2018クリスマスif

今宵はクリスマス。
そう、東京ならね――

ハロウィンの時にも、そんなことを考えたなぁと思いつつ、可憐はサイサンダラの街並みを眺めていた。
サイサンダラには祭りという概念がないのか、はたまた、たまたま可憐の来た時期が悪かっただけなのか、まだ、この世界で祭りを経験した覚えがない。
ふと、どこからか賑やかな音楽が聞こえてくる。音のするほうへ歩いていくと、広場に出た。
そこでは人々が集まって、大樹に飾り付けを行なっていた。
普段着な者もいれば、着飾っている者、あるいは仮装した者もいて、これから何かの祭りが始まるのだと可憐にも予想させた。
不意にポンと肩を叩かれて可憐が振り向いてみれば、クラウンが、いつもの黒服で立っていた。
ただし頭には猫耳、お尻には黒くて細い尻尾もつけていたが。
「え?何?黒猫?えっ?仮装?えっ、クラウンが!?」
一度では把握しきれず何度も尋ねてくる可憐に、そっとクラウンが視線を外す。
「……おかしいだろうか」
「い、いや、似合って……るっ?」
黒猫の仮装は意外やクラウンに似合っていた。
彼曰く、今日は今年最後の収穫祭にあたり、収穫の神に祈りを捧げるのだという。
仮装した者達に仮装をしていない者達が雪玉をぶつけることで来年の厄を祓うのだと言われたが、この黒にゃんこに雪玉をぶつける?
そんな酷い真似、可憐には出来ない。
「見つけましたよぉ〜、うふふっ。そぉれ、厄祓いっ!」
「あ、危ないっ!」
唐突に何処からか走り寄ってきたエリーヌが雪玉を投げてきたので、咄嗟に可憐はクラウンを庇う。
「おいクラウン、お祭りの主旨をちゃんと可憐に説明したんだろうね?」とミルに怒られて、クラウンは申し訳なさげに可憐を見た。
「カレン。俺を心配してくれるのは嬉しいが、これは祭りだ。カレンも遠慮無く、俺に雪玉をぶつけるといい」
「そ、そんなの……そんなの、出来ないよっ!」
頷く代わりに可憐はクラウンの腕を引っ張り、その場を逃げ出した。
「こら、可憐!厄を祓わないと来年不作になっちゃうだろ!」という、ミルの怒りを背に受けながら。

どこをどう走ったのか、二人は袋小路の行き止まりで立ち止まる。
エリーヌもミルも、ついてきていない。
きっと他の厄役を見つけて、雪玉でも投げに行ったのであろう。
もう一度可憐はクラウンを見た。
いつも通りのムキムキ胸板がシャツを押し上げているものの、猫耳と猫尻尾が恥じらう表情に相まって、心なしか可愛く見えてくる。
上から下までクラウンを眺め回しながら、可憐は文句を表に出して呟いた。
「どうせなら写真を撮りまくってSNSにUPすりゃいいのに。なんで雪玉なんかぶつけるんだ、野蛮だなぁ」
「SNS?写真?……なんだ、それは。カレンの生まれた世界での文化か」
「あぁ、うん。コスプレ写真をSNSにUPすると、皆喜んでイイネしてくれるんだよ」
知ったような口を訊いているが、可憐自身はROM専だった。
クラウンの黒猫をUPしたら三百イイネはカタイんじゃないかと可憐が内心ニヤニヤしていると、上空から目映い光が差してきて、二人の元にキラキラしたものが降りてきた。
「ん?これもイベント演出?」と首を傾げる可憐に向かって、キラキラしたものが声をかけてくる。
『私は、あなたのことを、ずっと見ていました。そして、あなたの優しさに心を打たれました。心優しき人よ、あなたに褒美を授けます。今日限りの願いを一つ、叶えてあげましょう』
めちゃめちゃ怪しいキラキラに対して「……さがっていろ、カレン」と警戒心バリバリなクラウンとは対照的に、可憐は至って気楽に問いかけへ答える。
「あ、じゃあ、だったらクラウンを女体化してよ」
「なっ……か、カレン、どうして!?」
「だって、この格好で女の子だったら、もっと可愛くなると思うんだよね」
『いいでしょう。あなたの願い、叶えて進ぜます』
「ちょ、ちょっと待て……ッ!」
本人の意志など知ったことではなく、キラキラは勝手に可憐の願いを叶えると、さっさと天へ登っていってしまった。
後に残るは可憐と、むちむち黒猫のクラウンのみ。
黒服を押し上げる膨らみに、早くも可憐の視線は釘付けだ。
「思った通りだ、すごく可愛いよクラウン!パイオツの大きさといい、クランちゃんの再来だな。あ、でも今回は黒猫だからクロちゃん?」
「……クラウンと呼んでくれ」
クラウンは大きく溜息をつくと、気持ちを切り替える。
ハロウィンの続きをしたいと可憐が願うのであれば、それでもいい。
あの時は大口を叩いておきながら、上手くいかなかった失敗もある。
リベンジのチャンスだ。
「前から思っていたんだけどさ、クラウンの格好ってエッチだよね。いや、女の子の身体だからってんじゃなくて男の状態でも」
「えっ?」
素っ頓狂な言葉をかけられて、驚くクラウンに可憐が言う。
「だって身体のラインにピチピチじゃん?そのシャツ。その格好でビーチクが立っていたりしたら、エリーヌだって興奮して襲いかかってくるんじゃないの」
「あいつは立っていようがいまいが襲ってくる……!というか、むやみやたらに乳首など立てたりしないッ」
「そぉ?でもヒゲおばさんに襲われた時も乳首ビンビンだったじゃん。あん時エリーヌがいなくて良かったな〜って、今だから言えるけど」
嫌なトラウマを思い出させられて、クラウンの眉間に縦皺が寄る。
カレンは俺を怒らせたいのか?と疑ってみるも、可憐はノホホンとした表情を浮かべており、恐らく本人としては挑発のつもりなど全くなく、思ったことを素直に言っているだけなのだ。
「まぁ男の時もヤバイけど、こうやって女の子になると、ますますヤバイよね。デカパイってだけでも充分やばいのに、ビーチクまで立ったりしたら」
「だ、だから無闇に立てたりはしない、と……!」
「そぉ?でも、こうやって触っているだけでもコリコリになってきて」
「……っっ」
可憐の手の中でクラウンの乳首は堅さを増し、本人も、それが判っているのかギュッと瞼を閉じる。
こうやって彼の様子を眺めているだけでも満足なのだが、どうせなら、もっとエッチな真似をしてみたい。
言うなれば、エッチな真似を強制されて恥ずかしがるクラウンを眺めたい。
可憐の中に存在するSな願望は、今でも健在であった。
「ねぇクラウン、今度こそ素股やってよ」
「ん、んんっ……そ、それよりも」
可憐の腕から、するりと抜け出したクラウンが跪く。
何をするのかと見守っていると、可憐のズボンのチャックを降ろして、みっともなくもお粗末な物を取り出すもんだから、あまりの大胆さに可憐も目が点になった。
「え、ちょ、ちょっとクラウン、何を」
「リベンジだ。前回では、お前を気持ちよくさせてやれなかったからな……」
まさかフェラチオするつもりなのか。
素股よりもハードルが高いと思うのだけど。
可憐だったら絶対に男のブツなど咥えたくない。
想像しただけでも口の中が不味くなる。
だが可憐の疑似オエッな気分など知ったことではなく、黒猫クラウンは両手で持って抱え込むと、本当にパクリと咥えこんでしまった。
続けてペロペロと彼の舌が可憐の気持ちいいポイントを立て続けに舐めてきて、「うひぃっ!」と変な声をあげて可憐は思わず腰を浮かせる。
ちょ、ちょちょちょ、やばい、ヤバイッて、これ!キンモヂイイ゛ィィッ!
かつてデブオタニートだった頃に自分でやっていたオナニーなんか比較にもならない快感が可憐を襲い、ガクガクと足が震える。
腰に力が入らない。
ぢゅうっと先端を吸われるたびに、力が抜けていく。
っていうか美味しそうにペロペロしているけど、俺のチンコはCIAOちゅ〜るじゃないんだぞ?と、可憐が夢うつつに馬鹿な事を考えている間にも、クラウンの舌は休まず先っぽから根本に至るまで舐めつくし、もう一度尿道を吸われた時には我慢できず、可憐は呆気なく果ててしまった。
たっぷり口の中に出されたというのに、クラウンは顔色一つ変えず全てを飲み込んだ。
「どうだ?カレン。前と比べて気持ちよさの程は」
「う、うぅっ。魂が、抜けるかと思った……」
「どうやら満足してもらえたようだな」
こちらの反応を見て少し得意げに笑うクラウンは、もうとっくに女の子の身体ではなくなっていたのだが、あえて戻っているとは教えずに可憐も言い返す。
「……舐めてる時のクラウンが、あまりにも可愛いもんだから、それだけでも気持ちよくなっちゃったよ」
「なっ、なにを、突然」
「いやいやホントホント、俺のチンコを好物みたいに抱え込んじゃってペロペロペロペロ必死になって舐めちゃっている可愛いニャンコちゃんが、さっきまでの君だったんだからね」
イケメンボイスで耳元へ囁いてやったら、クラウンはカァッと頬を赤らめて俯いた。
これだ、これが見たかったのだ。
できれば女の子のうちに見ておきたかったような気もするが、男に戻っても大差なく可愛かったので問題ない。
「今度また女体化したらさ、こんな寒いところじゃなくて室内でじっくり気持ちよくなろう。この前も今度も俺一人だけ気持ちよくなっちゃったから、次こそはお互いに、ね」
なおも耳元で囁く可憐の腕の中で、クラウンが僅かに顎を引く。
リベンジは、ひとまず成功した。満足だ。
だが――ちらと上目遣いに可憐を見上げ、こうも考えた。
今度また、こうした機会があったとしたら、その時はカレンの女体化が見てみたい。
女神のように神々しくも美しくなる可憐を勝手に妄想し、クラウンはポッと頬を赤らめるのであった。
END

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