合体戦隊ゼネトロイガー


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act1 養成学校ラストワン

「よぅ、お前、教官面接に来た奴か?」
不意に背後から話しかけられ、辻鉄男は足を止める。
教官面接。
そうだ、自分は面接を受けに来た一人だ。
ここ、パイロット養成学校『ラストワン』の教官になる為に。
振り返ると、見るからに気さくを絵に描いた男と目があった。
「面接会場は、そっちじゃないぞ。案内してやろうか?」
今まさに突き進もうとしていた廊下を指さされ、鉄男は恥ずかしさに赤面する。
案内図通りに歩いてきたつもりが、全くの反対方向へ来てしまったようだ。
「あ……そ、その」
「ん?なんだ、緊張してるのか?大丈夫、大丈夫。面接っつったって質問に二、三、答える程度だから。ほら、ついてこいよ!」
気恥ずかしさと緊張でどもる鉄男の腕を取ると、男は歩き出した。
「今年の面接は全部で四人だったっけかな?ま、四人なら激戦ってわけでもないしラクショーだろ」
面接を受ける側でも知らない情報を、べらべらと聞かされ、鉄男は目を丸くする。
「随分と詳しいんだな」
「ん?まぁね。で、お前、ここの教官になろうってからにはさ。なにかしら、得意分野があるんだよな?何?得意な分野」
「……武術だ、護身術程度だが」
一方的にまくしたてられ、それでも、鉄男はボソボソと答える。
すると男は、ぱぁっと顔を明るくして、バシバシと勢いよく鉄男の背中を叩いてきた。
「へぇ〜、細っこいからインテリ系かと思いきや、体育会系とはねェ。驚いたよ、すごいじゃん、この腕で誰かを投げ飛ばしたりするのか!後で俺にも教えてくれよな、護身術っての。ヘヘ、俺だって強くなりたいしさ」
初対面の男に細いと言われるほど、鉄男の体格はパッとしない。
背も平均だし、恰幅も筋肉のつき具合も人並み。
武術が得意だと言っても、なかなか信じてもらえない事のほうが多い。
その鉄男を、この男は褒め称え、さらに教えてくれとまで言ってくれた。
慣れぬ賛辞に、しばし鉄男は硬直していたが、やがて頬を赤らめて俯いた。
「あ……ありがとう」
「ん?なんだ、照れちゃってんのか?ははっ、可愛い奴だなぁ!」
「あ、いや、その……武術のことで褒められたのは……初めてだから」
「お前の周辺の奴らってつれない奴ばっかだったんだな。けど、もう安心だぜ?俺と知りあったからには、毎日お前に手ほどきを……っと、そういや、そうだ」
ん?と顔をあげた鉄男に、男が名乗りをあげる。
「まだ名乗ってなかったよな。俺は木ノ下進。お前は?」
「あ……す、すまない」
思わず謝る鉄男の肩に、木ノ下の両手が被さる。
「謝るこたないって。名乗るのが遅かったのは、俺もだしさ。で、お名前は?」
「つ、辻……鉄男だ」
「ふんふん、辻くんね。鉄男って呼んでいい?」
全くの初対面で、いきなりのファーストネーム呼び。
鉄男は些か面食らったが、目の前の男、木ノ下は屈託がない。
何より邪気のない瞳で微笑まれ、眩しさに視線を下へ落としながら、鉄男は頷いた。
「あ、あぁ」
「ok、鉄男。じゃあ面接に合格したら、また会おうな!」
「あっ……!」
言うが早いか、木ノ下は身を翻して廊下を去ってゆく。
呼び止めようとして、気がついた。
いつの間にか、面接室のドアの前まで到着していた自分に。


面接官を待つ間。
「よぅ……お前、ニケア人か?」
ぶしつけに声をかけられ、鉄男は声の主へ振り返った。
太い眉毛に、無骨な顔つき。名前タグには『鉄柳ヒロシ』と書かれている。
屈強な胸板が迷彩カラーの上着を押し上げていて、如何にも肉体労働者を偲ばせた。
短く刈り上げた髪の色は、赤。少なくともニケア人ではない。
「ニケア人が、この辺りをウロウロしているのは珍しいな」
ヒロシは、上から下まで鉄男をジロジロと眺め回し、そんなことを言う。
一目でニケア人だと判るように、鉄男の髪は黒い。真っ黒だ。
男前と言ってもよい顔つきをしているが、瞳の暗さが他人との間に壁を作っている。
「逃亡者か?」と尋ねられ、鉄男は首を真横に振った。
「違う」
「なら、旅行者か」
決めつけられ、それにも首を振った。
「いや、自分の判断で国を出て、ここへ来た」
「ふぅん……」
またジロジロと眺め回される。
値踏みされるかのような目つきにウンザリし、鉄男は視線を外す。
だがヒロシのほうは、お構いなしに話しかけてきた。
「どうだ、ベイクトピアは。ニケアと違って都会だろう?」
「……」
「返事ぐらいしろよ、田舎者」
なおも鉄男が黙っていると、胸ぐらを掴まれた。
「口の訊き方を忘れたかい?ニケア人さんよ」
「鉄男だ。辻、鉄男」
「あぁ、そうかい辻さん。で、ベイクトピアの感想を――」
目つきも悪く睨み合う二人の言い合いを、横から別の誰かが遮った。
「ベラベラと、さっきから五月蠅い男だな。面接開始すら黙って待てないのか」
少し離れた場所に腰掛けた、眼鏡の男だ。
身長は鉄男より高く、ヒロシよりは低い。薄紫の髪を長く伸ばし、すらりとしていた。
名前タグに目をやると『ケイ=コクトー』と書かれているのが確認できた。
「なんだと、てめぇ……」
にじり寄るヒロシにもケイが臆した様子はなく、眼鏡の奥からジロリと睨み付ける。
「五月蠅いから五月蠅いと言ったまでだ。文句を言われたくなければ黙っていろ」
「確かに、な」
壁により掛かっていた、褐色の男が頷く。
背の高い男だ。ヒロシよりも大きく、筋肉質である。
その割には目元が優しげに微笑んでいて、威圧感を和らげてくれる。
緋色の布を身に纏っている。どことなく異国情緒の雰囲気を感じた。
「そいつの言うとおりだ。こうして待っている間も、俺達はアレで――」
天井を指さされ、誰もが上を見上げる。
小さく光る四角いもの、あれは監視カメラではないか?
「――見張られている。ここでの態度も、採用に響くかもしれないぜ」
男の名前タグをチラリと盗み見て、鉄男は頭を下げた。
「忠告感謝する。コクトー、それからゲイランも」
「さっそく名前を覚えてくれたのか?嬉しいね」
ゲイランと呼ばれた褐色男が、片手をあげて微笑んだ。
「けど、俺のことはダグーでいいよ。ゲイランって呼ばれるのは、くすぐったいな」
ケイのほうは涼しい顔で鉄男の礼を無視していたが、不意に扉へ視線を向ける。
「足音が近づいてくる。そろそろ始まるぞ、面接が」


面接室――を挟んだ、隣の部屋にて。
マジックミラー越しに、学校長の御劔高士が部屋を覗き込む。
「どうかな、今年の教官志望者は。生きの良いのが集まっているかい」
同じく部屋を覗き込みながら、秘書の相沢文恵が頷いた。
「データの上だけで言うならば、良い人材が集まっているようですわね」
一枚手渡され、隣の部屋の人物と確認する。
「ふむ……ダグー=ゲイラン、二十六歳。元修道僧、ね。元修道僧ってんじゃアッチのほうは、どうだろう。無理かな?」
アッチと中指を立てる学長に、文恵の眉が潜められる。
「知りませんわ、そんなこと。今年の面接官に期待しては如何ですか」
「今年は誰が面接を?」との問いには、クールに答えた。
「エリスです。エリス=ブリジッド」
「エリス……あぁ、あいつの担当の子か」
腕を組みながら、御劔は尚も尋ねてくる。
「彼女で大丈夫なのかな?彼女は精神状態が安定していないだろう」
「ですが」
御劔のほうを見ようともせず、文恵が答えた。
「エリスは優秀です。私情を挟まず公平に判断できるのは、彼女をおいて他におりません」
「……まぁ、君が言うなら、そうなんだろう」
まだ御劔学長は信頼しかねる様子であったが、高々とチャイムが鳴り響き、近くの椅子へ腰を下ろした。
「そろそろ始めるか。エリスを中へ」
「了解です。エリス、中へ入って」
通信を隣の部屋に切り換え、呼びかけると、金髪の少女が入ってくる。
面接の開始だ。


部屋に入ってきたのが少女と知り、四人は対応に個々の違いを見せた。
「女か……なるほど」と小さく呟いたのはケイで、音もなく立ち上がる。
一人前の女性を相手にするかのような挨拶を、エリスへしてみせた。
ヒロシはヒューッと下品に口笛を鳴らし、両手を広げてエリスを歓迎する。
「おやおや、今回の面接官は随分とかわいらしいお嬢さんじゃないか!いつものレディは、今回はお休みかい?」
「レディ?」と聞き返すダグーへは、振り返りもせずに答える。
「相沢女史だよ、学長の秘書」
「あぁ……そうか、いつもは秘書が面接官をね」
二人の会話を聞くに、ヒロシは面接の常連、ダグーは今年が初挑戦か。
皆の態度を、それとなく盗み見ながら、鉄男は無言でエリスを観察する。
黒いワンピースを着ている。
肌を覆い隠す部分の方が多い、長袖のワンピースだ。襟元だけが白い。
髪は金色、腰の辺りまで伸ばしており、緩やかにウェーブを描いている。
病気かと思えるほど、肌が白い。
透き通るような肌とは、きっと彼女のような肌を指すのだ。
整っていて美しい顔立ちをしている。
ただ、瞳が虚ろに見えるのは、鉄男の気のせいだろうか?
無遠慮に眺めていると、少女も鉄男の視線に気づいたか、見つめ返してきた。
「あなたは……」
不意に話しかけられて思わず身構える鉄男に、彼女が囁いた。
「あなたからは、不思議な存在を感じます」
「不思議な存在?」と聞き返したのはダグーだが、少女は無視。
視線をまっすぐ鉄男に向けたまま、続けた。
「……あなたが、シークエンスなのですか?」
シークエンス、という単語には誰一人聞き覚えがないのか、皆して首を捻っている。
鉄男だって然りだ。聞いたこともない。
なので、シークエンスとは何だ?そう尋ねようとしたのだが、館内放送が質問を遮った。
『エリス、余計な雑談はやめて。面接を開始しなさい』
冷たいが、よく通る声。
ヒロシが小さく口笛を鳴らす。
「なんだ、いるんじゃないか女史」
すると、今の声の主が相沢文恵か。学長の秘書だという女だ。
誰にともなく頷くと、少女エリスが一同を見渡す。
「面接を開始します」
「よしきた。今年は、どんなテストをやらせるつもりだい?」
軽口を叩くヒロシを無言で見つめた後、エリスの視線はケイ、ダグーと移動して、鉄男に止まる。
「今年は合同試験になります」
もう一度、ヒロシへと視線を戻してからエリスは言った。
「私を候補生と見立てて、キスして下さい」
聞いた瞬間、鉄男は我が耳を疑った。
キス?キスっていうのは、つまり接吻、唇を重ね合う行為のことであろう。
馬鹿な。少女とキスするのがパイロットを育成するのと、どう繋がってくるのだ?
しかし、えっ?となったのは鉄男だけで、他の皆は平然としている。
もしかして、パンフレットや広告には書いてある、当然の事項なのだろうか。
日時と場所しか確認していなかったことを、鉄男は少しだけ後悔した。
「合同で?それは、つまり……全員で同時にかかるのか?」
鉄男の他にも困惑の体を示した男がいた。ケイだ。
何事にも動じなさそうに見えて、意外や動揺しまくった表情を浮かべている。
目が、キョロキョロと落ち着きない。
「そりゃあないだろう。一人一人順番にやれってのさ、皆の見ている前でな」
ヒロシのフォローに頷き、エリスがケイを見据えた。
「皆の見ている前で候補生と共に手を取り合い戦うのが、教官の役目です。つまり、今年の試験は実技オンリー……そういうことですね」
「それならそうと、そう説明してくれ」
モゴモゴと口の中で呟くと、ケイはふいっと視線を外す。
なにやら頬が赤く染まっているのは、勘違いに対する恥じらいか。
だがケイの自己嫌悪も、どこ吹く風。エリスは淡々と進行する。
「では鉄柳ヒロシさん。あなたから開始して下さい」
「よぅし。覚悟しろよ、お嬢ちゃん。とろけるようなキスをお見舞いしてやるぜ」
何故か指をボキボキ鳴らして、エリスに近づいてゆくヒロシ。
鉄男の隣に立っていたダグーが、小声で囁いてきた。
「今時あんなクサイ台詞を吐く奴がいるとはね。俺の見立てじゃ、あいつは童貞だな。あれじゃ女にはモテないよ」
そのヒロシは、ガバッとエリスを抱きかかえる。
ブチュウっと音が聞こえてきそうな勢いで、エリスに口づけた。
いや、口づけたというよりは、少女の唇に吸いついた。
なるほど、全然手慣れているようには見えない。
案外、ダグーの予想は大当たりかもしれなかった。
ジュルジュルと聞こえてくるのは、ヒロシが唾液を啜っている音だ。
己の物なのか、それともエリスの物なのかは判らないが、やたらと人を不快にさせる。
「ムードがないな、ムードが。それに、あのままじゃ二人して窒息するぞ」
隣の男の呟きを聞き流しながら、鉄男も二人を観察する。
ダグーの指摘通り、すでにヒロシの顔は赤い。恐らくは酸欠によるものだ。
対して、エリスは鉄仮面。
だが、やはり息が苦しいのかヒロシの袖を握る手が、ブルブルと震えている。
「っぱァッ!」
先にヒロシの酸素が切れて、やっとこ唇を解放する。
放り出されて壁に手をついたエリスも、肩で荒く息をした。
「……次、ケイ=コクトーさん。どうぞ」
ケイが問い返す。
「続けてやって、大丈夫なのか?」
無表情な瞳が、彼を捉えた。
「私に対する情けは無用です。これは試験なのですから」
淡々と応えるエリスへ、ケイの更なる注文が飛ぶ。
「では、その前に唇を消毒してくれないか。奴と間接キスなど御免被りたい」
「なんだと、貴様ぁ!」
さっそくいきり立つヒロシはダグーが「まぁまぁ」と押しとどめ、言われたとおり部屋備え付けの洗面所で口を軽く濯いだエリスが、再度ケイを促した。
「……ではケイ=コクトーさん。始めて下さい」
「心得た」と頷くケイは、がっちがちに緊張している。
鉄男がダグーを見上げると、褐色の男も頷きで返し「あれも駄目だな」と、肩をすくめた。
ちからのこもった勢いでエリスの両肩を掴み、ケイが小さく囁く。
「目を瞑って、顎をあげてくれ」
言われたとおり目をつむり、顎をあげたエリスが上向き加減になったところで唇を重ねた。
否、押しつけたかと思いきや時間にして数秒後、すぐに離れて口元を拭う。
「……ふ、ふぅ。これでいいのだろう?」
また目が泳いでいる。初心者だと言っているも同然の態度だ。
エリスは良いとも悪いとも答えず、次の名を呼んだ。
「次、ダグー=ゲイランさん。どうぞ」
「オーケイ。じゃ、ここらでお手本ってのを見せてやるか」
ダグーは自信たっぷりだ。歩いていく動作一つにも、よどみがない。
散々他人の試験に駄目出しをしていた彼の事だ、期待できるものがある。
本当に上手かったら、是非とも手本にしておきたい。
観察する鉄男の体にも、無意識に力がこもる。
ダグーは軽くエリスの顎を持ち、上向き加減に見上げさせた。
ここまではケイと同じだ。
だがケイと違ったのは、彼がいともナチュラルにエリスと唇を重ねたこと。
ヒロシの時とも異なって、時折エリスの唇が半開きになる。
呼吸をさせてあげているのだ。ダグーの心遣いに、鉄男は一人、感心する。
彼らの口の中で、ちらちらと動くものがある。
目を凝らしてみれば、それは何と、舌であった。
舌でエリスの口内を舐めまわし、舌に舌を絡める。
器用な男だ――と、鉄男は感心するばかり。
エリスの方にも、変化が見られた。
相変わらず鉄仮面ではあるものの、ダグーの服を掴む手に、ちからがこもっている。
だが、ヒロシの時の酸欠とは違う。力一杯握るのではなく、一定の強弱を感じた。
ややあって二人の唇は離れ、エリスが小さく息をつく。
瞳は虚ろだが、心なしか頬が赤く染まっているようにも伺えた。
ダグーは平然としており、柔らかな笑顔を浮かべると、鉄男へ余裕の視線を向けてくる。
「と、こんなもんかな。ラストは辻、キミの番だぜ」
名を呼ばれ、鉄男はハッと我に返る。
今のダグーの手本で、自分にも真似できそうなポイントはあっただろうか。
……ない。
何も、ない。
あまりにもダグーの振る舞いは自然すぎて、彼でなければ、あの一連の行為など到底出来ないように思われた。
仕方がない。ここは自分なりのやり方で、やるしかなさそうだ。
誰かとキスするなど、全くの未経験だ。
それどころか誰かとつきあった経験すら、鉄男には一度もない。
産まれてからずっと、この年齢になるまで、彼は孤独だった。
近寄ってくる女がいないでもなかったのだが、彼の方で拒絶していた。

怖かったのだ。
他人が。

だが弱い自分を捨てる為、そして対人恐怖症を克服する為、鉄男は教官に志願した。
意を決して、エリスと向かい合う。
小柄な少女だ。背の丈など、鉄男の肩ほどもない。
髪をすくい上げてみると、驚くほど、すんなりと指が通る。細い髪質だ。
無表情な目が、鉄男を見上げてきた。
「どうぞ」
「いくぞ」
決意を秘めた目で頷き、エリスの頬に軽く口づける。
唇にするつもりは、なかった。
上手くできる自信がないし、何より皆と同じ事をしてもインパクトに欠けるではないか。
エリスはキスしろと言った。言ったが、しかし唇限定とは言わなかった。
だから――
だから、あえて鉄男は頬へのキスを選んだ。
……まぁ、はっきり言ってしまうと怖かったのだ。唇へのキスが。
まだまだ、鉄男には度胸が足りない。
時間にしてケイよりは長く、ダグーよりも短いうちに、鉄男は唇を放す。
内心ドキドキしながらエリスを見ると、これが全くの鉄仮面。
ヒロシの時に見せた息苦しさや、ダグーの時に見せた紅潮は一切ない。
ケイと同様、これは不合格の予感がした。鉄男は一気に、目の前が暗くなった。
「お疲れ様でした。試験の結果は後ほど、郵送でお送りします」
エリスが淡々と試験の終わりを告げる。
「これだけか?物足りないぜっ」
「やっと終わりか。何の面接よりも緊張するな……」
余裕風をふかすヒロシや、ケイの独り言が右から左へ抜けていく。
「そう、落ち込むなよ。落ち込むのは結果を見てからだぞ?」
ダグーの励ましすらも聞き流し、鉄男は暗雲たる思いで面接会場を後にした。


数日後。
落ち込む鉄男の元に、一通の郵便が舞い込んでくる。
それは、面接の合格を告げる手紙であった。


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