2018ハロウィンif

今宵はハロウィン。
――そう、地球ならね。

だが可憐が今いるのは、サイサンダラという名の異世界だ。
従ってハロウィンなんてものはなかった。
そう思っていた時期は、可憐にもありました。
「ちょいと、そこのハンサム兄さん、ハンサムやけど女体に縁のない童貞兄さん」
ぶしつけにも図星をさされて、可憐はムッとして声の方向へ振り向いた。
声をかけてきたのは、街角の占い師のようだ。
四角い机の前に腰掛けている。
パッツンパッツンの短い髪の毛を、不自然に赤く染めている。
レインボーに輝くサングラスをかけ、見た目は全然占い師っぽくない。
どちらかというと、パッと見の印象はジャッカーに似ている。
しかしジャッカーよりも声が野太くガラガラなので、可憐は追求を避けておいた。
「何?俺に何か用?」
「モテそうでモテない兄さんに、ご朗報だよ〜?ハロウィン限定御用達アイテムを、特別にお兄さんにプレゼント!」
可憐は驚いた。
「えっ、この世界にもハロウィンってあるの?」
すると占い師はパタパタと手を振り、メタ発言をかましてくるではないか。
「いや、あらへん。せやけど今宵は一夜限りのIFやし?」
考えてみれば、こうしたメタ発言は可憐の特権だったはずだ。
なのに本編では一度もメタ発言をしていない。
発言をする暇が彼に与えられていないからだ。
地の文章まで些かメタ臭くなってきて、ハッと可憐は我に返る。
手には、いつの間にか謎のアイテムが握らされていた。
先端が猫の手になっている。一見孫の手のようだが、孫の手ではない。
持ち手部分にはボタンがついていた。
「これぞハロウィンにゃんにゃんTS棒でござ〜い。適当な野郎の前で棒を振れば、アラ不思議!一瞬にして女体化します。一夜限りのIFですし?めいっぱい、ギシギシアンアンをお楽しみ下さい?」
「ギ、ギシギシアンアンて……」
ごくり、と可憐の喉が鳴る。
占い師の言いたいことは判っている。
これはIFだ。
IFなのだから、本編へ記憶は引き継がれない。
しかも相手が男なら女体へ不埒な真似をしても、男に戻ればなかったことに出来る。
素晴らしい。素晴らしいではないか、にゃんにゃん棒!
TSというのはトランスセクシャルの略称であろう。
可憐はキモオタなので、そのへんの知識もバッチリ把握していた。
IFなら女の子に手を出してもいいんじゃないかともチラッと考えたのだが、万が一、本編に記憶が引き継がれると面倒になる。ここはTS一択だ。


森の中に、古びた木こり小屋がある。
かなり昔に放置されたと思われる空き家だ。
クラウンは何の疑いも持たずに、待ち合わせ場所に指定した空き家へやってきた。
よほど可憐を信頼していると見える。
これから己の身に何が起きるとも知らずに……
セクハラ被害に遭った彼を罠に嵌める事への罪悪感がなかったわけではない。
だが、自由に出来る女体の魅力には勝てなかった。
所詮は自分に優しい、軟弱キモオタニートである。
「ハァハァ、クラウン。よく来たねハァハァ」
「どうした、カレン。息を乱して……此処まで走ってきたのか?」
見当違いに労ってくるクラウンへ、にっこり天使の微笑みを向けると、可憐は、いきなりTS棒を振り回した。
「マジカルマジカル、パラパラリ〜ン♪そぉ〜れ、可愛い女の子になっちゃえ〜!」
そんな呪文を言えとは言われていなかったが、言ってみたくなったのだ。
無言で棒を振り回す光景というのも、これはこれで想像してみたら怖かったので。
可憐が棒を振り回すと、棒の先からは肉球型の光線が放たれる。
「うわっ、な、なんだ、これっ……!」
光線が当たった瞬間、クラウンの姿は一瞬にして女体化した。
胸がバイーンと弾けて、黒いシャツを目一杯押し上げてくる。
いつものマッスルな肉ではない。もっと柔らかそうなお肉だ。
髪の毛も硬そうな剛毛から艶やかな黒髪へと変化して、眉毛も細くなり、手足だってしなやかだ。
目つきだけは変わらないが、しかし可憐の視線は撓わな胸元に釘付けとなった。
「クラウン、いやクランちゃん!おっぱいでパフパフしてもいいですか!」
「クッ、クランちゃん!?いや、俺はクラウンだが……それに、ぱふぱふ、とは?」
視線を外して困惑気味な相手へ、可憐は鼻息荒く説明してやる。
「パフパフというのはだねぇ、チミィ。おっぱいの間に顔を挟んで、おっぱいで顔を揉み上げる行為だよ。そして、おっぱいをモミモミしながらビーチクをコリコリすると最高だね!」
クラウンには可憐が何を言っているのか判らないと思うが、可憐自身にも自分が何を言っているのか判らないので大丈夫だ。
もう、説明なんてすっ飛ばして早く触ってみたい。たわわなお肉を。
遠慮も容赦もなく、可憐はぐわっと胸に掴みかかる。
「うほっ!やーらかぃっ」
ぐにぐに揉んだら、クラウンは「んっ」と小さく喘いで目を瞑った。
「この見事なパイオツたまりませんなぁ、ハァハァ」
谷間に顔を突っ込んで、すんすん匂いを嗅いでみる。
なんとなく良い匂いがするのは、可憐の気のせいだろうか?
いや、普段のクラウンが、どんな匂いを発しているかも知らないのだが。
両胸を掴んで、自分の頬に押し当てる。
まろやかに柔らかく、それでいて弾力がある。
「クランちゃんのオッパイ、やわらかい……ママに抱かれているみたぁぁい」
「だ、だから俺は、クランちゃんではなくクラウン……ッ」
クランちゃん呼びには激しく抵抗してくるくせに、行為自体は嫌がっていない。
そのように見えて、可憐は内心首を傾げる。
自分だったら、男と抱き合うなんて絶対に嫌だ。即突き飛ばす。
もしかして、やはりこやつは俺を好きなのでは?
なんて疑問が再び脳裏に浮かんできたが、それよりも今は女体だ。
掌の中で堅くなる乳首を人差し指と中指で、きゅっと挟んでみる。
「んぁっ!」と短く叫んで、クラウンが可憐の頭を抱きしめてきた。
「ほほぅ、クランちゃんはビーチクが弱点ですかな?かな?」
なおもクリクリ摘んでやったら、クラウンはブルブルと体を震わせて小さく呻く。
「んっ……か、カレン、そこは、弄られると……」
「感じちゃう?感じちゃいますかな?ハァハァ」
鼻息を荒くしたまま顔は谷間に突っ込んだ格好で、両乳首を弄くり回す。
鼻息のくすぐったさと乳首への刺激の二重コンボだ。
特に鼻息の気持ち悪さがハンパではないんじゃないかと自分でも予想できるのだが、それでもクラウンは可憐を邪険に突き飛ばしたりはせず、ぎゅっと抱きしめている。
「クランちゃんは俺の事が好きなのかな?ンハァハァ」
手を休める事なく尋ねてみれば、クラウンは小さく囁いた。
「す……好きじゃなかったら……話なんて、聞こうとも思わなかった」
「ほぅ。じゃあ、好きなのを認めちゃうんだねウハァハァ」
返事はない。
可憐が谷間から顔をあげてみると、クラウンは口元をへの字に折り曲げている。
怒ってしまったのかと思いきや、眉は下がり八の字で、困惑しているだけのようだ。
しばし無言で見つめ合った後、クラウンが尋ねてきた。
「なんで、こんな真似を……?」
「クランちゃんのこと、俺も好きだからさ」
ただし、女体化時に限る。
普段のクラウンのことも、勿論嫌いではない。友達としてなら、好きだ。
しかし平素の彼が相手であったら、胸なんぞ揉もうとも思わないであろう。
「クランちゃん……って」
「今はクランちゃんだろ?おっぱいデカイし」
モミモミっと揉んだだけでも、クラウンは敏感に反応する。
ぎゅぅっと可憐を抱きしめた形で、さらなる追求を飛ばしてきた。
「だっ、大体、どうして、こんなっ、こんな体に、俺を」
「クランちゃんになったら、エッチなことが出来ると思って?いや、しかし、こんなデカパイになるとは予想外だったけどネ!サイズいくつかな〜Lかなぁ〜?うほほっ、AV女優みたいだよクランちゃん」
涎を垂らしかねないぐらいに、可憐は興奮しまくりだ。
とても実年齢29歳とは思えないほど、態度がオッサン臭い。
「クランちゃんのオッパイ、いただきますっ!」
ちゅうっと服の上から乳首に吸いつく。
クラウンは過敏に反応し、びくんっと体を弓なりに反らせた。
やっぱり乳首で感じるようだ。
可憐は舌でレロレロ乳首を転がしながら、クラウンの反応を伺った。
「カレン……ッ」
相変わらず嫌がる素振りは一切ない。
突き放すどころか可憐の頭をぎゅっと抱きしめ、胸に押しつけてくる。
過去セクハラ被害に遭ったのなら、もっと過剰に抵抗してきてもいいはずだ。
それとも、相手が可憐だから遠慮しているのだろうか。
ちゅぽんと乳首から口を離した直後、クラウンが尋ねてきた。
「……ぁっ、カレンは、胸が大きければ誰でもいいのか……?」
瞳には涙を浮かべており、頬を赤く上気させて息も乱れている。
そんな反応を見せられたら、下手なエロアニメよりも興奮するではないか。
「違うよ。クランちゃんだからこそ、愛撫をしているんじゃないか」
「俺だから……?」
「そう。何度でも言うけど、俺は君の事が好きなんだ」
ただし、女体化時に限る。大切なことなので二回言いました。
だって一時的な女体化なら、後腐れなくエッチなことができるからねぇ!
――とは、間違っても本人には知られたくない本心だが。
「クランちゃん、お顔がとろけちゃってるよ。ビーチクれろれろで、いっぱい感じちゃったんだね……だが、これくらいじゃ終わらせないよ?ハァハァ」
クラウンを、そっと埃まみれの床に横たわらせた。
改めて上から眺めると、胸の大きさには圧倒される。
巨乳なのに垂れたりせず、お椀型を保っている。理想のおっぱいだ。
シャツをめくりあげて、直に眺めてみたい。
思ったら、即実行だ。許可も伺わずにシャツをめくりあげた。
途端に、ぼろんっと胸が弾けでて、可憐は「うほっ!」と歓声を上げる。
「いいねぇ〜柔らかそうなお餅ですねぇ〜たまらんのぅ、うほほほ」
たまらないのはクラウンだ。
鼻の下をめいっぱい伸ばした可憐に覗き込まれ、そっと視線を横に逃がす。
彼が巨乳好きなのは知っていたが、そのスケベ目線が自分へ向けられるなど。
行為も口調もオッサン臭さマックスなのに、でも魂は純粋な輝きを保っている。
もしかしたら、これは彼流の照れ隠しなのかもしれない。
最悪な照れ隠しだ。
胸を見て喜ぶ可憐をクラウンはじっと眺めてみたが、再び視線を外して、ぽつりと呟いた。
「カレン……お前が望むのであれば、好きにしていい」
「ホント?マジでっ!?最後までヤッちゃってもいいの?」
可憐には輝いた目で見つめられ、こくりと頷く。
「あぁ」
「ホントにいいんだな?俺は女体化でも遠慮なく食っちまう男なんだぜ」
と言っているが始終胸ばかりに愛撫が集中しているあたり、可憐は童貞なのではなかろうか、とクラウンはアタリをつける。
ヤりたいと宣っている割に、下半身へのアプローチが全くない。
しないのではなく、できないのではないか。やり方が判らないから。
可憐には気づかれぬよう、自らズボンを降ろしてみる。
可憐に何かされるのは、嫌ではない。
こんな姿にならなくても、彼が望むのであれば応えたいとクラウンは思っている。
ただ、呼ぶ時はクランちゃんではなくクラウンがいい。
クラウンとして、愛して欲しい――
そんなクラウンのささやかな望みは、可憐には全く届かないようで。
「ハァハァ、じゃあクランちゃんのおまんこ触っちゃうよ?いいよね、好きにしていいって今いったもんね!」
可憐の中では、女体化時の呼び名はクランちゃんで統一されているようだ。
「およよっ、自らズボンを脱いじゃうなんてクランちゃんも大胆だネッ。そんなに俺におまんこコスコスしてほしかったのかなぁ〜?」
ズボンの下には色気もヘチマもないトランクスなパンツを履いており、先ほどまで男性の体だったから当たり前なのだが、可憐は軽く失望する。
いや、待て、逆に考えるんだ可憐。
男物を履いたプレイだと考えれば、これはこれで萌えないか?
幸い、このパンツは前が開くタイプだし。
隙間に指を差し入れて、ちょんと割れ目に触っただけでもクラウンの反応は敏感だ。
びくっと震えて、両手を可憐の背中へ回してきた。
しっかり抱きつく形でいながら、やはり両目は瞑って口をへの字に閉じている。
「俺を好きなら、俺の目を見て可愛い喘ぎを聞かせてくれよ」
とっておきのイケメンボイスで囁いてやると、クラウンが、うっすら瞼を開けた。
「は……」
「は?」
「恥ずかしいから……無理……」
また視線を逸らしてしまう。
女体化しても恥ずかしがり屋なのには変わりない。
だが普段の恥ずかしがり屋さんと比べて、二十億倍は可愛さが増している。
これも女体化効果であろう。
指でコスコス擦っている間にも、じっとり濡れてきている。
恥ずかしがり屋な割に、体は正直だ。
「ふひひっ、濡れてきたネ、クランちゃん」
なおも指でコスコスしながら、可憐の脳裏にパッと浮かんだイメージがある。
そうだ、どうせIFならアレを試してみようじゃないか。
エロアニメ動画等で見て、一度やってみたいと思っていたのだ。
提案されて恥ずかしがるクラウンを想像すると、股間が熱く滾ってたまらない。
女体もいいが、それ以上に恥ずかしがるクラウンが可愛い。
もっと恥ずかしがらせてみたい。可憐の中にあるサド心が、そう囁いてくる。
「なぁクラウン、いやクランちゃん」
「な……なんだ?」
「素股っての、やってくんない?」
「……すまた?」
きょとんとしている。サイサンダラにはないプレイなのか。
「ヌレヌレのおまんこで、俺のチンコをヌルヌルしてほしいんだよね」
わざと直接的な物言いで説明すると、「……ッ!」とクラウンが小さく息を呑む。
ドン引きされたのかと思いきや、彼は可憐の予想だにしない一言をポツリと漏らす。
「カレンは俺に挿入したいんじゃ、なかったのか……?」
今度は可憐が「えっ?」と驚くターンで、まじまじクラウンを眺めてみると、こちらへ視線を戻し、先ほどよりも強い口調で彼は言い直した。
「俺はカレンが好きだ。それは、認めよう。お前が何かしたいというのであれば、何をされても受け止めるつもりでいた。だがしかし、俺を弄びたいだけなら前言撤回させてもらう」
眉も吊り上がっているし、怒っているのは間違いない。
「前戯は、もう充分だ。前でも後ろでも、すぐ挿れられる。カレン。ヤりたいのか、ヤる気がないのか、はっきりしてくれ」
女体化されているというのに、クラウンの発言は男らしい。
せっかくいきりたったものも萎えてしまいそうな勢いだ。
いや、女性に男らしくリーダーシップを取られるプレイだと考えれば?
オーケーオーケー、充分萌えられる。ハァハァ。
可憐は男女の立場が逆でも萌えられる、柔軟な思考のキモオタであった。
「もちろんヤりたいに決まっているさぁ!」
勢いを取り戻し、クラウンの上に跨った。
さて入れようという段階になって、可憐は首を傾げる。
女の子の穴って、どこだっけ?
そういやエロアニメやエロ漫画では常に黒い付箋か暈しがかかっているか、さもなければ手足で巧妙に隠されている箇所だ。
ナマで見たことは、一度もない。
ビロビロの奥ではないかと見当をつけて広げてみても、入れそうな穴がない。
いや穴があることはあるのだが、とても小さいのだ。
こんな小さな穴に無理矢理ねじ込んだりしたら、滅茶苦茶痛いのでは?
想像すると股間がキュッと疑似萎縮する。
「……カレン。場所が判らないのか?」
図星をさされてウッとなった可憐に、クラウンが場所を示してくる。
ぐっと腰をあげて、指で広げて可憐にも膣口が見えるようにした。
「判るか?尿道の下にある穴だ。……好きな女が出来た時の為に、覚えておくといい」
童貞なのが、がっつりバレていて、恥ずかしいったらありゃしない。
そして、これを知っているって事はクラウンは脱童貞している事実。
悔しさで内心ギリィッと歯がみしたが、可憐は大人しく指示に従った。
「ほんじゃ、入れますねぇ〜。痛かったら言ってください?」
どこぞの歯医者みたいな気遣いを見せて、ぐいぐいとお粗末な物を押し当てる。
世界一丈夫な体になった可憐だが、あそこのサイズは元のままだった。
それはそうと思ったよりも難しく、全然入っていかないではないか。
おかしい。エロアニメなら一発でブスッと入ったのに。
あいつら処女と見せかけて、実は処女じゃなかったんだな!
あいつらというのはエロアニメのヒロイン達である、念のため。
というか、クラウンは何時でも挿入可能みたいなことを言っていたはず。
なのに全然入っていかないって、どういうことなの教えてエロい人。
気ばかり焦って全然な可憐を優しい視線で眺め、クラウンは再度指示を飛ばした。
初めての気分が味わえるのは、童貞のうちだけだ。少し、羨ましく思う。
「カレン、角度がおかしい。それでは入らない」
またしても童貞乙されて、可憐は恥ずかしさにカーッと赤くなる。
「そんなこといったって初めてなんだから仕方ないだろ!?ここは、初心者の俺をクランちゃんが優しく招き入れてくれなきゃッ」
うっかり逆ギレした後、あっやべっ怒られる?と可憐はビクビクしたのだが、クラウンは怒ったりしなかった。
そっと可憐の体を押しのけて身を起こすと、逆に可憐を横たわらせる。
その上に跨り、柔らかに微笑んだ。
「カレン、無知は恥ではない。誰だって最初は初心者だ。……安心しろ。俺が、お前を気持ちよくさせてやる」
微笑まれるたび、男には興味ないはずなのに可憐の胸はドキドキしてしまう。
こんなふうに、いつも愛想良くしていれば、もっと仲間内で人気が出るだろうに。
だが女の子を全部持っていかれても困るので、彼はこのままでいいのだと思い直す。
自分のブツに何か柔らかいものが押し当てられたと思う暇もなく、ぎゅっと肉厚で締め付けられる感触に可憐は思わず昔のノリで叫んでしまった。
「プギィッ!?」
しかし、自分のピッグな悲鳴に驚いている場合じゃない。
「ふっ……」と小さく呻きをもらし、唇を噛みしめるクラウンを間近に見てしまっては。
やはり滅茶苦茶痛いのだ。
ですよねー。だって滅茶苦茶小さかったもん、穴。
いや、ですよねーなどとボケている場合でもない。
自分だけ気持ちよくなってクラウンを苦しめるなんざぁ、人の風上にも置けない。
後腐れなくエッチできる相手として選んだが、無理矢理やるつもりもなかった。
彼が嫌がれば即やめる気でいたし、痛めつける趣味もない。
「あ、あの、痛いんだったら無理しなくても」
慌てる可憐をどう取ったか、クラウンが無理に微笑んでくる。
「……平気だ。俺に気を遣うな」
痛みを堪えているのが丸わかりすぎて、余計痛々しい。
「い、いや、でも痛いのはイヤでしょ?クラウンだって」
「まぁ……そうだが……カレンが気に病む必要はない」
歯切れ悪く答えた後、何度か座りを直す気配が伺えた。
「難しいな、女の体というのは……普段の体であれば、俺も痛みを最小限まで和らげられるんだが」
初めての女体化とあっては、クラウンもやりづらいのか。
重ね重ねスミマセン。可憐は申し訳なさで縮こまる。
「や、やっぱ痛いのヤでしょ。てか、俺がヤなんだけど」
「……えっ?」と驚くクラウンに、重ねて懇願した。
「だって痛そうなクラウン見ながらじゃ、ちっとも気持ちよくなれないよ。やっぱ上に跨った相手にはアンアンそこぉ、気持ちイィ〜ッ!って悶えてもらわなきゃ萌えられるもんも萌えないでしょ」
いつの間にかクランではなくクラウン呼びへ戻っていた事に、クラウンは気づいた。
クランではなくクラウンを心配してくれる可憐の優しさが、すごく嬉しい。
「カレン、すまない。大口を叩いておきながら、達成できなかった俺を許して欲しい」
「いや許すも許さないもないでしょ、俺が勝手に逆ギレして命じたんだし」
まだアワアワしながら気遣ってくる可憐に、そっと口づける。
「んむっ!?」
唇が離れても目をまん丸く見開いて硬直する可憐へ、クラウンは小さく謝った。
「……すまない、キスも未経験だったのか?だが、一夜限りの夢の中ならノーカウントだろう。許してくれ」
どこまでも年下相手に醜態をさらした格好で終わってしまって、立つ瀬がない。
もし次があるとすれば、最後までイッて自分もクラウンも満足させてやりたい。
心に固く誓いながら、可憐のIFハロウィンは中途半端に幕を閉じるのであった――
END

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