第九小隊☆交換日誌

報告その17:隊員救出作戦   【報告者:セツナ&ユン】

何者かの仕掛けたトラップで瞬間移動してしまったナナ。
彼女は、黒いローブをまとった変態集団に拉致され、性的拷問を受けていた。
彼ら曰く、拷問はナナを神とやらの生け贄にする為の儀式らしい。
全く、なんという非常識な連中だろう。
神が存在すると思っているのも非常識ならば、無関係の私達を巻き込んだことも。
ナナの受けた仕打ちは、原住民から見ても異常であるようだ。
先ほどから口々に、皆が罵りの言葉を投げかけている。
憤る私達に、ローブの男が指示を出す。
曰く、「ナナとユンが契って、ナナに快楽を与えよ」とのこと。
だが、ユンとナナは義理とはいえ兄妹の間柄だ。
連中の命令に、素直に従う必要もない。
さっさと連中を薙ぎ倒して、ナナを拘束している台を破壊する。それしかない。
幸い、彼女の乗せられている台は手の届く範囲にある。
問題は、飛び道具が何らかの力によって跳ね返されてしまう点。
なんとか彼らの隙を誘う方法を見つけない限り、台には近寄れもしない。
「キース……は、気絶しているんだったわね。ねぇ皆、聞いて?」
セーラが小声で囁きかけてきたので、私達は耳を澄ませた。
「レン、レンも聞いてちょうだい」
「せっせっせーのっ、よいよいよいっ♪」
「レン?聞いているの?」
「おっちゃらっか、おっちゃらっか、おっちゃらっかホイッ♪」
レンは後ろを向いて、一人でぶつぶつ歌っている。
目はうつろで、意識ここにあらずといった風に見えた。
なおも彼女の肩を揺さぶるセーラを止めたのは、カネジョーだ。
「無駄だぜ。そいつ、混乱してやがる。それよっか話って何だ?」
私達のほうへ向き直り、セーラが小声で話し始める。
「えぇ、そうね……
 私達、なんとしてでもナナを救い出さなきゃいけないわ。
 今、自由に動けるのは私達だけ。ザン達はアテに出来ない。
 でもユン一人に任せるのは不安、じゃなくて心配よね」
それには私も同感だ。
ユンは軍人としての能力は高いが、それ以外、生活能力が欠如している。
ナナと性行為をしろと言われた後も、無言で棒立ちしている処を見るに
恐らくは何を言われたのか、全然理解していないと思われた。
そもそも、彼には出来るのだろうか?性行為が。
「だからユンがナナと、その、セ……セックスしている間に」
セックスを早口で言い切ると、セーラは頬を染めてユンを横目で見やる。
「私達が、こっそり奇襲を仕掛ける。どぉ?」
「どうやって?奴らの正面にゃ見えない壁があるんだろ」
カネジョーの言うとおりだ。
近づけないのでは、奇襲も何もあったものじゃない。
「それは彼らが攻撃に気づいていた時に出現するんでしょ?
 不意を突けば壁は出現しないはずだわ」
「だから、どうやって不意を」
「んもぅっ、カネジョーくんってば少しは頭を使ってよ。
 まぁ、頭の回転がにぶいところも、あなたの可愛いトコだけど……」
急にセーラがデレ始め、面と向かって罵倒されたカネジョーが頬を赤らめる。
「うるせぇッ!頭が悪くて悪かったな!?
 なぁセツナ、あんたにだって判らないだろ!不可解な壁を突き破る方法ッ」
セーラがどんな策を思いついたのかは、私にも判らない。
私が素直に頷くと、カネジョーは満足したらしかった。
「ホラ見ろ!セツナにだって判んねーモンを、俺が判るワケねーだろが」
いや、そこで開き直られても困るのだが……
私とカネジョーが揃ってセーラを見ると、セーラはくねくねと体をよじる。
「やぁねぇ、Drも判らなかったの?簡単じゃない。
 エッチな行為って皆が好きよね、カネジョーくん」
「なんで、そこで俺に振るんだよ!?」
カネジョーが金切り声をあげるのにもお構いなく、彼女は話を続けた。
「ユンとナナがヤッている間に、足音を忍ばせて接近するのよ。
 もちろん、動きを悟られちゃ困るから、
 一人が接近して、残り二人は注意を引きつける役に回ってね」
いやに簡単に言ってくれるが、私達と変態軍団は真正面に対峙している。
足音を忍ばせたとしても、死角がない。
私が指摘するとセーラは、またしても、あっさり言ってのけた。
「死角がないなら作ればいいのよ」
「どうやって?」と、カネジョー。
セーラは流し目で彼を見つめ、ウィンクを飛ばした。
「そこのデカブツ、じゃなかったボブやバージニアを利用するのよぉ」
ボブやバージニアの背後に隠れて動くとなると――
自ずと、接近する役は決まってくる。
そう、私達の中で一番背の低いカネジョーが適役だ。
私とセーラの視線が彼に集まり、カネジョーは不服そうに口を尖らせる。
「……わぁったよ、奇襲は俺がやる。けど俺がやられねーように」
「えぇ、判っているわ。連中の目を引きつける役は任せて」
ねぇDrと相づちを求められたので、仕方なく私も頷いた。
「さぁ、早くしろ。それとも娘は返して欲しくないのか?」
ローブの連中に急かされて、ユンが一歩前に進み出る。
彼の表情に憂いを見つけた私は素早く耳打ちした。
「ユン、大丈夫?」
「……本当に、やるのか?」
質問に対して質問が返ってくる。
「本当に、とは?」
さらに質問で聞き返すと、彼はしかめっ面を私に向けた。
「ナナを抱く件だ」
「あら」と、私は思わず声に出して驚いてしまった。
だってユンが理解していたとは、思いもよらなかったのだから。
彼にも一応あったらしい、性教育の知識が。
「何が『あら』なんだ?」と眉間に皺を寄せてユンが呟く。
どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。
私は慌てて言い繕った。
「今、セーラ達と作戦を立てたわ。
 あなたがナナと行為をしている間に隙を見て、カネジョーが突入する手はずよ」
「カネジョーが……一人で?」
ユンは初耳だと言わんばかりに私を見る。
彼ぬきで作戦会議をした件を詫びたいのは山々だが、なにぶん時間がない。
今もローブの連中が「どうした、やらないのか!」と急かしてきている。
「ごめんなさい。とにかく、あなたはナナと行為をしているフリをして。
 変態どもが注目できるよう、それなりにリアルにね」
ユンは私から目をそらし、一旦ナナを見た。
すぐにナナからも目を逸らすと、今度は床へ視線を落とす。
「リアル……に、か。しかし、ナナは妹だぞ?妹とやるのは」
嫌がる気持ちは、よくわかる。
いくら可愛くても、血のつながりがなくても、妹は妹だ。
作戦だからと割り切れるものではない。
だが指名されたのがユンである以上、彼がやらなくてはいけないのも、また事実。
「勿論、挿入しなくて結構よ。ただ愛撫ぐらいは、きちんとしてね。
 行為が盛り上がれば盛り上がるほど、こちらへの注意は散漫になるから」
やはり渋顔を崩さぬまま、ユンが言い返してくる。
「妹では、起つものも起たないと言っているんだが」
「なら、私が前準備してあげましょうか?」
言い返してやると、彼はウッと言葉に詰まる。
いや、表情の変化は露骨であった。
あからさまに動揺し、落ち着きなく視線を彷徨わせた後、下がり眉で私を見た。
「……前準備、とは?」
私は仕方なく答える。
「あなたが気分を出せるよう、刺激ぐらいはしてあげると言っているの」
「刺激、とは……?」
聞き返してくるものの頬が上気している辺り、彼も理解はしていると見える。
それなのに、あえて私のくちから説明させようとは。セクハラか?
「早くしろ!」
再三の催促が飛んできたので、私もユンを急かした。
「まさか、やり方が判らないとは言わないわよね?
 判らないんであれば、私が教えてあげてもいいけど――」
これには即返事が来た。
「いや、平気だ。やれる」
むっすりと口をへの字に曲げ、ユンはナナのいる台へ視線を向けると。
私に向かって手を差し出してきた。
「オモブンを貸してくれ。ここからは俺が記録する」
冷静な判断の出来る人物が、記録をしたほうがいい。
つまり、ここで記録可能なのは私ぐらいしかいないだろう。
それを小声で伝えると、ユンは首を真横に振り、私を睨みつけてきた。
「ナナ及び連中の近くへ行けるのは、今は俺しかいない」
いいとも駄目とも言わぬうちから、ユンの手が伸びてきて


あぁ、拒否は許可しない。
ナナを助けるのは、俺の役目だ。カネジョーには任せられない。
ナナは俺にとって大切な妹だというだけじゃない。
後輩であり、部下でもある。
部下を助けるのは、上司の責任だ。
俺はナナに近づいた。
ナナは両手両足を革のバンドで固定され、石のベッドに横たわっている。
衣類は何も身につけていない。全裸だ。可哀想に。
何時間、この格好で拘束されていたのだろう。
だが、待っていろ。もうすぐ救出してやる。
ナナが潤んだ目で俺を見上げる。
「ユン兄……あたし、ユン兄になら……」
服を脱ぎながら、俺は哀れな妹を見下ろした。
彼女はこの任務で何回、皆の前で裸体を晒す羽目になったのか。
そして今も痴態を、皆の前で強制されている。
この任務が終わったら、彼女には軍隊を辞めてもらおう。
軍に所属しないほうが、きっとナナも幸せになれる。
ナナには幸せになってほしいと思っている。
だから、本当は俺がやるべきではないのだ。こんな行為は。
ローブの軍団は微動だにせず、俺とナナを凝視している。
全部で十二人。全員素手だ。何も所持していそうにない。
不意討ちで殴りかかれば、勝てるかもしれない。
ただし、銃弾をはじいた奇妙な障壁さえ出現しなければ、だが。
「あぁん……ユン兄のって、おっきぃ〜」
下着を脱ぐと、ナナが頬を上気させて呟いた。
どこを見ているんだ。どこを。
俺は妹の側へしゃがみ込むと、小さく耳打ちした。
「ナナ、奴らに隙が生まれたら即攻撃に移る。
 それまでは俺の行為に身を委ねてくれ。
 肌に触れるが、多少気持ち悪くても我慢するんだ。いいな?」
ナナが俺を横目で見る。
「気持ち悪いなんて、思わないよぉ。
 ユン兄にされるなら、あたしも本望だよ」
何故そこで嬉しそうに微笑む?
俺達は兄妹なんだぞ。血が繋がっていなくとも。
兄に体を触られるなど、気持ち悪いと思わないのか。
いや、ナナのことだから、俺に気を遣っているのかもしれない。
だとしたら、逆効果だ。
ナナの喜ぶ姿など、今この瞬間には見たくない。
俺ではない他の誰かにされた時に、喜んで欲しいのだ。
ナナの肌に手を触れると、湿り気を感じた。
大量の汗をかいている。
腕から胸、腹と手を動かす。すべすべした肌だ。
「う、ぅん……ユン兄、ここ、ココもぉ、触ってぇ……?」
ナナが身を動かす。
「此処とは、どこだ?」
俺が囁くと、ナナは目線で己の下半身を示した。
先ほどまで鉄の棒が出入りしていた場所だ。
直視するのは憚られる。が、見ないわけにはいかない。
ローブの連中は俺の行為を余さず見張っている。
いや、見入っていると言った方が正しい。
この変態どもめ。
「おいおい、ついに本番開始か?
 どれ、よく見えねーから移動すっかナ!
 兄と妹、禁断の近親相姦エッチとくらぁ〜っ」
些か、わざとらしい調子で声を張り上げ、ボブが前進してくる。
あの背後には、恐らくカネジョーが隠れているのだろう。
見つかったら、こちらも危ない。行為を再開する。
俺はナナの股間へ手を伸ばす。
そっと陰毛に触れると、そこも湿っていた。
淡い桃毛の間へ指を侵入させる。
中は熱く、指を少し動かすだけでもナナの口からは吐息が漏れる。
俺の背後ではローブをまとった連中が、一斉に生唾を飲み込んだ。
「もっと、もっと早く動かしてみろ」
「指を奥までいれるのだ……そうだ……もっと、奥まで」
ぼそぼそと囁く、連中の声が届く。
十二人全員が、こちらを注視している。
ボブやバージニアの動きに気を取られている者は、一人もいない。
ボブは右手から、バージニアは左手から、こちらへ躙り寄っている。
カネジョーのいる位置は、こちらからでは認識不可能。
俺は指の動きを速めた。
膣口を念入りに指でこすってやると、ナナは断続的に甘えた声をあげた。
「ひゃ、あ、あんっ、あぁん、ゆっ、ユン兄、ユン兄っ」
しきりに俺の名を連呼しては、涙に濡れた目で俺を見ようとする。
「ユン兄、いいのぉ、いいの、そこ、いいのぉ、もっとこすってぇ」
欲情した目で俺を見るな。
俺は性的な目で、お前を見ることができないんだ。ナナ。
俺は……
私情を挟んでいる暇はない。
ぬるぬるした感触が、俺の指に絡みつく。
ひくひくと、内側の肉が震えている。
赤い、充血した表面が。
「そうだ……いいぞ、核を摘め。核だ、陰核だ……」
不意に何者かの生暖かい息が耳にかかり、俺は慌てて背後を振り向く。
目と鼻の先に、ローブをまとった男が前屈みに立っていた。
いつの間に接近してきたのか。全く気配を感じなかった。
「早く、摘むのだ……女を高みに登らせろ」
フードを後ろへ降ろし、血走った目でナナの股間を凝視している。
「早く、早く摘むのだ」
俺の肩越しから手を伸ばしかねない程の、鼻息の荒さだ。
冗談ではない。
こんな奴に触らせるぐらいなら、俺が触った方が、まだマシだ。
ナナの陰核を人差し指と親指で優しく摘む。
「ひゃんっ!」
拘束されていても、ナナの体がビクッと大きく跳ね上がる。
すまない。俺なんかが触って。
困惑する俺の前で、ナナが懇願してくる。
「いぃっ、いいよぉ、そこぉ、クリクリしてぇ〜」
馬鹿な。
喜んでいる、だとッ!?
ナナ、こんな時にまで俺に気を遣う必要など、ないんだぞ?
「ユン兄、指だけじゃ、もう指だけじゃイヤッ」
気遣いでも演技でもない。
ナナは本気で俺に欲情しているようだ。
何故だ?
ナナは、俺を兄だと認識していないのか……?
急に、背後のローブ軍団が大声で連呼を始める。
「挿入!」「挿入!」「挿入!」「挿入!」
「挿入!」「挿入!」「挿入!」「挿入!」
「えぇい、うるさいっ!」
俺が振り向いて怒鳴っても、全く効果無しだ。
背中にぴったり張り付いた男まで、挿入を促してくる。
「さぁ……早く、女と一つになれ。
 一つになって神の元へ駆け上がるのだ……!貴様の男根を以て」
奴が手を伸ばしてきて、俺の陰茎を掴んでくる。
俺は咄嗟に奴の腕を掴むと、逆手に捻りあげた。
「ギャアァァッ!」
そいつが叫ぶのと、ボブが「うおりゃぁッ」と吠えたのは同時だった。
ボブの拳が叩き込まれ、ローブの一人が宙を舞う。
続いて、バージニアの背後から飛び出したカネジョーが別の奴に飛びかかった。
バージニアも突進してきて、カネジョーを取り押さえようとした男を殴っている。
背後は瞬く間に乱闘と化した。
先ほどの妙な障壁も発動していない。奇襲は成功した。
俺も参戦しなくては。
立ち上がった俺に、ナナが声をかけてきた。
「やだ……ユン兄、いかないで。最後までイカせてよぉ」
俺は答えた。
「ナナ、演技はここまでだ。
 全員倒したら拘束を解いてやるから、あと少しの辛抱だ」
ナナは俺の言葉を聞いていないのか、もぞもぞと身をよじる。
「やだぁ〜、ユン兄と、したいのぉ。お願い、してぇ」
「ナナ」
こんな時に、聞き分けのない。
俺は一言一言、言い含めるように彼女へ言った。
「ナナ、俺はお前では欲情できない。
 お前のことは可愛いと思っている。可愛い妹だと。
 だが、それと恋愛感情は別物だ」
ナナが大きく目を見開いて、俺を見る。
潤んだ瞳から涙が一滴、頬を伝って流れ落ちた。
「そう……なんだ」
ナナがポツリと呟く。
「ユン兄は、あたしじゃ……駄目なんだね……」
声まで湿ってきた。泣かせてしまったか。
だが、できないものは出来ないんだ。諦めてくれ。
「ぐぼっ」
くぐもった呻きが聞こえたので、そちらを見る。
バージニアが体をくの字に折り曲げて、胃の物を吐き出していた。
ナナに気を取られていた間に、味方が劣勢になっている。
ボブも五人に囲まれ、滅多打ちにされていた。
近づこうとする俺の前を塞いだのは、中心人物と思わしき例の男だ。
「貴様らには失望したぞ!女は帰さぬ、死ねぃッ!」
手に光るのは何だ、小銃か?
至近距離だ。よける暇もない。
俺が身構えるよりも先に、後ろでセーラが叫んだ。
「ほら、見てちょうだいスケベども!サービスよぉぉんっ!!」
何事かとローブの連中がそちらを注視し、俺も振り返る。
そして、見た。
セーラがセツナの胸を露出させているのを。
上着をめくりあげ、更に下着をも上に押し上げている。
ナナよりは小さい。
先端は淡いピンク色で、尖っている。
「きゃあああっ!」
セツナが絶叫し、男達の口からは獣の如し歓声があがった。
俺の中でも、熱いものが鎌首を持ち上げようとしている。
どくどくと心臓が早鐘を打つ。
自分でも気づかないうちに、勃起していた。
それに気づいたのは、セーラが俺を見て狂わしい声をあげたからだ。
「きゃぁぁ、見てぇドクター!
 あなたのオッパイを見て、隊長もコーフンしてるわよぉ〜?」
皆の目が俺に注がれて、俺は咄嗟に己の股間を両手で隠す。
くそっ、セーラめ……
連中の気を逸らす為とはいえ、なんて真似をしてくれるんだ。
今見た光景が脳裏を離れない。
眼球に焼きついてしまったかのようだ。
ナナの胸を見た時には浮かびもしなかった感情が、次から次へと沸いてくる。
触りたい。触って、手触りを確かめてみたい。
駄目だ。これではキースを笑えない。
雑念を捨てて戦わなくては。
黒い影が俺の前を横切り、次の瞬間にはローブの人物が力なく崩れ落ちる。
同時に風景が一瞬にして消え失せ、俺達は広い倉庫の中央に立っていた。
なるほど。
全ての景色は、こいつが作り出した幻影だったのか。
「くぅうっ……我が魔力が消えたとしても、
 我らの神は、必ず願いを成就してくれようぞ」
か細い声で恨み言を吐き出すと、ローブの人物は気絶した。
斬が懐から縄を取り出し、手慣れた様子で奴の手足を縛り上げる。
リーダーがやられた後の残党は、抵抗する意志を放棄した。
全員が投降し、手足を縄で拘束される。
俺達は、やっとナナを救い出すことができた。

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