DOUBLE DRAGON LEGEND

第七話 暴動


話は、坂井がB.O.Sに拉致されるよりも前に戻る。
西の砂漠都市ではMDを追い払った戦士として、アリア達が王宮へ招かれていた。
「本当にありがとうございます!砂漠の民は、あなた方のご恩を、けして忘れません」
改めてキュノデアイス王に礼を言われ、リオは膝をつき、アリアは会釈した。
「お礼を言われるのは私達ではありませんわ、王様。MS部隊の皆様と、そちらの傭兵の方々の活躍があってこその、勝利です」
人間の姿へ戻ったタンタンが重ねて叫ぶ。
「そうだよ王様!礼金、たっぷり弾んでよね♪」
一番活躍していなかったくせに何を言うやら。
だがタンタンの無礼講も、今だけはアモスも文句が言えない。
アリアの言うとおり、彼らの助勢がなければ、この国はMDに滅ぼされていたかもしれないのだから。
「君達は王を守った英雄だ。礼金の事は心配せずとも、あとでたっぷり授けよう!」
MS兵士の一人が声高に宣言し、タンタンが大喜びするのを横目に見ながら、アリアはリオに囁いた。
「これで砂漠都市も、ひとまずは安心ですね。では、次はサンクリストシュアへ参りましょう」
「……首都に何が?」と尋ねるリオへ、アリアは微笑む。
「首都の女王に謁見し、B.O.S及びキングアームズ財団の危険性を忠告するのですよ」
背後を振り返って、連れの少女を見下ろす。
少女は小さく蹲って、身じろぎ一つしない。
「それに……レクシィを休ませてあげなくては。彼女が安心して生きられる場所は、彼らの魔手が届かない首都しかないんです」
きっぱり言い切るアリアだが、リオは彼女ほど首都を信頼してはいない。
首都の女王が掲げる完全平和主義の中にMS達の平和が含まれているとは、到底思えなかったのだ。
「……首都に奴らの魔手が及ばないと、本当に言えるのか……?」
物憂げな彼へ、アリアのほうから尋ね返す。
「何か杞憂でもあるのですか?」
それに対してリオが何か答えようとする前に、横手から声がかかった。
「なぁなぁ、自己紹介はまだやったよな?オレはウィンキー・ドードー。昔はトレジャーハンターやっとったんやけど、今は砂漠都市で傭兵やっとる。あんたは?」
どちらに話しかけているのだろう?とリオが首を傾げている間にアリアは微笑み、軽く会釈する。
「はじめまして。アリア・ローランドと申します。私の祖父はMSの研究家をやっているんですよ」
「MSの……」「……研究家ァ?」
ミリティア、ウィンキーの両名が素っ頓狂な声をあげるのを見、アリアは苦笑する。
「はい。MSの生態や個々の能力、歴史などを調べている研究者です。各地の情報にも詳しくて、B.O.Sという組織が東大陸に潜んでいる事を教えてくれたのも、私の祖父なんです」
「貴女のお爺様……も、MSなの?」というミリティアには首を振り、アリアが答える。
「いいえ。私は隔世遺伝なんです。ですから父も母も、普通の人ですよ」
「カクセイイデン?」
キョトンとするタンタンへは、アリアではなく該が教えてあげた。
「何代にも渡って覚醒しなかった遺伝子が、ある世代にだけ発生する現象だ。彼女の先祖に、MSがいたということだろう」
「はい、祖母方の血にMSがいたらしいんです」
そう答えてから、アリアは続けて尋ねた。
「……ところで、あなたのお名前は?」
「該」
ポツリと答え、後は黙ってしまった彼を見て、アリアは連れのリオへ振り返ると苦笑した。
「あなたみたいな方ですね。仲良くなれるのでは、ありませんか?」
リオは黙って肩を竦めただけであった。
「あー、そんでぇ。そっちの女の子とノッポ!お前らの名前は何やねん?」
ウィンキーに促され、リオは立ち上がる。
「リオ・マンダ。後ろの少女はD・レクシィだ」
Dレクシィと呼ばれた少女は、身動きすらしない。
じっと蹲り、俯いた格好のままだ。
痩せ細り、枯れ木のような手足が見えている。
髪の毛はバサバサ、言われなければ少女だと判らない。
これを一発で少女と言い当てたウィンキーの洞察力に驚きながら、ミリティアは呟いた。
「ディ・レクシィ?変わったお名前ですのね」
「私達はレクシィって呼んでいます。あの、彼女は体調がよくないので、このような格好で失礼します」
後半は王へ向けて言ったもので、王も快く受け応えた。
「いいえ、お気になさらずに。お加減が悪いのでしたら、寝室へ案内させましょうか?」
「いえ、そこまでしてもらうわけには……」
「いいから、遠慮するなよ。こっちへ連れてきな」
MS部隊の一人に促され、一度は辞退したアリアも「じゃあ」とD・レクシィを連れて、奥の通路へと姿を消した。
「あの子、病気なの?」とタンタンが尋ねるのへ、リオは首を振ると一言で答える。
「疲れているだけだ」
「ふ〜ん、旅疲れかぁ……そうは見えなかったけどなァ」
彼女は全然納得していないようだが、これ以上、見知らぬ者へ話すわけにもいかない。
レクシィを安全な場所へ移住させるのは、アリアの祖父に頼まれた大事な依頼なのだ。
口を尖らせて唸っていた少女は、不意に気づき。
「あ、そうだ。あたしも名乗ってなかったね。あたしはタンタン!該の同業者で、恋人――」
「ではない」
即座に否定したのは、勿論当人の該。
「もう!該のイケズ〜ッ」
プンスカ怒るタンタンを哀れみの目で見つめながら、リオは該へ尋ねた。
「同業者?彼女も傭兵か」
「いや」
短く首を振り、該が答える。
「俺達はサーカス団に所属している」
「サーカス!?」と反応したのはウィンキー。
キラキラと子供のように瞳を輝かせ、怒濤の勢いでタンタンに迫ってきた。
「な、な、サーカスでキミは何やってん?玉乗り?火の輪繰り?それとも空中ブランコ?」
「……玉乗りと火の輪くぐりは動物の担当でしょうに」
呟くミリティアの声に被さるように、タンタンの陽気な返事が響き渡る。
「えっとねー、あたしが綱渡りと曲芸!それで該が」
「――待て。何か物音が聞こえないか?」
いきなり該がマッタをかける。
耳をすませば、聞こえてくるのは遠方から何かが飛来する音だ。
この音には、聞き覚えがあるような?
同時に、アリアが息を切らせて飛び込んできた。
「大変です!第二弾がこちらへ向かっているそうです、目的地は首都サンクリストシュア!!」
突然もたらされた情報は、王の間へ衝撃を走らせる。
「な……なんですって!?」
叫ぶ王へアモスが許可を請う。
「王よ、首都救助のご命令を!」
キュノデアイスが命令を下すよりも早く、アリアの呼びかけにリオが応じる。
「リオ!」
服を脱ぎ捨て馬となった彼の背に飛び乗ると、アリアは叫んだ。
「先行します!皆さんも、急いで首都へ向かって下さいッ!」
「ま、待って下さい!行くなら一緒に」
「それでは間に合いません!」
王の制止も振り切りアリアは叫び返し、リオが走り出す。
土煙をあげて走り出したかと思うと、あっという間に姿は見えなくなった。
先行すると言っていたが、二人だけでは危険だ。
慌てたウィンキーも王に許可を求める。
「こ、こうしちゃおれへんで!首都を救いに行くんや!王様、俺らも行ってエエやろ!?ここにゃーMS部隊もいるこったし!」
少年王は間髪入れず、頷き返した。
「はい、頼みます!女王を、首都を助けてあげて下さい!」
ばたばたと慌ただしくなってきた中、ミリティアは興奮する相棒を横目に考えた。
やっと落ち着けるかと思ったのに、案外傭兵ってのも移動が激しい職業なのね……と。


西の空が、赤い。
首都サンクリストシュアは、間違いなく襲撃を受けていた。
誰の?言うまでもない、東から飛来したMD軍団だ。
感情を持たぬ殺戮部隊が相手では、武器を持たぬ人々は逃げ回るしかない。
司のいる傭兵宿舎でも、突然の奇襲に兵士達が混乱していた。
MDが住宅区に現れただのといった情報が飛び交い、司令室もまともに機能しない有様であった。
慌ただしく出ていく兵や負傷して戻ってくる兵の波に紛れて、司も表へ飛び出す。
街は燃えていた。
昼間だというのに空は赤く照らされ、至る処から黒い煙が上がっている。
やがてMDが王宮を目指しているのだと判り、司は走り出す。
走りながら彼の姿は見る見るうちに白い体毛で覆われ、手足には鋭い爪、口からは犬歯が迫り出してくる。
白い犬へと姿を変えた司は背中に羽根を羽ばたかせ、大空へと舞い上がった。

大通りをまっすぐ行くと、つき当たりに見えてくるのがサンクリストシュア宮殿である。
宮殿内にもMDの魔の手は伸びており、門の前では激しい攻防戦が繰り広げられていた。
裏門と正門、おまけに頭上からも空襲。
三方向からの奇襲を受け、まさに首都の運命は風前の灯火といった状況だ。
宮廷内にもMDやMSが入り込み、破壊の限りを繰り広げている。
住まう者は見つかり次第、喉を食いちぎられ、腕に噛みつかれ、無惨な死を遂げた。
武装しない貴族など、MDやMSには赤子の腕をひねるよりも楽勝な相手であった。
「……劣勢ですわね。そろそろ降参なさっては、如何かしら?」
壁際まで下がったサリア女王、彼女を守らんと立ち塞がる執事のパーカーを睨みつけ、空色の髪の少女が口の端を吊り上げる。
それには応えず、女王は気丈にも尋ね返してきた。
「あなた方は何者です!どうして、このような真似をするのですか!?」
「何者か?ならば答えて差し上げましょう。我々は東大陸に住む者です」と、答えたのは少女の隣に立つ女性。
「東大陸……?しかし、」
パーカーが異を唱え女性が後を継ぐ。
「髪が黒くない、と?」
恐ろしく髪の長い女だ。
足首の辺りまで、桃色の髪を垂らしている。
「移住民の中には、西大陸出身の者も多いと聞きます。あなた方も、そうなのでしょう?」
サリアの問いに、少女は肩を竦め、女性は口元を歪めた。
「移住民……違うな。我々は移住してきたのではない、東で生まれた存在だ」
「東で……生まれた?」
東で生まれる、いわゆる大陸の現地人は皆、髪の毛が黒い。
黒髪の遺伝子を受け継いで生まれてくるからだ。
例外があるとすれば、それは伝承のMSぐらいで、一般人は例外なく黒髪の遺伝子を持つ。
「すると、あなた方は伝承の一族なのですか?」と問う女王へ首を振り、二人は名乗りをあげた。
「まァ、いいだろう……冥土のみやげに教えてやる。我々はB.O.Sの者だ。サリア女王、貴様の身柄を拘束する!!」
同時に二人は左右へ散り「なっ……!?」と戸惑うパーカーの腹には少女が拳を突き入れた。
悲鳴をあげる暇もなく、執事が崩れ落ちる。あっという間の早業だ。
「パーカー!!」
彼に気を取られている内に、サリアも桃髪の女性に組み敷かれ「あぅッ!」と悲鳴を上げた。
咄嗟に暴れようと身動きするも、背後からは押し殺したような声で囁かれる。
「お静かに。下手に暴れると腕を折ります」
言っている側から、みしり、と力を込められて、サリアの体に激痛が走る。
「……!」
苦痛に顔を歪める女王を見て、女性は少し力を緩めた後、少女へ命令を下す。
「逃げる準備を。MDを一台呼んでおけ」「OK」
空色の少女が手にした通信機で、一言二言話していると――窓をぶち破って、何かが飛び込んできた!
飛び込みざまに白い何かが放った衝撃波を、少女も女性も間一髪で転がり避ける。
「ちぃッ、傭兵部隊か?今頃やってきやがって!!」
すぐさま体勢を立て直し、少女が銃を構え、女性はサリアを盾に後ろへ下がった。
飛び込んできた何者かも壁を蹴って着地すると、牙を剥きだした。
それは犬の姿をしていた。
背中に白い羽根を生やした、白い狛犬。
彼こそが西に古くから言い伝えられる伝承のMS『白き翼』だ。
「B.O.S!サリア女王を放せ、彼女を解放するならば命までは取らん!!」
白い犬が牽制してくるのへ、なおも後方に下がりながら女性が叫ぶ。
片手は女王の首に回し、もう片方の手を壁につけた。
「危険を冒して、ここまで忍び込んだのだ!今更引き返せるものかッ!!」
後ろ手にチカッと赤い光が壁へ取りつけられたのを見て、司にはすぐにピンとくる。
あれは爆弾だ。壁を爆破して、逃げようというつもりか!
「逃がすものか!」
だが飛びかかろうとした瞬間、水色の髪の少女が獣に変化したものだから意表を突かされた。
武器を手にしているから、二人とも、てっきり普通の人間だとばかり思っていたのだが……
鋭い牙の猛攻を何とか避けきって再び女性へ向かったものの、今度は目の前で赤い爆炎が飛び散る。
それでも司は懸命に腕を伸ばした。サリアだけでも奪い返せれば、と――


時は戻り――無事に葵野と再会を果たした坂井は、東の港町で足止めを食らっていた。
西へ渡りたいというのに、西へ行く船が一つも見つからなかったのである。
おまけに、凱旋の際に購入した船まで見あたらない。
通行人を捕まえて聞いた処、中央国の兵隊が没収してしまったのだという。
「こいつぁババァの差し金だな?」
ジロリと睨まれ、葵野は自分のせいでもないのに萎縮する。
「王子様の外出は禁止ってか。ならいいや、当初の予定通りババァに会いに行こうぜ」
そして今、再び東の首都へ戻った二人は中央国の女帝と対面していた。
齢九十を越えた女帝・葵野美沙。
その女帝だが、孫が帰って来るなり有無を言わせぬ調子で押し切った。
「力也、よう戻ってきた。もはや神龍の血を引き継ぐ者は、お主しかおらぬでな。もう二度と、西の地へ渡ってはならぬ。判ったな?」
「……俺は……」
ちろ、と横目で助けを求められ、坂井が口を挟む。
「おい、ババァ!昔から言うじゃねぇか、かわいい子には旅をさせよってな。国の中で過保護に育てたって、まともな王にゃなれねぇぞ!?力也に今後必要なのは経験だ、ババァのくどくて押しつけがましい愛情じゃねぇんだよ!」
感情に任せての一言は二言三言余計なものが混ざってしまい、説得するどころか逆効果だ。
案の定、女帝は顔を真っ赤にして怒り出し、入れ歯も飛び出さん勢いで怒鳴り散らす。
「やッッッかましィわ達吉!貴様、商人の息子風情の分際で、儂の孫をたぶらかしおって!何が正義じゃ!何が、悪を退治する旅じゃ!たった二人で何が出来る!?貴様のやっとることは大いなる自己満足じゃ!とても世間に貢献できたもんじゃないわェ!!」
怒鳴られたほうだって負けちゃいない。婆さんに負けず劣らず、坂井もやり返した。
「確かにな。だが俺達がたった二人で旅に出なきゃならなかった理由は、ただ一つ。テメェら力のある貴族が、ずぅぅっと他人事ってツラして傍観決め込んでたせいじゃねぇか!BOSが、いい気になってんのは誰のせいだ!?兵隊を持ちながら、野放しにしていた貴様ら東大陸王族の責任だろうが!」
飛ばされた唾をハンカチで拭き拭き、女帝は何か反論を唱えようするが、孫に止められる。
「も……もう、喧嘩は止めて下さい!喧嘩してる場合じゃないんです、ホントに……」
坂井もと睨まれて、達吉は舌を出す。
助けを求めたのは、そっちだ。自分のせいじゃない。
そこへ兵士が駆け込んでくる。
伝達を受けた美沙女帝は、力也を振り返り、彼に尋ねた。
「港町に西の連中が来ておるそうじゃ。お主と達吉を捜しているとの事じゃが、知りあいかぇ?」
「え……さぁ?」と首を傾げる力也の隣で、坂井がポンと手を打つ。
「あー、もしかして!」
途端に女帝は掌返したように投げやりになり、坂井へ向けて手をヒラヒラさせた。
「なんじゃ、貴様の知りあいか?なら行ってこい、早ぅ去ね」
野良犬でも追っ払うかのような仕草だったが、坂井は気を悪くした様子もなくニヤリと微笑む。
「いや、俺だけの知りあいじゃねぇ。ババァ、も一度小龍様を借りてくぜ!」
「え?あ、ちょっと!?」
婆さんの了解も得ずに、突然で戸惑う力也の腕を取って走り出した。
「なんじゃと!こら!待て!!!」
婆さんが焦っても、時既に遅し。
途中で虎へ変身した坂井に追いつくなど、並の兵士では無理な話なのである。

「ここへ来れば、必ず会えると思っていた」
港町で葵野達を待ち受けていたのは、該とタンタンの二人組――だけではなかった。
ド派手に真っ赤な女性や、モヒカンの青年もいる。
砂漠都市で会った、あの女性も一緒だ。
集団の中に白い服の青年をめざとく見つけ、坂井は鼻息も荒く詰め寄る。
「おいッ!お前、もしかして、もしかしなくても『白き翼』か!?」
襟首をぐいっと引っ掴み、今にも爆発しそうな彼に驚いたのは葵野だけじゃない。全員が驚いた。
「ちょっと、お止めなさいな!わたくし達は、今から一致団結しなくてはいけなくてよ」
赤い女性が間に割って入ろうとするが、坂井に睨みつけられビクッと身を震わせる。
結局、彼を止めたのは、砂漠都市で葵野を『神龍』と呼んだ、あの女性であった。
「はいはい、殺気立たないで下さいな。MS同士、仲良くして下さらないと困ります」
「てーことは、やっぱコイツは白き翼か!」
目を剥く坂井へ、女性はのほほんと肯定し、尚も言う。
「その通りです。今は仲間ですけどね。遠い昔に神龍と白き翼の間で何があったのかは、私も存じております。しかし今は、それどころではないんです。西の女王が誘拐されてしまったのですから」
「なんだって!?」
驚く葵野へも目を向け、女性は改めて名乗りをあげる。
「ご挨拶が遅くなりましたね、神龍様。私はアリア・ローランド、語り部の末裔です」
語り部であるアリアが言うには――
西大陸の首都、サンクリストシュアがMD軍団に襲われたのだとか。
連中は別部隊でMSを宮廷に忍び込ませ、女王サリアを誘拐。
司が駆けつけるも、あと一歩のところで逃げられた。
「一人では無理でも二人、三人なら?そう考え、私達は手を取り合う事にしたのです。神龍様……いえ、小龍様も、どうか、お力を貸して下さいませ」
アリアに再度頼まれて、葵野は今度こそ、はっきりと頷いた。
「俺に何が出来るかは判らない。けど、あの時、砂漠都市を助ける手伝いが出来なかった分も含めて、今度こそ君達に力を貸すよ!」
「ありがとうございます。では、参りましょう。坂井様?」
いきなり話題を振られ、一人蚊帳の外にいた坂井もハッと我に返る。
「な、なんだよ?」
するとアリアは、にっこり微笑み彼に頼んだのである。
「道案内をお願いしますわね。BOSの本拠地までの道案内を」
まるで最初から坂井が本拠地を調べることなど、お見通しだとでも言うように。

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