CAT
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怪盗キャットファイター

第十話 キャットファイターよ、永遠なれ?

「なんで、お前ら二人とも無事なんだよ!?」
唾を飛ばして怒る龍輔に、鼻息荒く風花が言い返す。
「なによ、無事じゃいけないの?」
「いや、無事で何より。でも、よく脱出できたよねぇ〜」と割り込んできた樽斗の質問に、誉が答えた。
「悠平を救出に向かう途中で、風花に邪魔されてバランスを崩した。だが、地上へ墜落する寸前で二人とも木の上に飛び降りた」
「ほら〜、やっぱり風花のせいじゃん!」
思いっきりドヤ顔で勝ち誇る樽斗。
推理が百パーセント命中では、さしもの風花ラブな龍輔でもフォローできない。
「やっぱりって何よォ」
その代わり、ぷぅっとふくれッツラの彼女を精一杯のイケメン顔で慰めてあげることにした。
「なぁに、お前は何処で何をやっていても可愛いってことさ」
「警官が走ってくる」
しかし誉の一言で流されてしまい、せっかくの龍輔的イケメン台詞も風花の耳には入らなかった。
「マジ!?やばいんじゃないっ?」
「よし、逃げるぞ!」
真っ先に樽斗が走り出し、誉も頷き後を追う。
「あん、待ってよ誉ちゃぁん!」
少し遅れて風花も走っていき、龍輔は――
墜落地点で黒煙をあげる飛行船へ目をやって、小さく溜息を漏らした。
飛行船は、完膚無きまでに大破している。
それに当分、この辺りは警官に仕切られて立ち入り禁止になるだろう。
ボスの思いつきのせいで、とんだ大赤字の出費になってしまった。
ま、飛行船の所有者もボスの悠平だから、自業自得ってやつだろうが。
「おーい、何やってんだ龍輔ェ!捕まりたいのかァ〜!?」
だいぶ遠くで樽斗が騒いでいる。
走っていったと思った誉が戻ってきて、龍輔の腕を引っ張った。
「逃げよう、龍輔。龍輔が捕まるのは悠平が捕まるよりも辛い……」
「あたしだって!誉ちゃんが捕まるのは龍輔が捕まるよりも辛いわよォォ」
遠くのほうで風花も叫んでいる。
「龍輔、あんたが逃げ損ねて捕まるのは勝手だけど!誉ちゃんを巻き込まないでよねッ」
辛いという割には、誉を追って引き返さない辺りが彼女らしい。
「判った、判った。よし、じゃあ逃げるとするか」
龍輔が言うと、コクリと満足げに誉も頷いて、四人は警官の灯りをかいくぐって、夜の闇へと消えていった――


警察署の旗盗み大作戦は、そんなわけで失敗してしまったのだけど。
今日も今日とて、夜の街を怪盗キャットファイターは駆けめぐる。
「あっちだ、あっちに逃げたぞォォオ!」
「きゃあああ!いやぁぁ変態ッ、前ぐらい隠しなさいよォォ!!」
警察官の悲鳴や怒号が町中に響く中、オシリ丸出しの男はくるっと振り向き、軽快に尻を叩く真似をした。
「へへーんだ!この樽斗様が捕まってやれるもんかいっ。怪盗キャットファイターは、警察に捕まるほどノロマじゃないぜ」
「おい、勝ち誇ってないで早くしろ」と、これは龍輔。
「ヘイヘイ」
素直に樽斗も従って、二人のフリチン野郎は屋根の上を飛び渡る。
「行ったぞ、あっちだ!」だの「向こうに回れェ!」といった警官の怒号も次第に遠のいて、本日もお宝がっぽり、満面の笑みでアジトへ戻っていったのだった。


ちゃんちゃん。