24th Anniversary

第一次魔戦でTrick or Treat!?

プロローグ

剣と魔法と機械の似非ファンタジー世界、ファーストエンド。
この世界にはゲート召喚と呼ばれる魔法がある。
後世では禁呪とされたが創世記時代は頻繁に使用されて、異世界からの住民を迎え入れてもいた。
所謂、異種族――エルフや天神族の祖、そして異なる世界の人間たちを。
招かれた異世界人の中には、原住民へ自文化を伝えるものも少なくなく。
ハロウィンも、そうした者たちが残した異世界文化が発祥だと聞く。

「ってわけでだ。俺達も異世界文化を楽しもうぜ!」
「正気か?戦争中だぞ」
ばっさりイワンに一刀両断されても、なんのその。
デューンは笑顔を崩さず、部下にも同じ提案を切り出した。
「いいですね、ハロウィン!それで、具体的には何を祝うお祭りなんですか?」
「何を用意すればいいんでしょう?料理だったら、お任せ下さい!」
さすがロイス騎士はノリがよく、団長の提案にノーを言う者など一人もいない。
「戦時中だから派手な飾りは無理だし、手作りしよう。綺麗に飾れば気分が出るんじゃないか」
唯一の常識人だと思っていたアーリアまで、そんなことを言い出して、イワンらエルフ達は呆気にとられるばかりだ。
ハロウィンの存在自体は知っている。
お菓子やプレゼントを持ち寄り、渡し合う祭りだ。
素直に渡すだけじゃ味気ないってんで、もらう側が選択肢を出す。
合言葉は「Trick or Treat?」
いたずらするか、お菓子をよこすか。
Trickを選んだら悪戯を仕掛けなければいけないし、Treatを選んだら菓子を渡さねばならない。
大抵の者はTreatを選ぶ。アドリブで悪戯をやるのは難しいからだ。
初めて概要を知った時は随分と幼稚な遊びだとイワンには感じられたのだが、ロイス騎士の面々を見ると団長デューンを筆頭に、どいつも目が尋常じゃない輝きに満ちている。
「悪戯って、どんなのでもアリですか」
グフフといやらしい笑みをこぼす騎士までいるしで、一体何を妄想しているのやら頭が痛くなってくる。
「あぁ、もちろん悪戯だと思える範囲ならな!」と団長に釘を差され、あちこちで笑いが上がる中。
くるっとデューンがこちらを振り向いたので、イワンは猛烈な悪寒に襲われた。
「ハロウィンは全員参加だ。他の皆もプレゼントを用意しといてくれ!」
「ま、待ってくれ!戦時中だぞ、どうやって調達すればいいんだ?」
当然の常識がエルフたちの口を飛び出し、しかし突っ込んできたのは人間ではなくケンタウロスだった。
「今、アーリアさんが言ったじゃないか、飾りを手作りしようって。プレゼントだって本来は手作りするもんだろ?」
「て、手作りィ!?」
獣人からは悲鳴が上がる。彼らは、けして器用ではない。
ましてや菓子づくりなど出来るような能力もなかった。全員が力自慢の脳筋だけに。
「エルフの皆さんは手先が器用なんだろ?すごいのを期待しているからな」
よく見てみりゃコーデリンの連中も目がキラキラしているしで、乗り気じゃないのなんてファインド騎士団勢だけであった。
「手先が器用なのと、お菓子作りは別物ですゥ!」
エルフ陣からも悲鳴が飛び出そうとハロウィン乗り気勢は一向にお構いなしで、ハロウィンパーティーの開催は一週間後に取り決められてしまったのであった――!
アイル王子が不意にポンと手を打つ。
「そうだ、リューンも呼んでおきまちょ」
「リューンを?や、戦場に呼んでも役立たずですよ、あいつは」
即座に兄が却下しても、アイルはニッコリ微笑み己の意見を撤回しない。
「あれ、デューンは知らないんでちゅか?お兄ちゃんでちゅのに。リューンはね、お祭りの盛り上げ名人なんでちゅよ」
「はぁ。んで、王子は何時なんの祭りの時に知ったんで?」
「建国祭でちゅ。パパの腕相撲大会が大盛り上がりしたのは影の功績者リューンのおかげでちゅ」
そういや、そんなこともあったなぁとデューンは思い出す。
いつぞやの建国祭で、一番の大盛り上がりを見せた腕相撲大会。
優勝者は王妃様の手を握れるってんで、国中の力自慢ゴリムサマッチョ達は大張り切り。
結局、王妃様は事前で体調不良を言い出し、優勝者は王子と手を繋いだ。
それでも優勝者はデレデレのニッコニコ、誰もがハッピーな大円満で幕を閉じた。
あれの発案者はリューンだったのか。よく王様も許したもんだ、庶民とのふれあいを。
「ささ、召喚師を呼んで参れでちゅ。リューンを此処に召喚してくだちゃい」
召喚魔法なら一瞬で呼び出せる。帰りもロイスまで一瞬で送れるし安全だ。
妹も来るってんじゃ、誰と祝うか迷ってしまう。
あれこれプレゼントの中身を考えながら、デューンは祝い相手を誰にするかで悩みまくった。

誰とハロウィンを楽しみますか?
【アイル】【イワン】【アーリア】【リューン】