悠の後日談
文化祭、小野山くんと一緒に演し物をまわりたかったんやけど。二組は一日中演し物やっとって誘う暇なくて、残念。
まぁね、そうでなくても梓ちゃんやら他の友達に誘われまくりで、ウチの見たかったもの全然見られやへんのやもん。
文化祭って盛りだくさんな割に日数短いよねって、みんなと話したった。
文化祭が終わると、あとは期末テストぐらいで冬休みに突入や。
クラスの皆はクリスマスまで思考が飛んでて、ウチも今年の予定を聞かれまくりで、そういや坂下ちゃんはクリスマス、どうするんやろ。
小野山くんは坂下ちゃんがクリスマスやるー言うたら即参加するんやろうし、あっちの予定も聞いとこ。
ウチね、友達になったからには、全員と仲良うやりたいと思うとるんやけど。
なーんか、ね。あの二人、小野山くんと坂下ちゃんを見ていると、胸のあたりがモヤモヤすんねん。
ウチより共通の話題多いのは判るし、正反対な性格ほど仲良くなるーっちゅう一般論も判るんやけど、やっぱ距離近すぎへん?
なんて言うたらエェんかなぁ……坂下ちゃんがグイグイ距離詰めてるように見えるんよね。
友達は二人の仲を「男友達みたいだ」って言うけど、んー。そうかなぁ?
あと、文化祭が終わる前後やったかな。小野山くんに硬派説が浮かんできたんは。
そらね、チャラオか硬派かって聞かれたら硬派なほうかと思うけど。けど、ウチが見た感じ、硬派とも違うんよね小野山くん。
単に恋愛に興味ない、うぅん、もっと言えば恋愛に目覚めていないピュアなお年頃ちゃうんの。
恋愛っていえば、ウチ、体育祭が終わったあたりから二年三年の先輩からも告白されるようになってもうて。うんざりや。
興味ないねん。人となりも知らん人との交際なんて。
共通の趣味でもあったら別やけど、どの人の趣味を聞いても、ごまかされるかはぐらかされるか、やたら高尚な趣味を持つ人ばかりで、興味を持とうにも持てへん。
大体な、和歌や俳句を読むのが好きな高校生って、なんやねん。
頭良く見えたいからーちゅうて見栄張っとるんか、それともウチがそうゆうの好きに見えとるん?だとしたら心外やわぁ。
ウチらの世代やったら、フツーに読書やゲームが趣味でえぇんやないの?
答えられへん趣味っちゅうのも何なん。異性に知られたらヤバイことやっとんの?
言えないなら言えないで、表向きの社交辞令趣味をあげたらえぇんや。ウチみたく。
趣味すら判らん謎の人とつきあいたいか、って自分に置き換えて考えてみたことないんやろな。
あたりさわりなくバッサリお断りしながら、あと何年これが続くんか考えただけで憂鬱になってもうた。
ウチも小野山くんみたく硬派の噂を流してほしいわ。今度梓ちゃんに頼んでみよっかな。
何をするにも小野山くん誘う時は必ず坂下ちゃんがセットでついてくるって判ったんは、休日にウチのグループと小野山くんのグループとで一緒に遊ぼって話を梓ちゃんが出した時やった。
小野山くんのグループってのは、普段男子だけでつるんでいるのを指しとって、梓ちゃんもウチら女子グループと向こうの男子軍団とでの合コンっぽいのを期待しとったらしいんやけど、当日になって坂下ちゃんの合流には目を丸くしとった。
ウチも帰り道じゃ、坂下ちゃんと仲良うない子に散々文句言われたし。
「ね、あの子なんなの?普段一緒じゃないのに、こういう時だけちゃっかり混ざってくるとか!」って言うから思わず「下校と部活も一緒だよ」って言い返してもうて、何でウチが二人の仲をフォローせなならんねん。
二人ともウチの友達やろって突っ込まれたら、それはそうなんやけど。
坂下ちゃんとは約束した覚えないのに混ざってくるなんて、いくら友達ゆうても普通は思わんやん?
一度や二度なら、そーゆー便乗もあるかなってなるけど、一度や二度じゃないねん。毎回やん。
けど本人問いつめるんも、ウチが坂下ちゃん嫌ってんのかと勘違いされそうで嫌や。
ウチ、坂下ちゃんのことは嫌いやない。ただね、ちょっとでいいから空気読んでほしいだけなんや。
小野山くんに聞くのも、ね……同じ勘違いが発生しそうやん?
「小野山くんが誘っているんじゃないかな?」とは梓ちゃんの推理やった。
どうして?って尋ねたら、邪気のない笑顔で「だって一番の仲良しみたいだし」と答えられたけど、えぇんかいな梓ちゃん的に、その回答で。
梓ちゃんの推理が元で以前出とった二人の恋人疑惑まで蒸し返されて、それも否定するの必死になってもうた。
あー、しんど。これまでの友達で、こないなふうに弁解せなあかん関係図の人おらんかったし。
でも、じゃあ友達やめるかって言われたら、どっちとも嫌や。手放したくない、この友情。
坂下ちゃんて普段は押しがめっちゃ強いのに、時々とんでもなく優しくて、ウチこのギャップで何度も胸ん中ジンワリさせられとるんよ。
小野山くんが同じガッコにおらんかったら、坂下ちゃんとは親友になりたいぐらい好きかも。
なんて言うたらえぇんかな、気配りの方向性がウチと違って、より親身っていうか寄り添いタイプっていうか。
そないに言われたらアカン、人前なのに涙出るやんっていうのを、さらっと言ってまうのが坂下ちゃんのすごいとこやね。
ウチ普段は梓ちゃんとべったりなんやけど、梓ちゃん時々空気読めんとこあるし、全体的に天然で先が読めんのも難しいとこや。
その点、坂下ちゃんは姉御肌、そうそう姉御なんや。頼りになるって意味で。
誰が相手でも物怖じせぇへんのも、他校のしつこいナンパヤンキーに囲まれた時なんか、めっちゃ頼りになる。
小野山くんは強いんやけど、男子に囲まれても基本無口やからね。
無言でやり過ごそうとするのは無視されてるって感じるっぽいわ、ナンパヤンキーから見ると。
坂下ちゃんは違う。
ウチみたいにナァナァで済まそうともせず、はっきりきっぱり迷惑ですって言っちゃう。
そんで向こうの血気盛んなのが坂下ちゃんに暴力ふるおうとした時こそが、小野山くんの出番やんね。
軽く暴力沙汰になりそうなんは、ウチらがキャーキャー騒いで追い返すってのが定番になりつつある。
最近じゃ坂下ちゃんが混ざってきて文句言っていた子も最近じゃ坂下ちゃんがいるの当たり前ってなっていて、文句言ってたのが何やったん。
ま、えぇわ。友達は友達同士でも仲良くしてもらわんと、ウチが窮屈感じてまうもんね。
このまま、な〜んとなくガッコのみんなと仲良くやれたらサイコーやん?
なんて考えながら、授業中にクリスマスのスケジュールを立てるのに忙しいウチやった。