起きてすぐ、ここが自室でないと知るや否や、青年は近くにいたヨセフに確認を取った。
「すまない、どこだ?ここは」
「ここですか?ここはロイス王国宮廷内にある、私の部屋でございます」
淀みなく答えるヨセフを上から下までジロジロ無遠慮に眺めた後。
「……ロイス王国だと?聞いたことのない地名だな」と呟いた彼は、ようやく自分が裸なのにも気づいて二度驚く。
「うわ!なんで裸なんだ!?」
「あなたの服はドロドロに汚れておりましたので、失礼ながら私が洗っておきました」と、ヨセフ。
もう一度ヨセフをジロジロ眺めて、青年が尋ねる。
「えぇと、つまり行き倒れの俺を助けて、ここまで連れてきたのが、お前……ということか?」
「その通りです」
頷くヨセフへ頭を下げて、改めて青年は自己紹介した。
「そうか、ありがとう。俺は十和田九十九。本山の大掃除で煙突の煤を払っていたんだが、途中で足を滑らせて落っこちて、そこから後の記憶がない……しかし、ロイス王国?おかしいな。何をどうやったら、煙突を滑り落ちただけで他所の土地に流れ着くんだ」
彼の話を鵜呑みにするのであれば、煙突から転落した際、ロイス王国まで一気に瞬間転移したことになる。
「こんな話を聞いた覚えがあります」
ふと思い出し、ヨセフは語りだす。
セイヤには、煙突を通ってセイントファーザーなる神の使いが現れると聞く。
今晩が、そのセイヤにあたるのだが、九十九が煙突を通ってきたのであれば、彼こそは神の使いだ。
しかし本人に瞬間転移した記憶がないとは、どうしたことだろう。
案の定、ヨセフの話を聞いた九十九も「セイントファーザー?いや、俺はそんな役目を背負っていない」と即座に切り捨て、しきりに首をひねった。
「本山ってのは、中津佐渡にある猶神流霊媒の総本山を指しているんだが……判るか?中津佐渡」
九十九に尋ねられ、ヨセフも即座に否定する。
「いえ、存じあげません。ロイス以外の国の土地勘は、ありませんので」
「そうか……じゃあ、お前に尋ねても無駄だな」と、項垂れたのも一瞬で。
すぐに顔をあげた九十九は、下がり眉で要求してくる。
「ところで、この部屋、寒くないか……?できれば服を貸してもらえると有難いんだが」
ここでヨセフが素直に服を貸してくれると思ったら、大間違いだ。
騎士は温和な笑みを讃えて、よっこらしょとベッドにあがってくると、九十九の耳元で囁いた。
「寒いのでしたら、肌を寄せ合って温まりましょう」
「いや、服を一枚貸してくれればいい」
ばっさり相手が拒否するのも何のその、九十九の肩を抱き寄せて密着する。
「今宵はセイヤです。性的な夜と書いてセイヤなのですよ、ウフフフ。セイヤの晩は皆、服を脱ぎすて裸で肌を寄せ合って寒さをしのぐのです」
もちろん嘘だ。正確には聖なる夜と書いて、聖夜である。
聖夜に行われる祭り、クリスマスをロイス王国に伝えたのは、異世界より現れた青年だ。
クリスマスには神に祈りをささげることで、煙突を通ってセイントファーザーなる使いが現れ、人々に贈り物を配る。
実際にはセイント某なる人物はファーストエンドに存在しないのだから、誰かが扮して贈り物を配る役につく。
ジパン人なら知らないだろうとカマをかけての発言は、はたしてヨセフの思惑通りか、九十九は案外素直に受け取った。
「なるほど。わざと火を起こさないことで火のありがたさを知る、といったところか?」
「そんなところです」と尤もらしく頷き、ヨセフも服を脱いで全裸になる。
ぴとっと抱き着いて、触り心地を確かめた。
バランスよくガッチリしており、それでいて胸元はムッチリな手触りだ。
ソロンの胸もヨセフ好みだが、九十九の胸も合格点だ。
お尻の肉付きも柔らかでヨイ。
さわさわあちこち撫でていると、居心地悪そうに九十九が身じろぎする。
「その……抱き合うだけじゃなくて、触らないと駄目なのか?」
「えぇ。あなたも私に触れてください。そういう儀式ですので」
息を吐くように嘘を告げ、ヨセフの指が九十九の両乳首を摘まむ。
先ほど、たっぷり非合法の薬――媚薬を染み込ませた個所を、執拗に弄ってやる。
説明書によると、ちょっと触ったり突いただけでもアハ〜ンウフ〜ンと夢心地に気持ちよくなるそうなのだが、自分では怖くて試していないので、ぶっつけ本番の使用だ。
「んんっ……それ、按摩だろ?」と尋ねられたので、言葉では返さず顔を覗き込んでみると、九十九はむず痒いといった表情を浮かべてヨセフを見やる。
「よく照蔵……知り合いがやってくるんだ。按摩で筋肉をほぐすと、気の巡りがよくなるんだそうだ」
テルゾーが誰だかは知らないが、恐らくはガセ情報ではないかとヨセフは怪しんだ。
気の巡りとは、要するに魔術師が言うところの魔力の循環等と似たようなものであろう。
乳首を弄って循環がよくなるとは到底思えない。
乳首なんぞを弄ったりしたら、意識が乱れて逆効果になるのでは?
しかし九十九の表情を見るに、彼は真面目にテルゾーの与太話を信じていると思われた。
なら、何もヨセフが質してやる必要もあるまい。
むしろ利用させてもらおう。これは按摩だ。
「よくご存じでしたね。そうです、地方によっては按摩とも呼ぶようですね。体を効率よく温める方法なのですよ」
どれだけクリクリ弄っても、嫌がって振り払われたりはしない。
九十九はヨセフに背を預ける格好でもたれかかり、されるがままだ。
ついさっき出会ったばかりの、ほとんど知らない赤の他人だというのに、すっかり信用されているようでもある。
やはり行き倒れを拾ってくれた恩人というのが効果絶大だったのか。
実際行き倒れていたのだし、助けたのは間違っていない。
「じゃあ、俺も……お前を按摩しよう。どこをやればいい?」
薬が効いてきたのか、ほんのり赤く頬を染めた九十九に尋ねられ、間髪入れずにヨセフは答えた。
「では、ここをお願いします」
九十九の手を取り、己のそそり立ったものに押し当てる。
イケメン細マッチョに手で扱かれるチャンスが訪れるなど、思ってもみなかったご褒美だ。
配下の騎士にだってソロンにだって、やってもらえた試しがない。
というか、怖くて頼むことすらできない。
騎士たちは、こぞって汚物を見る視線を向けてくるだろうし、ソロンに至ってはガチギレヘッドバッドないし金的の刑が待っている。
「ここを……どうするんだ?」
ぎゅっと握った状態で困惑する九十九を再度促した。
「そうですね、息をかけて強く握るようにしながら、手のひらで擦るようにしてください」
「強く握って大丈夫なのか?」
場所が場所なだけに不安そうな彼に力強く頷くと、ヨセフは手本を見せてやる。
「まずは、私の手本をご覧ください。こうやるのですよ、シュッシュとね」
照蔵でも触るのには躊躇した、九十九の股の間に生えたそれをギュッと握って水平に扱く。
途端に「うぁっ!?」と過敏に反応し、九十九が勢いよく仰け反った。
「ま、待て、これ、ヤバイ、魂、抜けるっ!」
ぶるぶる震えてヨセフの腕をつかんできたが、ヨセフは意に介さずマイペースに扱き続ける。
扱きながら、この青年は、これまでの人生で一度も自慰をしたことがないのかと不思議に思った。
テルゾーの嘘、乳首の按摩にしたってそうだ。自分で弄ったことはないのだろうか。
或いは性的な興味を持ったことが一度もない?
いや、しかし性的には感じているのだから、性的な思考はあるはずだ、九十九にも。
そもそも出会ったばかりの人間に、大事なところを易々と触らせてしまう不用心さも心配になってくる。
「ちょ、駄目、やめろって言ってるだろ!?くすぐったいーッ!」
我慢できない刺激だったのか九十九は無茶苦茶に暴れだし、勢い余って振り回した腕が偶然ヨセフの頬を激打して、「ブフォ!」と悲鳴が一つ、手本の終わりを告げた。
「お……おごォ……」
不意打ちだったせいもあって、激痛二倍だ。
ヨセフは頬を押さえた格好でベッドを転がり落ちる。
お楽しみの先には激痛が待ち構えている。それが自分へのご褒美の反動なのだ、いつも。
「わ、悪い、痛かったか。けど、全然やめないお前だって悪かったんだからな?」
ベッドに引っ張り上げられたが、とても続きをやる気力がわかない。
顔が変形するんじゃないかってぐらいの激痛が頬の辺りに残っており、気のせいか奥歯も何本かグラグラするようだ。
すっかりスケベ意欲の削げたヨセフに対し、九十九が何をしてきたかというと。
「こうやるんだったよな。よーし、お前も魂が抜ける感覚を、とくと味わってもらうぞ」
九十九は無邪気純真にも先ほどの手本通りに、ヨセフの萎えたペニスを握ってシコシコと扱いてきたのだ!
「あっ、あっ、アフ〜〜ン!
おかげでヨセフは本来なら九十九に言わせる予定だったアフ〜ンアハ〜ンを、自分で叫ぶ羽目になる。
「あぁん駄目ぇ、あぁん、アハ〜ン、いい、イグゥゥー!」
「はは、相当気持ちいいみたいだな。よし、摩擦でアチアチになるまで按摩してやるか!」
寒風摩擦の如き激しい勢いで扱かれて、なんだか本当にペニスがアチアチになってきた気がする。
今年のクリスマスは途中経過で痛い思いもしたけれど、差し引き合計では、ご褒美でしたぁ〜〜ん。
ヨセフは幸せな気持ちを抱きながら、九十九の手の中で盛大に達し、そのまま気を失った。
翌日、汚物を見る視線の部下に揺り起こされて、九十九がいなくなったことを知る。

あれは、夢だったのだろうか。
夢でも、ゴチでした。

冷たい視線にメゲることなく、ヨセフは嬉々として勤務に繰り出すのであった――

++End++

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