第一話 サーカスと幼女
最初に目にしたのは、地平線の彼方まで続くんじゃないかってぐらい広い砂漠だった。俺以外には、誰もいない。
踊るなら今のうち?
いや、踊っている場合ではない。
せっかく生き返ったのに、誰もいないなんて寂しいじゃないか。
とにかく、まずは街だ。街を見つけよう。話は、それからだ。
俺はアテもなく歩き始め――数十分と経たないうちにギブアップした。
根性がない?だって仕方がないじゃないか。
俺は現代人、しかもデスクに一日中拘束されるサラリーマンだったんだから。
それがいきなり砂漠のど真ん中に放置されてみろ。
水だって持っていないのに。
そうだ、水だ。水。さっきから喉が渇いて死にそうだ。
あぁ、第二の人生をスタートした直後、砂漠でひからびて死ぬなんて。
あの白ヒゲじじい、今度会ったら只じゃ――
「おい」
不意に背後から声をかけられて、俺は死ぬほど驚いた。
ビクビク振り返ってみると、そこに立っていたのは屈強な体躯の大男だ。
一人じゃない。他にも数人ツレがいた。
皆、砂にまみれたマントを羽織っている。
一体、俺に何の用だろう?
「お前一人のようだが、ここで何をしている?」
俺は正直に答えた。
「実は、迷子なんだ」
「迷子か、ならばついてくるといい。街まで案内しよう」
まさか、すんなり信用されるとは思ってもみなくて、俺は呆然と佇む。
なんだ、こいつ。まさか親切なフリをした強盗か?
俺の顔色を読んだのか、大男が苦笑した。
「安心しろ、お前から金を奪い取るほど我々は飢えちゃいない」
「あんた達こそ、ここで何をしていたんだ?」
俺のぶしつけな逆質問にも、男は、すらすらと答える。
「ローランド研究所の依頼で、砂漠に埋まった素材を収穫しに来たのだ。だが我らの用事は、もう済んだ。そこで帰る途中、お前を見つけたというわけだ」
背負ったザックを揺すってみせた。
「旅人には親切にするのが、砂漠の民の掟だ。いや……元砂漠の民、だがな」
元?じゃあ今は違うのか。
もっと話を聞いてみようと思ったが、あれこれ詮索するのも怪しまれそうで怖い。
それ以上は深く突っ込まず、俺は彼らの道案内に従った。
「では、我々はここで」と言い残し、男達とは街の入り口で別れた。
小さな街だ。街というより、規模としては村に近い。
中央の広場らしき場所には赤いテントが建っていて、賑やかな音楽も聞こえてくる。
この音色は……サーカス?
この世界にもサーカスがあるのか。
きっと、やっていることも同じなんだろうな。
俺の横を、子供達がばたばたと走り去っていく。
口々に「サーカスだ」「サーカスがきたぞ」と、お約束気味に叫びながら。
あれは絶対に言わなきゃいけない使命感にでも、かられているんだろうか?
サーカスが来たのなんて、テントを見りゃあ誰にだって一目瞭然だろうに。
なんて考えながら、俺も広場へ向かう。
第二の人生といわれても、何をやればいいのか急に思いつくものじゃない。
まずは、この世界が、どういう世界なのかを把握しよう。
テントの側へ近づいた俺を出迎えたのは、ちみっこサーカス団員だった。
「さぁーよってらっしゃい、みてらっしゃい!どうぶつサーカス団、本日公演だよぉっ」
可愛い声を張り上げて、チラシを差し出してくる。
俺は彼女の手ごとチラシをぎゅっと握りしめて、受け取ってやった。
一瞬ムッとした幼女は、俺の顔を見るや否や、ぽぅっと頬を赤く染める。
そうだろう、そうだろう。
自他共に認める俺のイケメンフェイスを見たなら、当然の反応だ。
俺を見つめる幼女へ尋ねた。
「君もサーカス団の一員なんだね。名前は?」
「タ……タンタンですゥ〜」
空いた片手を口元に持っていって、ふるふると首をふる。
自分がどう振る舞えば可愛く見えるか、計算された態度を取る子のようだ。
だが、そんなのは全く問題ではない。
可愛いは正義だ。可愛ければ何でも許される。
「あ、あなたのお名前は……?」
幼女が潤んだ瞳で尋ね返してきたので、俺は髪の毛をかきあげ答えた。
もちろん、流し目のオマケつきで。
「颯斗だ」
「颯斗……さま……ッ」
タンタンは全身からハートを飛ばしかねないほど熱い視線で、俺を見つめる。
もうスカートの下は、じゅんと濡れているかもしれないな。
俺はフリフリ衣装に隠された、つるぺたの胸を想像して、一人ニヤける。
服の上から見ても、タンタンには胸と呼べる膨らみが全くない。
だが乳首は、俺に触ってほしいと言わんばかりに堅く尖りきっているはずだ。
「タンタン」
甘いボイスで、彼女の名を呼んでやる。
「は……はいっ!」
タンタンが裏返った返事をし、俺を見上げた。
「もっと君のことを知りたいな。どこか落ち着く場所で話さないかい?」
ちょっと誘っただけで、タンタンは俺の手を取り走り出す。
「なら、楽屋でお話ししましょ♪」
楽屋もいいが、どうせなら二人っきりになれる場所がいい。
広場を素早く見渡して、放棄された飽き小屋らしき建物を見つけた俺は、彼女をそちらへ誘導した。
「楽屋は関係者以外立ち入り禁止だろう?あそこに、ちょうど休める場所がある。ついでおいで、タンタン」
爽やかな笑みを浮かべただけで、もうタンタンは俺の言いなりだ。
コクコク何度も首を振り、俺に手を引かれるまま歩き出した。
小屋の中は予想以上に汚かったが、ここで挫けているようじゃ男が廃る。
手早く藁をかき集めると、その上に座ってタンタンへ手を伸ばす。
「さぁ、こちらへ」
ところがタンタンときたら、口を尖らせ文句を言ってくるではないか。
「え〜?そこ、汚いから座りたくないなぁ」
「じゃあ、ここならどうだい?」
俺は彼女の手を引き、あぐらをかいた俺の膝の上に座らせる。
膝というか、言ってみれば股間の上だが。
タンタンは座った瞬間びくりと身を震わせ、小声で囁いた。
「……もぉ、エッチィ」
「君を見ていたら、こんなになってしまったよ」
嘘じゃない。
俺のストライクゾーンは赤ん坊から老婆までだ。ただし、美人に限る。
腰をぐいぐい動かして、いきり立ったモノを彼女のお尻になすりつけると、タンタンも身をよじる。
「やだぁ、もぉ、せっかちさんなんだから」
幼女にしては、ませた発言だ。
だが、この世界の幼女は、もしかしたら皆おマセさんなのかもしれない。
おマセさんのほうが、俺としてもやりやすいので大歓迎だ。
さっそく服の上からナイムネを、さわさわしてやると、タンタンは「あぁんっ……だめぇ」と言いながら、お尻を俺の股間に擦りつけてきた。
いい反応じゃないか。
この世界の女性全員がタンタンみたいな性格だったら、この世界はパラダイスだ。
第二の人生、万々歳。
なにしろ第一の人生じゃ、全くと言っていいほど女性にはモテなかったからな。
せっかく俺という美男子がいるのに、元の世界の女どもときたら!
……まぁ、いい。
タンタンの上着をめくりあげ、乳首が立っているのを確認すると、俺は、そっと両方を指でつまみ上げる。
同時に耳元で囁いた。
「……タンタン」
「あ、あんッ」
少々過剰なんじゃないかってぐらい喘ぎながら、タンタンが聞き返す。
「なに?」
「前がいい?それとも後ろから?」
「……えっ?」
何を聞かれたのか判らない、というようにぽかんと呆ける彼女へ再度尋ねた。
「だから、おまんこに入れるか、おケツがいいかって聞いたんだよ」
「なっ……」
ヒキヒキとあからさまに引きつった後、タンタンが唐突にブチキレた。
「何言ってんのよー!?」
「何って君の希望を」
「そーじゃなくて!あーもー、ムードが欠片もないんだからっ」
そうは言うが汚い藁の上に座って後ろから乳首を弄っている、これのどこにムードがあるというんだ。
最後からムードなんか、どこにもない以上、今更取り繕ったからって、どうなるんだ。
だが、俺の心情など全く無視して膝の上の幼女はきゃんきゃん吠えまくった。
「そこは『いくよ、ベイビーちゃん。君の蕾を味わいたい』とか何とか言って、あたしのエッチィ部分をペロペロ舐めたり、あんっ、何言わせんのよっ」
勝手にベラベラしゃべりまくったあげく、ポッと頬を赤らめたりしている。
可愛いからいいけど。
「そうかそうか、つまり俺におまんこを舐めて欲しいと」
「今更遅いわよ!」
「うごぉっ!!」
かがみ込んだ俺の顎を、間髪入れずタンタンの足が蹴り飛ばす。
おかげで、思わずイケメンらしからぬ悲鳴をあげちまったじゃないか。
今のは本気で痛かった。顎が外れたら、どうしてくれるんだ。まったく。
「ったく、イケメンだからいいかな〜って思っていたのに、あんたって、とんだハズレクジね!」
初対面で、ここまでボロクソに言われたのは初めてだ。
第一の人生でだって、女の子達は一応言葉を選んでくれたってのに。
可愛くなかったら、許さないところだぞ。
だが、可愛いので許す。
俺は構わず、もう一度かがみ込み、タンタンの股ぐらに頭を突っ込んだ。
「ひぎゃあ!?あ、あんた、人の話を聞いて、ぁうんっ」
純白のパンティをべろべろ舐めてやると、幼女がぶるぶると体を震わせる。
「やっ、だめぇ、そこ、駄目なのぉ〜」
それこそ今更言っても遅いんだぜ、ベイビーちゃん。
パンティを俺の唾でべちょべちょにした後、おもむろに脱がしにかかる。
おぉう、幼い割には毛深い……!
タンタンのあそこは、髪の毛と同じ紫色の痴毛で覆われていた。
じっとりと湿っているのは、俺の唾の影響だけではなかろう。
「くっくっく、嫌がっているくせに体は正直じゃないか。タンタン」
邪悪な笑みを浮かべる俺へ、恥ずかしがるタンタン。
「い、いやぁ、見ないでぇ」
双眸に涙を浮かべて、もう、こちらを煽っているとしか思えない。
ジーロジロ見てやる。
視線だけで彼女がイッてしまえるほどに。
「やだぁ、そんなじっくり見ちゃ駄目ぇ……」
俺が見ているだけでも、タンタンは相当興奮している。
息づかいが荒くなり、恐らくは無意識にだろうが自分で自分の乳首を弄り始めた。
ムードだヘチマだと騒いでいた割には、ちょろい淫乱ベイビーちゃんだな。
もう一度股ぐらへ頭を突っ込んで、今度は直に舐めてやる。
「やっ、はぁんっ、いやぁっ!」
大袈裟なんじゃないかってぐらい、タンタンは身をそらせて悲鳴をあげる。
いいぞ、もっと言え。
俺は調子に乗りまくって、ベロンベロン犬のように舐めまくった。
そのたびタンタンの口からは可愛い喘ぎが漏れて――
「ちょっと!もうすぐ開演だってのに、男くわえ込んでエッチしている場合!?」
小屋の扉をバアァーン!と勢いよく開けて飛び込んできた奴がいた。
――訂正。
奴じゃない、可愛い女の子だ。
タンタンと同じくフリフリフリルのついたサーカス衣装を着ている。
タンタンと違うのは、服の上からでも判るぐらい大きなオッパイだ。
「や、やーね!何乗り込んできてんのよ、トァロウのエッチ!」
タンタンが言い返し、トァロウと呼ばれた女の子も負けちゃいない。
「表まで聞こえるほどアンアン言っていたら、誰だって気になって見に来るわよ!ったくもう、これ以上うちのサーカスの評判を落とさないでくれる!?」
問題児なのか?タンタンって。どうぶつサーカス団の中で。
ぼうっと見ている俺にも、喧嘩の矛先が向けられた。
「あなたも!うちの団員、こんなとこに引っ張り込まないで下さい」
トァロウが眉根を寄せて怒っている。
怒っていても可愛さが損なわれないから、ステキだ。
「そう怒らないでくれ、ハニー。怒ったら可愛い顔が台無しだよ」
台無しになってはいないのだが社交辞令でそう言うと、トァロウは一瞬ポカンと呆けた後、すぐに我に返って反撃してきた。
「ちゃ、茶化してごまかそうったって駄目です!」
その彼女へ近づくと、俺は素早く彼女の頬にキスをする。
「きゃあ!」
すかさず飛んできた平手打ちに、俺は仰け反りかえる。
あれぇ?
この世界の女の子って、皆が皆ヤらせてくれるんじゃなかったのか。
ビッチなのは、タンタンだけだったってわけだ。
「いきなり何をするんですか!?警備隊を呼びますよ!」
いかん、トァロウは本気で怒っている。
ふと下からの殺気にも気づいて足下を見ると、タンタンも怒っていた。
「ちょっとぉ!あんた、女なら誰でもいいわけ!?サイッテー!」
怒っているなんて可愛いもんじゃない。
いや怒っている姿も可愛いんだけど、彼女は激怒していた。
頭から湯気がでそうなほどの大激怒だ。
俺は、すかさず爽やかスマイルで言い訳する。
「違うよ、俺が興味あるのは可愛い女の子のオッパイとオマンコさ」
顔はタンタンを見つめながら、手は後ろに伸ばしてトァロウの胸にタッチ。
おぉう、やーらかい!それでいて、弾力があるっ!
「きゃあああぁぁぁっ!」
再びの猛攻。
バチコーンと思いっきりトァロウに後頭部を殴られ、俺は目の中に星を見た気がして、そのまま、意識が遠のいた。